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遠野の噂話としてのリアリティー

2012/08/27 23:46

寝そべると、目の前の本棚に柳田國男の『遠野物語』の文庫本があるのに手が伸びたのであった。

仕事は休みで、夏休み気分のダラダラ教モードの一日。リビングに寝そべると、娘用の本棚(と言っても、ウチの本棚は厳密には誰の本棚と決まってはいないのだが)に『遠野物語』はあった。

で、午後は寝っ転がりながら柳田の伝える遠野の世界に浸っていた。




あらためて読むと、確かに民俗学的に重要な記録ではあるが、それが当時の遠野の人々にとってのリアルな噂話でもあることに気付く。

記録されているのは決して昔話ではなくて、佐々木喜善を介して伝えられた、20世紀初頭のリアルな遠野の噂話なのである。

すべてが誰だかの家の誰かをめぐる話であり、どこだかの村の誰かの体験談なのである。もちろん噂話には噂話としての限界があり、その内容は私たちが「事実関係」と呼ぶものと直結はしない。しかし、その噂話がリアリティーを伴うものとして、当時の遠野の人々の間で共有されていたこともまた事実なのである。


100年も昔の噂話として片付けるか、100年しか経っていない、ついこの間の遠野の噂話として取り扱うかという問題は、他人事として読むのか当事者感覚を随伴させながら読み解いていこうとするのかの違いとなるだろう。



放射能をめぐるいささか無責任な噂話がリアルなものとして跳梁跋扈する21世紀の現状を振り返れば、20世紀初頭の遠野の噂話が持っていたであろうリアリティーの質感を想像することも、それほど難しいことではないようにも思われるのである。









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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2012/08/28 00:16
    こんな読後感に至ろうとは、思いもよらぬことではあった。

  • Comment : 2
    askyneko
    askynekoさん
     2012/08/29 14:26
    >寝そべると、

    寝そべっておられたのですね〜

  • Comment : 3
    斎藤博之
     2012/08/29 21:24
    そうなのです。
    柳田國男(やなぎた くにお)は、
    近代人として
    同時代を生きる人びとのディスクールを書きとどめたのです。
    柳田國男にとっての「民俗学」とは、
    いまを生きている人びとに関係のない言い伝え
    などではなかったのです。

  • Comment : 4
    umasica :桜里
     2012/08/29 22:50
    >寝そべっておられたのですね〜

    リビングで横になると、丁度、娘の本棚が…

    この『遠野物語』は昭和60年に28刷の新潮文庫版。
    ただし、古本屋で買ったらしく160円と表示されていて、
    ホントは誰の本なのだかよくわからんのです。

  • Comment : 5
    umasica :桜里
     2012/08/29 23:06
    >柳田國男(やなぎた くにお)は、
    >近代人として
    >同時代を生きる人びとのディスクールを書きとどめたのです。

    今回、あらためて目を通して見て、
    その構図がよぉ〜く伝わってきました。

    今回は、「噂話」という切り取り方をしましたが、

     何某の行為を(当人及び代々の)来歴を通して納得する

    …という形で、
    共同体の中で「納得」が共有されていく過程の反映として、
    『遠野物語』を読み解いていく可能性を考えたりしてました。


    元来が生々しい内容の話なので、
    その読解は解凍作業みたいなものとなってしまい、
    何とも生々しいものとして蘇ってしまうわけですね。

  • Comment : 6
    askyneko
    askynekoさん
     2012/08/30 06:01
    >リビングで横になると、丁度、娘の本棚が…

    さすがに、文学一家であらせられまするね〜

    この本が娘ちゃんのご本だなんて、それだけでも驚きです。
    (普通の本はもちろんながら、現代口語でない本はさらに縁の薄い
    わたしめからいたしますると…)



    >共同体の中で「納得」が共有されていく過程の反映として、

    文学としてではなく、「共同体の中で「納得」が共有されていく過程の反映として」
    の読み方だと、ものすごく、ある意味怖いといいますか…
    しかも、どこの何某という具合に特定されているとなるといっそう…

  • Comment : 7
    umasica :桜里
     2012/08/30 20:01
    >さすがに、文学一家であらせられまするね〜

    文学書は娘の管轄で、
    その父母は、あんまり文学を読む趣味がないのでありました。


    >ものすごく、ある意味怖いといいますか…

    いろんな意味で、リアルな話なんですよ。

  • Comment : 8
    askyneko
    askynekoさん
     2012/09/01 13:55
    本文とまったく関係のないコメントを書くと怒られそうですけれど…

    実は、ピエロメイクなお方とマネキンの熱々見つめ合い画像を見付けてしまいました〜
    (まだまだ読んでいない桜里さまの日記の発掘アソビ?でございまして…)

    「umasicaの噂話とリアリティー」なんて気分でびっくり面白画像

    (↑ あっ、怒らないでくださいまし〜

  • Comment : 9
    umasica :桜里
     2012/09/01 17:40
    >本文とまったく関係のないコメントを書くと…

    タヌキあるいはカッパの同類と見做されます。

  • Comment : 10
    askyneko
    askynekoさん
     2012/09/01 18:26


    あっ…(>_<)

  • Comment : 11
    umasica :桜里
     2012/10/18 07:56
    加筆修正して、ココログ版「現代史のトラウマ」にアップ。


     遠野の噂話としてのリアリティー 1
     http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-96a7.html
     

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