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プロパガンダと記録

2012/02/18 22:04

 本日は午前中に家を出て、

 

 

 東京大空襲・戦災資料センター 開館10周年記念特別展
 東方社写真部が記録したアメリカ軍の無差別爆撃

 会期:2012年2月18日(土)〜4月8日(日)
 会場:東京大空襲・戦災資料センター2階会議室
 

 

…を目指して、まずは錦糸町まで。そこから東京駅まで行くバスに乗って「扇町二丁目」停留所で降りて徒歩十分。初日の今日は特に、

 

 

 オープニング講演会
 日時:2月18日(土)午後1時から4時(開場12時)
 会場:東京大空襲・戦災資料センター2階会議室
 講師:井上祐子(京都外国語大学非常勤講師)
     山辺昌彦(東京大空襲・戦災資料センター主任研究員・学芸員)
     小山亮(明治大学文学部専任助手)
 司会:石橋星志(明治大学大学院博士後期課程)

 

 

…ということになっていて、ギリギリの時間に到着。いろいろと興味深く話を聴く。

 

 

 

 この「東方社」というのは戦中の海外向けプロパガンダ誌として名高い『フロント』の出版元で、原弘や多川精一のグラフィックデザインによる誌面のクオリティーの高さには、頭を下げざるを得ない。
 その「東方社」のカメラマンたちが残したネガフィルムが、昨年になって東京大空襲・戦災資料センターに寄贈されたのだという。今回はその約17000カットのうち、空襲下の東京を撮影したものが整理公開され、その紹介のための講演会が企画されたわけである。

 陸軍参謀本部の対外宣伝出版物制作を業務とした東方社が、どのような経緯で空襲下の東京の記録写真を撮影したのかという問題から解明されないと、残された写真の性格(どこで何を撮影するのかに参謀本部の意向が介在していたと考える方が自然である)も明確にし難いところがある。そういったことを含めて、研究すべき課題は多いにしても、まず空襲記録としての価値の大きさは誰しも認めるものだろう。

 

 デザイナーや編集者の仕事となると、まさにプロパガンダ誌面としてのクオリティーの向上が目標となり、ある意味で「戦争協力」そのものになるわけだが、記録者としてのカメラマンの仕事には、別の側面が見出せるように思われる。

 もっとも、「戦争協力批判」というものは「敗戦」の事実がもたらすものであり、絶対化されるべき視点とするつもりはないが、しかし敗戦に至る戦争遂行の一端を彼らが積極的に担ったという事実から眼を逸らすこともしたくない。デザイナーや編集者が彼らの職業的能力の最高のものを、陸軍参謀本部の求めに応じ、つまり戦争に捧げることで果たそうとしたことも事実なのである。そして、その誌面のクオリティーの高さに、現在の我々も瞠目せざるを得ないのである。

 

 東方社に結集した才能と同様に、我々は、名取洋之助の下に集った日本工房関係者による当時の対外宣伝出版物のクオリティーにも敬意を払うことになるわけだが、彼らの職能の最高度の発揮の場が国策プロパガンダ制作の場以外に残されていなかったのが、「戦時」という状況なのでもあった。本来の彼らの活躍の場であった商業宣伝美術は、戦時下の日本には既に存在し得ないものとなっていたのである。「ぜいたくは敵だ!」というスローガンの下には、商業宣伝技術者に生きる場所はないのである(そのスローガンを考案したのも彼らなのではあったが)。

 

 そのような意味で、写真家(カメラマン)の位置は、グラフィックデザイナーや編集者のものとは異なった性格を帯びる。もちろん、商業広告写真を考えれば、そこに必要なのは現実をより魅力的なものとして見せる技術である。写真は必ずしもミモフタモナイ現実をそのまま記録するものではない。しかし、ミモフタモナイ現実を前にして、ミモフタモナイ現実をミモフタモナイ現実として記録することもまた、写真家(カメラマン)には可能なのである。

 

