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続々々々・恐ろしき者の末の末

2013/01/30 22:10


シリーズの前回では「第八十九帝國議會貴族院 衆議院議員選擧法中改正法律案特別委員會」の場で、「伊江のおじいちゃん」(祖父の妹の夫であった伊江朝助)が何を語ったのかを読んだ。



その最後に、


 同化された(つまり独立を失った)琉球王国の王家の血統に属する伊江朝助が、ここでは大日本帝國の忠実な臣民(貴族院議員の地位はその事実を示す)として、盛脇(森脇)中尉の行為を告発している構図を読むと、その真摯さに打たれると同時に、小国の運命の象徴的存在としての痛ましさを感じさせられる。


…と書いたわけだが、今回は「第十回国会 外務委員会」の場での「伊江のおじいちゃん」の言葉を読んでおきたい。

昭和26(1951)年、講和条約調印に至る時期に「沖繩及び奄美大島諸島の帰属問題の件」が主題となった場での話である。





第010回国会 外務委員会 第3号
昭和二十六年二月六日(火曜日)
   午後一時五十一分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○講和に関連する諸問題並びに国際情
 勢等に関する調査の件(沖繩及び奄
 美大島諸島の帰属問題の件)
  ―――――――――――――
○委員長(櫻内辰郎君) これより外務委員会を開会いたします。 昨日に引続き、領土問題について陳情のために御上京になつておりまする諸君から御意見を聽取することにいたします。最初に沖繩諸島日本復帰期成会の元貴族院議員の伊江朝助君、元首里市長仲吉良光君、都立大学教授東恩納寛惇君但し今日は東恩納寛惇君は御出席になりませんから、更に全国奄美連合総本部の委員長の昇直隆君、弁護士の谷村唯一郎君から御意見を伺いたいと存じます。最初に伊江朝助君。尚ちよつと申上げますが、大体御発言は二十分くらいとしてございます。
○参考人(伊江朝助君) ダレス大使のもたらすところの米国の対日七原則中に、沖繩諸島の軍事基地継続使用條件として沖繩諸島を米国の管理の下に、国際連合の信託統治下におくということを要望されておるのであります。信託統治というものは御承知の通り軍事的信託統治と普通の信託統治があるのでありまして、軍事的信託統治は安全保障理事会の承認を得なければなりませんが、この理事国であるところの英・米・仏・ソ・中国の五カ国が若し一カ国たりともこれを拒否するようなことがありましたならば、この案は廃案になるということは皆さん御承知の通りであります。普通の保託統治は国連憲章によりますと、自治不能の地域の住民に施行せられるのが原則になつておるのであります。もう一つは将来独立するという下に国際連合の指導を受けて独立するということに規定されておるのであります。然るに沖繩は御承知の通り内地の他府県と少しも異ならざる県会を持ち市町村会を持ち代議士も正名の代議士を出しまして国政に参與いたしておるのであります。又文化、社会制度その他におきましてもことごとく日本内地と異なるところがないのであります。これを自治不能の区域の住民と見るということは甚だ穏かならん話と私どもは思うのであります。米国におきましては信託統治として軍事政略的のものであるか、普通の統治かということをはつきりいたしておりません。又我々は祖国を離れて独立しようなどというような考えは毛頭起したこともなければ話合つたこともないのであります。我々は祖国と共に苦楽を共にし、日本再興の一メンバーとして奉公をしたいのが私どもの念願であります。併し敗戰国として無條件降伏をいたしました以上はこれは基地を貸す、日本宗主権の下に基地を設定するということは私共止むを得ないものだと諦めておる次第であります。この点につきましては政府当事者を始めとして、日本の三大政党はこれを支持して頂いたのであります。我々は思い起しまするというと、若し信託統治になりますると、我々の戸簿は殆んどどこの国の人間やらわからないという甚だ悲しむべき状態に陥らなければなりません。又ハワイのごときは、米国が領有以来五十年間に急激の大発展をしたのでありますが、ハワイの在来の住民は今日殆んど行方不明というような状態になつて、我々の子孫の将来を考えますと誠に悲痛な感じがいたすのであります。どうぞこの際におきまして、余計なことは決して申上げません、日本の宗主権の下に沖繩の基地を当分の間、期限をつけて置くということに対して、我々は止むを得ないと諦めておる次第であります。どうぞ皆さんにおかれましても我々の希望が通るように一層の御盡力を仰ぎたいと思うのであります。余り長くなりますとほかの皆さんにもお困りがありましようからして、私どもはただこれだけを申述ぺましてそうして皆さんの御盡力を仰ぐ次第であります。どうぞよろしくお願いします。
 なお御質問でもございましたら歴史、言語、風俗、宗教その他の点につきまして、私の思慮で及ぶだけお答えをするつもりでございます。私の陳情はこれだけにしておきます。



○参考人(伊江朝助君) 只今團さんの御質問でありますが、我々は終戰当時から、仲吉君が私より事情に詳しいのでありますが、仲吉君を中心として、私どもはマッカーサー司令部及び政府当局に陳情して復帰運動を続けているのであります。それに対して一部の人間、ここで申していいか惡いか知りませんが、いわゆる共産党の諸君が独立運動をしているのであります。共産党の宣伝で以て琉球は独立するということをほうぼうに宣伝している。併し我々はこういう問題に対して一顧も與えないものだといつて始終刎ねつけているのでありますが、共産党以外の人間で日本復帰に反対している人間は殆んどおりません。併し最近又いわゆるアメリカの信託統治になるであろうという声が大分盛んになりましたために、御承知の通り共産党はアメリカ嫌いでありますからして、又日本に復帰運動をするということでやつております。彼らのやることは始終自分本位でやつしている次第であります。なお又米国におりまする沖繩出身の有力なる連中がことごとく我々に同情してくれまして始終鞭撻をしてくれるのであります。しまいにはお前がたは運動費がないだるうから、幾らでも運動費をくれるがどうだというようなことまで言います。併し私どもはこの点については余り運動費も使いませず、ただ我々の希望を以て努力をしておりますから一厘たりとも補助を受けておりません。そうして向うにおります国務省のいろいろの人、殊にあのラジオの米国通信をやる坂井米夫君が断えず盡力してくれている。そういつたような按配で、独立運動というようなものは先にも申上げましたが、我々は夢想だにいたしません。独立しようはずはないのであります。我々は飽くまでも祖国本位であります。祖国と共に苦しみ祖国と共に楽しみ、そうして国家再建に盡したいのが我々沖繩県出身の者一同の殆んど全部の希望であります。



