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琉球國の「独立」の問題をめぐって 3

2013/02/06 21:46

琉球國を独立国として取り扱うことが適切であるかどうかについて考えてきたわけだが、今回は、


 琉球國は日本の国家領域内の存在であったのかどうか?


…という観点から、問題に照明を当ててみたい。




与儀武秀氏によれば、日本政府の見解は以下のようであったという。



 1997年4月の参院特別委員会で、当時参院議員の照屋覚徳氏が「沖縄の人、ウチナーンチュはいつから日本人になったんでしょうか」という質問を行った。これに対し、答弁に立った当時の政府担当者は「明治32年(1899年)に旧国籍法が制定された。沖縄の方々はその旧国籍法施行の前から一般に日本国籍を有するものとされていたというふうに承知している」との返答を行っている。
 …(中略)…
 質疑の前に、通例に従ってあらかじめ質問通告をした際には、議員からの「質問取り」のため照屋氏を訪れた法務省の担当者が、再三にわたり「ウチナーンチュはいつから日本人になったか、との質問は取り下げてもらえないか」「むつかしくて答えられません」と申し入れてきたという。
 だが結局、質疑は取り下げられず、前出のやりとりがなされた。その上で、引き続き論議は、近代沖縄の帰属とそのあり方についての根本的な関連質疑へとつながっていく。

     与儀武秀 「沖縄は何時から日本か」 (「沖縄タイムス」09.06.29)

http://www7b.biglobe.ne.jp/~whoyou/history02yogi.html#y01



これが、自民党第二次橋本政権下での日本政府の見解である。また、



 近代日本という統一的な国家内に沖縄が組み込まれた経線について、2006年3月の臨時国会では、衆院議員の鈴木宗男氏が政府の見解を質している。
 鈴木氏は琉球王国についての質疑で、「政府は明治維新の時点で琉球王国は日本国の不可分の一部を構成していたと認識しているか」と尋ねた上で、19世紀中ごろに琉球とアメリカ、フランス、オランダとの間で締結された修好条約が法的根拠を持つ国際条約かを確認した。政府側は「沖縄については、遅くとも明治初期の琉球藩の設置及びこれに続く沖縄県の設置の時には日本国の一部であったことは確か」と説明。各修好条約については「日本国としてこれら各国との間で締結した国際約束ではなく、その当時における法的性格につき政府として確定的なことを述べることは困難である」と答弁した。
 これを受け、鈴木氏は「理由を明示せずに答弁を拒否している部分があるところ、追加質問する」とした上で、「1871年にいわゆる廃藩置県が行われ、藩を撤廃する形での行政改革が行われたにもかかわらず、なぜ沖縄では(1879年に)藩が設置されたのか」「政府は、1868年に元号が明治に改元された時点において、当時の琉球王国が日本国の不可分の一部を構成していたと認識しているか」などとあらためて質問。
 これに対し答弁では「1872年当時、沖縄において県ではなく藩が設置された理由については、承知していない」「いつから日本国の一部であるかということにつき確定的なことを述べるのは困難であるが、遅くとも明治初期の琉球藩の設置及びこれに続く沖縄県の設置の時には日本国の一部であったことは確かである」と答えている。
     同 (沖縄タイムス 09.07.13)



こちらは自民党第三次小泉政権下での政府見解である。


結局、照屋覚徳参議院議員の「沖縄の人、ウチナーンチュはいつから日本人になったんでしょうか」という質問に対して、日本政府は「いつ」を明確にすることは出来なかったし、鈴木宗男衆議院議員による「政府は、1868年に元号が明治に改元された時点において、当時の琉球王国が日本国の不可分の一部を構成していたと認識しているか」という質問に対しても、「いつから日本国の一部であるかということにつき確定的なことを述べるのは困難であるが、遅くとも明治初期の琉球藩の設置及びこれに続く沖縄県の設置の時には日本国の一部であったことは確かである」としか答えることが出来なかったのである。



つまり、日本政府は、


 元号が明治に改元された時点において当時の琉球王国が日本国の一部を構成していた


…という明確な認識は持っていない(「確定的なことを述べるのは困難である」と言っているわけだから)、ということになる。

別の言い方をすれば、「明治初期の琉球藩の設置及びこれに続く沖縄県の設置」以前の時期には、琉球王国が「日本国の一部であったことは確か」とは言えないということなのである。


