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ワークショップ・シンポジウム「防げる死から子どもを守るために」

2017/01/30 01:18

 1月29日は,厚生労働省科学研究費補助金で行われている二つの研究を担当された先生方の発表である,上記のイベントを聞きに行きました。

 自虐的かもしれませんが,これは聞きたかったですね。
 児童相談所の嘱託あるいは非常勤という,私が立つ機会を与えて頂けなかった場所,やってみたいと思った場所,そこに立っていたとしたら,どんなことに関わって行けたのか…,そういったことを知ることができるように思いましたので…。
 昨年,論文を書くためにAHT(虐待の疑いのある乳幼児頭部外傷)について調べていたことからも,「実際にそうしたことを防ぐためには,どういった方途があるのか。専門家はどういうことを考えているのか」は最後に聞いておきたいと思いました。

 非常に濃密な内容で,多分,聞いたことを元に調べていけば,相当知識は広がるでしょうし,力も付くと思います。しかし,正直,弁護士会の子どもの権利委員会を4月に辞することとし,児童虐待分野から離れると決めた身としては,時間がたてば立つほど,思い返すことを苦痛に感じる気持ちが大きくなると思いましたので,聞いたこの場で,書ける範囲で感想を書き残しておこうと思います。

 「二つの研究」というのは,以下の二つになります。
 一つは,奥山眞紀子先生が主任研究者となる「地方公共団体が行う子ども虐待事例の効果的な検証に関する研究」。
 こちらは,平成27年度から研究が始められ,平成29年度までをとりあえず一区切りとしたもののようですが,平成27年度の総括報告書がデータベースに挙がっています。

 もう一つは,溝口史剛先生が主任研究者となる「小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた実現可能性の検証に関する研究」です。
 こちらは,まだ認可が出たばかりと伺いましたので,そのせいか,データベースに登録されていないようですが,こちらのホームページの,「公募要領」の30頁「2−1 公募研究課題」にかかれているもののようです。

 イベントで行われたのは,これらの分担研究を担当された,あるいはこれから担当される先生方による発表です。

 はじめに,日本看護協会の中板先生と,山梨県立大学の西澤先生から,保健活動分野,ソーシャルワークの方法等についてのワークショップが有りました。
 虐待家族の状況をプロセスとして捉えることや,組織内・関係機関との情報共有の課題について触れられていたことが印象に残っています。
 AHTについて調べてみると,こうした保健・ソーシャルワークの大切さを痛感するようになります。AHTは【子どもの泣き】に対処する方法がわからないときに起きやすい,とされますが,そうした事態を予防するには,妊娠されている女性の方々に,揺さぶり等の危険性と,子どもが泣いてしまった場合の対処を知ってもらうことが,非常に大切とされていますので…。
 アメリカではそういった研究がありましたし,日本でも山田不二子先生が病院で行われた研究があったと思います。
 とはいえ,これらが課題としてあげられる,ということは,いうまでも「これまでに解決できていない」ということです。
 起きてしまった虐待事件を【プロセス】として捉えることが大切であることはその通りなのですが,過去の児童相談所がらみの経験からすると,警察官や,家庭裁判所調査官と立場が異なる児童相談所において,【プロセス】として捉えることができるほどに情報を集めることは、容易ではないようにも感じます。
 もちろん,同意を得ることが出来た家族について,詳細な調査を行い,それを全体としての活動にフィードバックする,という方法は可能だろうと思います(同じ厚生労働省の研究のなかでも、自殺の要因についての研究(心理的剖検)はそうした方法を取っていたと思います。)。例えば、そうした調査を受けて振り返りをすることを、虐待をしてしまった親の受刑中の情状的なものとして位置づけられないか,あるいは,児童相談所で親子再統合をする場合などにそうした課題ができないかと思ってしまうのですが…,難しいのかもしれませんね…。
 情報共有については,他の機関からの情報の取得が難しい面もさることながら,あまり書類を多くするとかえって伝わりにくくなることや,書類の記載への誤解、開示の問題等も、あると思います。

 次に,奥山先生の研究についての発表の中では,日本大学医学部法医学分野の内ヶ崎先生の「死亡事例検証に法医学がどこまでかかわれるか」は,AHTとの関係で非常に興味深いものでした。
 AHTについて調べていくと,法律的な判断の前提として,法医学的な知見が非常に重要であることがわかります。内ヶ崎先生は,自ら虐待通告をする医療機関に足を運ばれて,診断したり,写真を撮られたりすることもあるようですが,これは非常に重要だろうと思います。
 AHTについて,判断等が難しいときには,それぞれ専門分野の高次医療機関の先生に見てもらった方が良いとされていましたが,少なくとも,2歳以下の乳幼児−本人が自らの言葉で訴えることが出来ない年齢の子ども−については,是非,法医学の先生も関与して頂けるようなシステムが出来ると,良いのではないか…とつい望んでしまいます。もっともこればかりは、関与していただける先生がいらっしゃってくださらないと、難しいと思うのですが…。
 また,CDR(チャイルド・デス・レヴュー)という、海外で行われている調査・検証方法についても,具体的にどのようなものなのか,もっと詳細を知りたいと思いました。

 最後に,溝口先生の研究についての発表の中では,特に死後画像検査(オートプシー・イメージング)の話が印象に残っています。
 奥山先生の,AHTについての診断の手引きでも,たしか,本来はCTよりMRIのほうがいろいろな情報がわかるが,MRIは子どもが暴れてしまうと撮影が難しいので,第一次的にはCTを優先する,とされていたように思われます。死後画像診断であれば、そうした問題は起こらないことになりますので…。
 AHTについて,公表されている裁判例を調べた際には,この死後画像検査が証拠として出されている物は見あたらなかったようにも思うのですが(あるいは,医師がそれを根拠に意見を述べていたものもあったのかもしれませんが…),こうしたものがもっと撮影されるようになれば,冤罪なのか,そうではないのかについても,もっと確実なことがわかるように思われます。
 今は,撮影について費用的な問題もあるとのことですが,警察や横浜地検でもこうした問題への取り組みを強化されると聞いていますし,何とかならないものでしょうか…。
 なお,AIの読解については,日本医師会のモデル事業で行われているとのことです。

 それ以外には,小児死亡時のグリーフケアのお話などが,とても興味を惹かれました。自殺された方のご遺族に対して行われた調査研究同様、相手の心の問題があり、研究として実施することが大変な課題だと思いますが,これから必要なことだと思いますので…。

 私は,もう児童虐待分野から離れますし,今後弁護士会の子どもの権利に関する委員会に関与する気にはなれていませんので,こうした研究に目を通すことも無くなっていくように思われます。
 しかし,一時期とはいえ,この問題に関心を持ったものとして,こうしたお医者をはじめとする研究者の方々の取り組みは,非常に有り難いものだと思いますし,それが形となっていくことを願ってやみません。
 お話を聞かせて頂き,有り難うございました。


※ 情報共有との関係では、会場とのやり取りで【職員の異動時期】の問題が提起されました。異動時期をずらす、ということも一つ考えられるでしょうが、よほど大きくずらさないと意味がない気はしますし、異動時期を複数設けることによる人事部門や会計部門等のコストがどうなのか、管理職側の取られる時間等のコストはどうなのかも問題になるでしょうね…。ほかは、担当者を複数にすることなどですが、これも予算との関係で可能なのかどうか…。


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