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海兵隊と陸戦隊と陸軍船舶兵、そして九六式陸攻とB−36

2010/06/26 00:05

『桃太郎 海の神兵』(1944)では、海兵隊ならぬ海軍陸戦隊所属の空挺部隊指揮官としての桃太郎の姿を目撃したわけだ(前回の話)。

 

 

そこでご紹介した通り、『ウィキペディア』の「九六式陸上攻撃機」の項には、

 

 なお、「空の神兵」として国民に広く知られる事となる日本海軍空挺部隊を運搬したのも、九六式陸攻の輸送機版である九六式陸上輸送機である。1942年(昭和17年)1月11日にセレベス島のメナドに二波408人を降下させたのは延べ45機、2月20日に西ティモールのクパンへ二次に渡り700人を降下させたのは28機の九六式輸送機であった。

 

…と書いてある。つまり、蘭印(インドネシア)攻略作戦での海軍空挺部隊の活躍が、アニメのベースとなっているというわけだ。

 

「敵地に降下して強襲、制圧」するのが空挺部隊(落下傘部隊)の役割である。海軍に所属する部隊であるが、陸上戦闘を任務とし、しかも航空機から落下傘降下して、敵地を強襲・制圧するわけだ。実際に、大東亜戦争の緒戦での勝利を、彼らの活躍が飾っているのである。最前線を突破するというよりは、敵の後方、あるいは敵の渦中に乗り込んでの戦闘を任務としていることになる。

米国の海兵隊の任務の中心が敵前上陸の先頭を務めることであるのと同様の、危険な兵種である。日本海軍の陸戦隊は、敵前上陸のような戦闘行動を主任務としているとは言い難いが、その中の空挺部隊に関しては、米海兵隊の敵前上陸に劣らぬ危険度の高い作戦行動に従事していたと言うことが出来る。

 

 

 

大日本帝國の戦争の場合は、敵前上陸も陸軍が担っていた。そのために陸軍も船舶を保有し、陸軍船舶兵という兵種も存在した。

ダイハツ(大発)と呼ばれる上陸用舟艇の存在は知っていたが、最近、その母艦に当たる艦艇の存在を教えられた。

「神州丸」の話が、実に興味深いのでご紹介する。

 → http://homepage2.nifty.com/i-museum/19450103sinsyu/sinsyuu.htm

 

 

このサイトによれば、


 陸軍独創の強襲揚陸艦
 陸軍歩兵部隊が海から敵地の海岸に上陸するには,輸送船の甲板に積んだ上陸用舟艇(大発・小発など)をクレーンで海上に降ろし(泛水)歩兵は縄梯子を伝って舟艇に乗り移るという危険で効率の悪い作業が必要でした.その欠点を補う目的で陸軍が独創的なアイデアを盛り込んで極秘に設計したのが運送母艦GL(GodLand)すなわち神州丸だったのです.


…という話なのだ。

 

しかし、今回、この神州丸を取上げたのは、むしろ、


 多くの船名をもつ機密船
 神州丸はGL,龍城丸,MT,土佐丸という多彩な防諜名を持っているので,その事績を調べようとするとしばしば混乱してしまいます.対米英開戦開始の直後,インドネシア(蘭印)攻略を目指すジャワ島上陸作戦の最中に味方の魚雷を受け,作戦を指揮する第十六軍司令官今村均中將を海中に放り出して転覆した龍城丸がこの神州丸のことだと理解するまで私自身だいぶ回り道をしてしまいました.それほどに重要な機密として秘匿された船でした.


…というエピソードに心を惹かれたからである。

 

 

「日本海軍空挺部隊長」としての桃太郎の活躍したのと同じ蘭印(インドネシア)攻略作戦で、日本陸軍の上陸作戦実施中に味方の日本海軍の魚雷により沈められた艦が、この神州丸なのだ。この春の韓国哨戒艦沈没にまつわる「疑惑」の一つとして話題になったものに、同士撃ち説(演習中の魚雷の誤発射による)があるが、それを思い出させる話ではないか!

 
 
 
 
 
ところで、前回の最後で、同時期のアメリカではカラーの娯楽アニメ作品が制作上映されていた云々という話をした。

 

その例として、ダフィー・ダックがナチス相手に活躍するワーナー製のアニメをご紹介しておくことにしよう(→ http://www.youtube.com/watch?v=FWehnyAR6-k)。

『桃太郎 海の神兵』は確かに(様々な意味においての)力作・大作だがモノクロ作品であるのに対し、ダフィー・ダックの方はお笑い目当ての娯楽アニメであるにもかかわらずカラー作品だったのである。もっとも、当時の米国では、モノクロアニメも量産されていたことも確かである。ここでは、有名な『Tokio Jokio』を取上げておこう(実は以前にも紹介したことがあるのだが…  Banned Cartoons--Japs- Tokio Jokio - 1943 - B&W → http://www.youtube.com/watch?v=KvA1zphaeTQ)。『Tokio Jokio』は、ご覧になればわかる通り、当時の日本製の(大日本帝國の)ニュースフィルムの体裁をとっている。

 
今回、数ある戦中アニメの中から『Tokio Jokio』を取り上げたのは、そのニュースフィルム仕立てであるところに着目したからだ。

つまり、毎週の映画館での新作映画(ドラマ)の上映の際には、ニュースフィルムも必ず上映されていたのが、当時の映画上映のスタイルだったということを、あらためて意識にのせて欲しいのである(テレビのない時代の話だ)。そして、もうひとつ、ニュースフィルムに加えて、ワーナーやディズニーの娯楽短編アニメの上映も欠かせないものであったということなのだ。