つまり「日支両属」時代の琉球國(琉球王国)に関しては、日本の国家領域の内部の存在として明確に位置付けることが困難であることを、日本政府は明言していたことになる。



照屋覚徳参議院議員の「沖縄の人、ウチナーンチュはいつから日本人になったんでしょうか」という問いについて言えば、鈴木宗男氏の質問とは異なる問題として考えることも出来る。

「沖縄の人」が日本人であるかどうかという問題を国籍問題として考えれば、琉球王国の領域が日本の国家領域の内部にあったかどうかという問題(鈴木宗男氏の問い)と重ねて考えることは可能である。

しかし、照屋議員の問いは、「沖縄の人」が日本人=日本民族(いわゆるヤマト民族)かどうかの問題(民族的帰属問題)としても展開し得るものであり、これもまた一義的に決定され得るような問題ではないのである。








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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2013/02/06 23:07
    なんだか続いてしまうのであった。

  • Comment : 2
    河童
    河童さん
     2013/02/07 20:51
    まあ余り本文をよんでいないけれど
    ML投稿の
    >独立国家であった琉球王国は、
    17世紀には薩摩に抵抗することなく服従し、
    (そこでは形式的な独立は維持しましたが)
    19世紀には明治日本に抵抗することなく服従したわけで、
    (形式的な独立も失われました)
    そこにあったのは圧倒的な軍事的非対称性でした。
    薩摩に対しても明治日本に対しても、
    琉球=沖縄は軍事的に無力だったということです。
    もっとも、軍事国家であった大日本帝國に併合された結果、
    大日本帝國の軍隊による戦争とその敗北に伴い、
    米国の軍事基地化され現在に至ることにもなりました。

    これ根本的に欠落している部分があるよ。

    琉球は原日本とよぶべきもので
    稲作文化が発達しなかった。
    また歴代の政権は中途半端な立ち位置にしていて
    大陸と日本(ヤマト)の二重支配?を許してしまっていた。
    だから併合というのはあたらないし
    琉球王朝は第一尚氏と第二尚氏があり第二尚氏は
    三重県辺りのヤマトが建てた王朝なんだが。
    言語も原日本語でもあるし併合というにはいささか無理がある。
    拙い自分の琉球史知見からみるとね。

  • Comment : 3
    河童
    河童さん
     2013/02/07 21:59
    あそれと
    国際紛争を解決する手段としては・・・という憲法9条。
    領土や領海を侵犯されたら武力行使するっていうのは
    憲法違反にはあたらないからね政府見解でも。
    MLでもその論点は
    はっきりさせておくべきだとおもいますよ。

  • Comment : 4
    umasica :桜里
     2013/02/07 23:26
    >まあ余り本文をよんでいないけれど

    そういうのを失礼千万なヤツと言うんですけれどね。
    こんなことくらい覚えておいた方がいいですよ。

  • Comment : 5
    河童
    河童さん
     2013/02/08 20:10
    失礼した。
    少しは読んでるよ。

    で琉球についての参考文献。
    本当は誤解だらけの「日本近現代史」
    世界から賞賛される栄光の時代 (ソフトバンク新書) [新書]
    八幡 和郎
    http://www.amazon.co.jp/dp/4797371196?tag=hydfbook-22&ascsubtag=JP-SAGE-1358601368623-VPZLZ
    琉球についての考察などはおもしろいとおもうけれどねぇ。

  • Comment : 6
    askyneko
    askynekoさん
     2013/02/09 05:21
    >>まあ余り本文をよんでいないけれど

    イタリ屋地方に、3行以上は読めないというひとがいました

  • Comment : 7
    umasica :桜里
     2013/02/09 06:23
    板利谷の人は、本文を読まずに、

    >これ根本的に欠落している部分があるよ

    …なんてコメントはしませんよ。

    資料を読み込み、
    その都度論点を絞り込み、
    論拠を明らかにした上で、
    何が言えるのかを書いているわけですから、
    批判めいたことをするのなら、
    個々の論点に対し具体的に問題を指摘するのが礼儀というものです。

    いいトシしてその違いが分からないのは、
    とても恥ずかしいことですよ。

  • Comment : 8
    umasica :桜里
     2013/02/20 18:48
    加筆修正してココログ版の「現代史のトラウマ」にアップ。


     琉球國の「独立」と伊江朝直 3
     http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-c185.html

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