○参考人(伊江朝助君) 甚だ恐縮ですが、御承知の通り徳田球一君は沖繩の出身者でありまして徳田球一君なんかの考えは、アメリカの委任統治になると共産党の復帰はできない、宣伝ができない、そういう意味で独立といえば共産党の温床になる、こういう思想でおるのであります。
 それからもう一つは、先程仲吉君が知事の選挙があつたと言いましたが、共産党から一人立ちましたが殆んどものにならん、一万何千かあつたそうであります。十九万と八方と一万何千こういうような状態でありまして、徳田球一君の管下で一万人ぐらいは或いはおるかも知れません。それだけは一つ附加えて申上げておきます。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/010/0082/01002060082003a.html






伊江朝助はここで、あくまでも沖縄の「祖国復帰」を主張しているわけだが、


 どうぞこの際におきまして、余計なことは決して申上げません、日本の宗主権の下に沖繩の基地を当分の間、期限をつけて置くということに対して、我々は止むを得ないと諦めておる次第であります。どうぞ皆さんにおかれましても我々の希望が通るように一層の御盡力を仰ぎたいと思うのであります。


…とまで言ってしまう心情は悲痛である。

結局、講和条約締結後も沖縄は米軍統治下に置かれ、やっと1972年になって「祖国復帰」を果たすわけだが、その後も(現在に至るまで)米軍基地の存在は続くことになってしまう。

あくまでも、


 当分の間、期限をつけて置くということに対して、我々は止むを得ないと諦めておる


…ということであったにもかかわらず、米軍基地の存在は21世紀まで続くものとなってしまったのである。






背景史料として、前年度の国会の外務委員会の場での「請願」を記録しておく。



第009回国会 外務委員会 第4号
昭和二十五年十二月六日(水曜日)

十二月二日
 在外公館等借入金返還促進に関する請願(田口
 長治郎君紹介)(第三〇一号)
同月四日
 在外同胞引揚の国民運動強化に関する請願(若
 林義孝君外一名紹介)(第四四六号)
の審査を本委員会に付託された。
同月二日
 海外同胞救出国民運動費国庫負担の陳情書外一
 件(甲府市山梨県議会議長星野重治外一名)(
 第一三八号)
 沖繩の日本復帰促進に関する陳情書(東京都千
 代田区有楽町石川ビル沖繩諸島日本復帰期成会
 伊江朝助外三十四名)(第一四六号)
 海外同胞引揚促進の陳情書(全国町村議会議長
 会長齋藤邦雄)(第一八四号)
同月五日
 海外同胞引揚促進の陳情書(秋田市北海道東北
 七県社会事業協議会議長本間金之助)(第二二
 八号)
 在外公館等立替金即時返還に関する陳情書(東
 京都千代田区麹町一番町引揚者団体全国連合会
 理事長北條秀一)(第二四三号)
 密入国者取締費全額国庫負担の陳情書(東京都
 全国自治体公安委員会協議会会長小畑惟清)(
 第二九〇号)
 在外公館等立替金即時返還に関する陳情書(広
 島市広島県華中引揚者在外資産補償措置促進会
 理事長米沢大槌)(第三一五号)
を本委員会に送付された。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/009/0082/00912060082004a.html



「沖繩の日本復帰促進に関する陳情書(東京都千代田区有楽町石川ビル 沖繩諸島日本復帰期成会 伊江朝助外三十四名)(第一四六号)」に名を連ねている一人に「伊江のおじいちゃん」がいるわけだが、前後に並ぶ「請願」の内容を読むと、前後6年目になっても「海外同胞引揚促進」が政治的課題の一つであったことがわかる。










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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2013/01/30 23:02
    身内の視線から戦後史を見ているわけである。

  • Comment : 2
    umasica :桜里
     2013/01/30 23:17
    本文中の、

     同化された(つまり独立を失った)琉球王国の王家の血統に属する伊江朝助が、ここでは大日本帝國の忠実な臣民(貴族院議員の地位はその事実を示す)として、盛脇(森脇)中尉の行為を告発している構図を読むと、その真摯さに打たれると同時に、小国の運命の象徴的存在としての痛ましさを感じさせられる。

    …という一文は、ココログ版では、

     大日本帝國に併合・同化され独立を失った琉球王国の王家の血統に属する(「伊江御殿」の当主としての「伊江王子」である)伊江朝助が、ここでは大日本帝國の忠良な臣民(貴族院議員の地位はその事実を示す)として、盛脇(森脇)中尉の行為を告発している構図を読むと、その真摯さに打たれると同時に、小国の運命の象徴的存在としての痛ましさをも深く感じさせられる。

    …と修正してある。

  • Comment : 3
    umasica :桜里
     2013/02/09 23:40
    ココログ版の「現代史のトラウマ」にアップしておいた。


     恐ろしき者の末の末 5
     http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-c9fd.html

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