あのダフィー・ダックは、そういった週代わり上映用の量産アニメの一本だったと思われる。つまり、乾坤一擲の国策プロパガンダなどではない、(多少のプロパガンダ臭があるとは言え)お笑い娯楽作品としてのアニメが、フル・カラーであったというお話なわけだ。

 
 
で、フルカラー・アニメの事例をもう一本。『Victory Through Air Power』(→ http://www.youtube.com/watch?v=C7dkC4iJf54)をご覧いただきたい。これは、ディズニーの「自主制作」のプロパガンダアニメなのだ。空軍力の充実、特に戦略爆撃機(重爆撃機)の生産・保有・活用こそが、戦争での勝利を約束するのだという(セバスキーの)主張の紹介啓蒙のために、ディズニーは、カラー長編アニメを「自主制作」していたのである。

内容については、実は以前に取上げているので、そちらをお読みいただきたい(「無差別爆撃の論理 3」→ http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-dcda.html ただし、文中で紹介した「予告編」の動画は削除されてしまって「YouTube」では、今は見ることは出来ない←ただし「ニコ動」で見ることは出来るようである)。

 
さて、問題の『Victory Through Air Power』のラスト・シーンに出てくるのは、ディズニーが(セバスキーが)理想とした「アメリカ本土から発進し、無着陸で日本を攻撃可能な長距離爆撃機」をアニメ化した姿である。アラスカから発進する六発重爆撃機が日本に対する都市無差別爆撃を敢行し、日本は焼き尽くされ、破壊し尽くされるわけだ(それがディズニーにとってのハッピーエンドである)。

現実には、当時の米国にも、「アメリカ本土から発進し、無着陸で日本を攻撃可能な長距離爆撃機」を製造する力はなかった。B−29が東京をターゲットとするためには、サイパン陥落を待たねばならなかったのである。

 
 

で、現実に米国が、「アメリカ本土から発進し、無着陸で日本を攻撃可能な長距離爆撃機」を保有するのは戦後のことであった。

次の動画をご覧いただきたい。

Convair B-36 Peacemaker Biggest Bomber 1946 Universal Newsreel   (2:00)
 → http://www.youtube.com/watch?v=YgStI1S_rEM

これがまさに当時のニーュスフィルムなわけだが(後半のアイゼンハワーの姿!)、このフィルムの前半に登場するのがコンベアの六発重爆撃機B−36である。1946年8月8日の初飛行の映像がユニヴァーサルのニュースリールとなったわけだ。

第二次世界大戦の終了後、米国は念願の(?)空中給油により無着陸長距離飛行を可能にした大型爆撃機を手に入れたのである。冷戦の時代のスタートを飾ったのが、このB−36「ピース・メイカー」なのであった。

 
B−36を主人公(?)にしたような映画さえ製作された。日本では『戦略空軍命令』というタイトルで公開された『Strategic Air Command』の映像を紹介しよう。

Now that's a BOMBER!   (5:32)
 → http://www.youtube.com/watch?v=3wvEzhyY9F4

ここに登場するのは、レシプロの六発に加えて、ジェットエンジン四発を追加装備したモデルである(ジェットエンジン始動に伴い震える機体の様子が、見事に撮影されている)。

 

もう一つ、アラスカの基地のB−36の映像だ。

B-36 Peacemaker   (8:37)
 → http://www.youtube.com/watch?v=AIKVBPVmeHo&feature=related
まさに、かつてのディズニーの(セバスキーの)描いた夢(アラスカから発進する六発重爆撃機!)の現実化した姿である。

 

 

 

 

ところで、このB−36だが、「YouTube」の映像だと、もう一つその巨大さが伝わらない。

で、B−29と並んで写っている有名な画像を用意してみた。どうだろう、この大きさ!! B−36の左に並ぶ「小さな」爆撃機がB−29なのだ。

B−29は、B−36の登場により、空軍内では「中型爆撃機」として分類されるようになったんだそうな…

 

 

 (http://commons.wikimedia.org/wiki/File:B-29_and_B-36.jpg

 

 

 

検索で見つけた別の画像も面白い。上から第一次大戦時、1920年代の複葉爆撃機(機種は不勉強なので不明)だが、3段目が1930年代のB−10爆撃機、その下が第2次世界大戦時にヨーロッパで活躍したB−17、そしてB−29、B−36という順になる。

 

 

 (http://blogarticles.blogspot.com/2005/08/b-36-peacemaker.html

 

 

 

B−36の巨大さのダメ押し的画像ではないだろうか? (併せて、この画像上での九六式陸上攻撃機のサイズも想像して欲しい) 繰り返すが、これがディズニーの(セバスキーの)描いた夢の現実化した姿なのである。

 

話を戻して、『桃太郎 海の神兵』中の、日本海軍空挺部隊を載せて飛ぶ九六式陸上輸送機の飛行シーン、厚い雨雲の中、機体の継ぎ目から雨水が浸入するエピソードも思い出しておこう。任務の困難さと、それを克服する皇軍精神の強調ということなのであろうか? しかし、既に与圧キャビンを備えていたB−29では、そのようなエピソード(雨漏り)は起こり得ないのであった(カラーの娯楽アニメも、与圧キャビンの装備も、大日本帝國には手の届かぬものだったわけだ)。

昭和二十年の四月、そのB−29の都市無差別爆撃により焦土と化した日本で、『桃太郎 海の神兵』の上映が開始されたわけである。

 
 
 
 
 
 

 


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Binder: 現代史のトラウマ(日記数:646/全体に公開)
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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2010/06/26 01:04
    今回も、以前の記事のリライト。
     (ココログへのアップ用)

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