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日本国の象徴と、國體の本義 12

2010/10/18 22:42

 

 恭しく惟るに、我が国体は天孫降臨の際下し賜へる御神勅に依り昭示せらるる所にして、万世一系の天皇国を統治し給ひ、宝祚の隆は天地と倶に窮なし。されば憲法発布の御上諭に国家統治の大権は朕が之を祖宗に承けて之を子孫に伝ふる所なりと宣ひ、憲法第一条には、大日本帝国は万世一系の天皇之を統治すと明示し給ふ。即ち大日本帝国統治の大権は厳として天皇に存すること明かなり。もしそれ統治権が天皇に存せずして天皇は之を行使する為の機関なりと為すがごときは、これ全く万邦無比なる我が国体の本義を愆るものなり。近時憲法学説を繞り国体の本義に関連して兎角の論議を見るに至れるは寔に遺憾に堪へず。政府はいよいよ国体の明徴に力を効し、その精華を発揚せんことを期す。乃千茲に意の在る所を述べて広く各方面の協力を希望す。
     (「国体明徴に関する政府声明」1935年8月3日  第1次国体明徴声明)

 
暴に政府は国体の本義に間し所信を披涯し以って国民の響ふ所を明にしいよいよその精華を発揚せんことを期したり。抑々我が国体における統治権の主体が天皇にましますことは我が国体の本義にして帝国臣民の絶対不動の信念なり。帝国憲法の上諭並条章の精神亦姦に存するものと拝察す。しかるに漫りに外国の事例学説を援いて我が国体に擬し、統治権の主体は天皇にましまずして国家なりとし、天皇は国家の機関なりとなすが如き所謂天皇機関説は、神聖なる我が国体に悖り、その本義を愆るの甚しきものにして厳に之を芟除せざるべからず。政教其他百般の事項総て万邦無比なる我が国体の本義を基とし、その真髄を顕揚するを要す。政府は右の信念に基き姦に重ねて意あるところを間明し、以って国体観念いよいよ明徴ならしめ、英美蹟を収むる為全幅のカを効さんことを期す。
     (「国体明徴に関する政府声明」1935年10月15日  第2次国体明徴声明)

 

 
昭和10年の岡田内閣による「国体明徴声明」とは、つまり、神話の記述を根拠とした、立憲君主としての天皇の地位の否定に他ならないのである。

…と、シリーズの前回に書いたわけだが、問題の焦点となっていたのは、憲法上の天皇の位置付けであった。

 

現在では、「君臨すれども統治せず」との言葉で表現される(政治的決断に関与しない、憲法に拘束された存在という意味での)立憲君主としての天皇イメージが前面に出ており、その立憲君主的天皇像が、大日本帝國憲法以来の連続性を持つものとして語られている節がある。

 

昭和天皇自身も、「立憲君主」たらんと努力していたという帝國憲法下の自身の姿を、戦後の日々の中で語っていた。

戦中を、「自由主義者」として政治の本流からは排除されがちになりながらも生き抜いた政治家達も、戦後の政治権力の中枢に位置するに際し、昭和天皇の立憲君主的イメージを戦前からの一貫したものとして語っていた。

戦勝国であった米国の対日占領政策の背後には、戦前からの日本の「自由主義的」政治家との親交の深かった駐日大使グルーの姿があり、そこでもやはり、自由主義者たちと共にある立憲君主的イメージの昭和天皇像が語られていたように思われる。

 

日本国憲法を受け入れた多くの日本人達にも、昭和天皇を戦前からの一貫した「立憲君主」としてイメージすることで、「象徴として」の天皇の地位の存続(天皇という地位の存在)への同意は、より容易なものとなったに違いない。

そこには、戦争中の国民が「軍国主義者の被害者」であったように、戦中の天皇も「軍国主義者の被害者」であった、という構図が成立しているようにさえ見える。それは、滅私奉公・尽忠報国の言葉と共に戦争遂行への協力を惜しまなかった自身の姿を、国民が忘れる上でも役立ったに違いない。昭和天皇が「立憲君主」である以上、戦争を遂行した「軍国主義者」と天皇の間には一線が引かれ、あらゆる戦争被害に対する責任は「軍国主義者」のものとなり、「立憲君主」である天皇の責任を問う必要からも逃れられるのである。

 

 

しかし、かつての「国体明徴に関する政府声明」を読めば、政府自身が「君臨すれども統治せず」的な、「立憲君主」としての天皇像を明確に否定していた事実が理解出来るだろう。

そこでは、天皇の地位を立憲君主「的」に解釈することで、大日本帝國憲法下の国家運営の実質的指針として機能していた美濃部達吉の「天皇機関説」が、

 

 即ち大日本帝国統治の大権は厳として天皇に存すること明かなり。もしそれ統治権が天皇に存せずして天皇は之を行使する為の機関なりと為すがごときは、これ全く万邦無比なる我が国体の本義を愆るものなり。近時憲法学説を繞り国体の本義に関連して兎角の論議を見るに至れるは寔に遺憾に堪へず。


 抑々我が国体における統治権の主体が天皇にましますことは我が国体の本義にして帝国臣民の絶対不動の信念なり。帝国憲法の上諭並条章の精神亦姦に存するものと拝察す。しかるに漫りに外国の事例学説を援いて我が国体に擬し、統治権の主体は天皇にましまずして国家なりとし、天皇は国家の機関なりとなすが如き所謂天皇機関説は、神聖なる我が国体に悖り、その本義を愆るの甚しきものにして厳に之を芟除せざるべからず。

 

…等の言葉をもって否定されていたのであった。

 

 

 

 
 

 

〔これまでの記事〕


日本国の象徴と、國體の本義 1
 → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-07cb.html

日本国の象徴と、國體の本義 2
 → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-51d5.html

日本国の象徴と、國體の本義 3
 → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-f855.html

日本国の象徴と、國體の本義 4
 → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-cd93.html

日本国の象徴と、國體の本義 5
 → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-3ac5.html

日本国の象徴と、國體の本義 6
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日本国の象徴と、國體の本義 7
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日本国の象徴と、國體の本義 8
 → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-12d5.html

日本国の象徴と、國體の本義 9
 → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-9871.html

日本国の象徴と、國體の本義 10
 → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-8834.html

日本国の象徴と、國體の本義 11
 → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-c22d.html


 

 

 

 

 



Binder: 現代史のトラウマ(日記数:656/全体に公開)
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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2010/10/18 23:08
    「国体明徴に関する政府声明」も、ホントは旧字体でいかないとなぁ…

  • Comment : 2
    umasica :桜里
     2010/10/18 23:14
    「舊字體」だと「國體明徴に關する政府聲明」という感じか?

  • Comment : 3
    umasica :桜里
     2010/10/18 23:17
    書き忘れたが、以前の記事のリライト。
       (ココログアップ用)

  • Comment : 4
    やわらか☆不思議猫
     2010/10/19 21:13
    おお見事に神化け地雷を踏んでませんですね〜〜(^_^;)d

  • Comment : 5
    umasica :桜里
     2010/10/20 00:12
    やわらか☆不思議猫様


    >おお見事に神化け地雷を踏んでませんですね〜〜(^_^;)d

    一度、現代史のトラウマ用に「舊字體」羅列日記をアップしておこうかと…
    舊字體プールのようなイメージ。
    必要な時に必要な文字を引き上げて(釣り上げて?)使用。

  • Comment : 6
    やわらか☆不思議猫
     2010/10/20 09:47
    それいいかも〜

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