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音声情報としての言葉と視覚情報としての言葉と… 2

2013/04/27 21:29

百瀬文さんの映像作品『聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと』をめぐって考える中で、



音声情報を視覚情報として理解するのが「口話」ということになるが、耳が聞こえる人間にとっては視覚情報による言葉とは、通常、文字情報を意味する。

木下さんの場合、視覚情報に変換された音声情報としての言葉と、文字情報として表現された視覚情報としての言葉とは重なるものなのだろうか? それともそれぞれに別のものとして存在するのだろうか?

視覚情報に変換された音声情報としての言葉は文字情報として理解されていると考えてよいのだろうか?



…などという話を書いたわけだが、耳が聞こえる人間がどのように会話の言葉を理解しているかと言えば、通常は音声情報として聴き取り、音声情報として発話しているということになりそうである。

同音異義語の解釈の必要な局面では、聴き取られた音声情報から文字情報への変換による同音異義語の参照がされるにせよ、日常会話のレベルでは、音声情報として聴き取り、そこでは音声情報のままに言葉を理解し、音声情報として自らの言葉を発する。

そもそも文字情報としての言葉に先立つものとして音声情報としての言語の長い歴史があり、言語の文字情報化は歴史的には新しい話だし、音声言語は人類に普遍的なものだが、文字言語はそうではない。



言語を支えていたのは基本的に聴覚であった事実は、たとえば、


 すでに見たように、言語記号は二つのまことに異なった事象の間に精神が樹立する結合であるが、それらの事象は二つとも心的なものであり主体の中に存在する。一つの聴覚映像が一つの概念に結合されているのである。


…というソシュールの表現にも反映されている。ここで丸山圭三郎は、ソシュールの用いた”image acoustique”という語を「聴覚映像」と訳しているわけだが(丸山圭三郎 『ソシュールを読む』 講談社学術文庫 2012 205ページ)、そこには基本的に言語が音声情報であるという事実と同時に、ソシュール自身が”image”という語を用い、そのソシュールの用語を「image=映像」として取り扱わざるを得なかった事実もまた興味を引く。「映像」という「視覚」に関わる語を用いている事実に、である。

丸山はソシュールの思想の成立過程と関連させて上記の一節を示しており、この「聴覚映像」と「概念」は後に「シニフィアン」と「シニフィエ」としてソシュールの言語論の核心を示す語へと洗練されていくものであることも記されている。

単純化すれば、記号としての音(シニフィアン)と、(記号としての音の志向対象としての)概念(シニフィエ)の結合として語が説明されることになるわけだ。文字情報は、音声情報の視覚情報化の産物として説明可能であろう。記号としての音(聴覚映像)ではなく視覚的記号としての文字を人類が獲得したことを示す。

音声情報の視覚化の問題として考えれば、音声と文字の関係も恣意的なものであることを付言しておこう(音としての「ア」を「あ」と表記するか「阿」と表記するのか「a」と表記するのかは本質的問題ではないという意味で)。いずれにしても、そこに存在するのは、文字情報として視覚化された音声情報=シニフィアンとなる構図である。



そのような関係を確認した上で、当初の問いに戻る。「問い」を次のように書き改めることが出来るだろう。



聴覚に支障がなければ、音声言語による会話は音声情報のやり取りとしてそのまま成立し、文字情報への変換は常に必要なものではない。

聴覚に障害があり「口話」を会話の手段とする場合、相手の発話は音声情報であっても、口の開き方という視覚情報によってのみ把握が可能になるわけだ。口の開き方という視覚情報は、常に文字情報への変換による理解を必要とするものなのであろうか? 口の開き方という視覚情報がそのまま「言葉」として理解されることはないのであろうか?








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