 残された17000カットの写真がどのような意図で撮影されたのかという問題はもちろん解明されねばならないが、しかし、そこに空襲下の東京のミモフタモナイ現実も、確かなものとして、彼らの手により記録されているのである。

 

 

 

 

 










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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2012/02/18 23:18
    右手の親指をかばいながらの入力終了。

  • Comment : 2
    umasica :桜里
     2012/02/19 09:07
    『フロント』の誌面が伝えるのは、
    いわば「リッチな日本」であり「リッチな大東亜共栄圏」である。
    垢抜けたレイアウトに上質な紙に上質な印刷製本技術。
    そこに「リッチさ」が宿り、
    日本が、大東亜共栄圏が海外に売り込まれるのである。

    しかし、まさにそこに宣伝技術の粋が見出されるのであり、
    戦時日本の実際の出版物との大きな落差が見出されるのである。
    紙質が悪化し、ページ数が減少し、カラーページがなくなる。
    それが戦時日本の出版事情の現実だったのであり、
    その現実との落差に『フロント』誌面に反映された、
    かつての商業宣伝美術関係者の技術の粋が見出されるのである。

  • Comment : 3
    umasica :桜里
     2012/02/19 09:11
    そしてその背後に、
    つまり東方社の背後に、
    潤沢な資金と資材の供給(特配)元であった陸軍参謀本部がある。

    それが贅沢なプロパガンダ誌を支えた構造なのである。

  • Comment : 4
    河童
    河童さん
     2012/02/19 16:23
    >右手の親指をかばいながらの入力終了。
    親指つかうの?
    八本しか使ってない。
    ・・・コレが河童の誤入力原因かなあ。

    そう言えば、元参議院議員の(舌噛みそう)
    フェミニスト 清水 澄子 女史
    落選したときの言い訳が
    「選挙制度が悪いのでまけました」
    己の政策が間違いだったから負けたとは言わない。
    この人に限らず殆どの進歩的な人が他人が悪い。
    コレじゃ選挙におちても当たり前だっつーの。
    この方、河野談話に謝罪と賠償の文言を入れさせた
    張本人(本人談)でその河野談話が真実ってことがまかり通るから
    こわい。
    北朝鮮にいき、抗日記念館を見せられて
    反日的活動をするようになった、らしいけど
    これも北のプロパガンダとも言えるし、
    戦争を語り継ごうMLの会員である、
    青山学院大学名誉教授 神 直子も
    そう言うプロパガンダに影響をうけた御仁の
    一人でもある。
    彼等に共通なのは
    「日本人以上に日本人である」
    ことかな。

  • Comment : 5
    umasica :桜里
     2012/02/19 21:12
    >戦争を語り継ごうMLの会員である、
    >青山学院大学名誉教授 神 直子

    そんな人いないけど…

    >そう言うプロパガンダに影響をうけた御仁の
    >一人でもある。

    …と「他人が悪い」と主張する割に、
    事実関係の確認もロクにしていないんじゃ、
    誰もあなたの話をまじめに聞こうとしないのも仕方がないな。

    http://www.freeml.com/bl/316274/181876/
    (Comment : 10&11 をちゃんと読んでおくように)


    >「選挙制度が悪いのでまけました」

    清水澄子って人のことは知らないけれど、
    現在の小選挙区制はよくないと私も思ってるけどね。

    自分が基本的にマイノリティーに属すると思っているので、
    「小選挙区制にして二大政党制を!」という主張には、
    一度も賛同したことはないからなぁ…

    日本のマジョリティーのご意見とは隔たりを感じることが多いし、
    マジョリティーのご意見が適切だと思ったこともあまりないし、
    ただ、多数決による民意は尊重するしかないとは思うけどね。

  • Comment : 6
    umasica :桜里
     2012/03/09 00:51
    大幅に加筆して完成稿としてココログにアップ。

    プロパガンダと記録(東方社写真部が記録したアメリカ軍の無差別爆撃)
    http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-4058.html

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