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聖戦貫徹

2013/08/28 22:45



 現在世界の歴史から戦争を取り除いたならば残る何物があるか。一たび戦争が起こりましたならば、最早問題は正邪曲直の争いではない。是非善悪の争いではない。徹頭徹尾力の争いであります。強弱の争いである。強者が弱者を征服する、これが戦争である。正義が不正義を膺懲する、これが戦争という意味ではない。



昭和15年の第七五帝國議会における斎藤隆夫の演説中の言葉である。さらに斎藤は、



 この現実を無視して、唯いたずらに聖戦の美名に隠れて、国民的犠牲を閑却し、いわく国際正義、いわく道義外交、いわく共存共栄、いわく世界の平和、かくのごとき雲を掴むような文字を列べ立てて、千載一遇の機会を逸し、国家百年の大計を誤るようなことがあれば、現在の政治家は死してもその罪を滅ぼすことはできないのであります。



…とまで言い切った。

それでどうなったのかというと、



 昭和十五年三月七日、衆議院で斎藤隆夫の除名可決。同月九日、この除名に反対した片山哲ら八議員を所属の社会大衆党が除名する。その同じ日の三月九日、衆議院は「聖戦貫徹決議案」を可決。同じ月の二五日には、各派の衆議院議員一〇〇人余りが「聖戦貫徹議員連盟」を結成した。
     三國一郎 『戦中用語集』(「聖戦」の項より) 岩波新書 1985  59〜60ページ



…という結末を迎える。


結局、「雲を掴むような文字を列べ立てて」も戦争には勝てないという斎藤隆夫のリアリズムは無視され、まさに「千載一遇の機会を逸し、国家百年の大計を誤る」という事態に立ち至ったわけだが、敗戦という現実を前にして「死してもその罪を滅ぼすことはできない」と自らの責任について考えた政治家がどれだけいたのか?








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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2013/08/28 23:07
    勝った者が正しい、それが戦争というものの論理なのである。

  • Comment : 2
    umasica :桜里
     2013/08/28 23:12
    正しい者が勝つ、というのは確かに道義的な考え方かも知れないが、
    戦争のリアリズムとは関係ないのである。

  • Comment : 3
    Molotov
     2013/08/28 23:42
    Might is right という韻を踏んだ諺もあるし・・・。

    そろそろシリアにトマホークが飛ぶかも。

  • Comment : 4
    kiyoppy
    kiyoppyさん
     2013/08/29 12:16
    Right is might と上を曲解して使った政治家もいましたね。その方の娘さんが今度駐日大使になるそうですが。

  • Comment : 5
    umasica :桜里
     2013/08/29 19:52
    日本的表現では「勝てば官軍」というのがありますね。
    正義に対する相対主義というか、ちょっとシニカルな日本人の構え方。
    (健全な考えだと思います)


    しかし、この「勝ったから正しい(勝てば官軍)」思想が靖国神社の基底となる。
    (本来の相対主義が失われ、勝者の正しさを絶対化させてしまう)
    維新後は、大日本帝國の勝った戦争=正しい戦争の死者を祀る場所になってしまった。
    英霊=正しい(勝ったから正しい)戦争の戦死者、という位置付けのままで、
    日本は大東亜戦争(支那事変から対米英の世界戦争)に突入してしまう。
    けど、戦争には負けてしまう。
    勝つことで戦争の正しさが保障されていたのに、負けた戦争という結末。
    「英霊=正しい(勝った)戦争の死者」というこれまでの構図は破産してしまう。

    で、戦後は、「負けたけど正しい戦争」ということにしてしまった。
    「勝ったから正しい戦争」だったものを「負けたけど正しい戦争」へとすり替えた。
    言わば、神社創設の理念の変更なんですけどね。

  • Comment : 6
    umasica :桜里
     2013/08/29 20:06
    「勝ったから正しい」は、いわゆる「国際法」の基本でもあって、
    大戦後の連合国による戦後処理も、その典型的事例ですね。

    いわゆる東京裁判なんかも「勝者の裁き」になってしまう。

    ただ、それを日本人が批判は出来ない。
    そもそも斎藤隆夫を衆議院から除名した大日本帝国は、
    「東亜新秩序建設」を名目として大東亜戦争を遂行したわけで、
    つまり、それまでの(米英中心の)国際法秩序の改変を、
    大東亜戦争の目的として掲げていたわけです。
    目論見では、日本が大東亜戦争に勝利し、
    米英中心の国際法秩序を大日本帝國中心の国際法秩序へと変更する。
    なので、単細胞な連合国批判はダブルスタンダードになってしまう。
    (そういう単細胞が多いのには閉口しますけどね)

    日本の戦争も相対化し、戦後の国際法秩序も相対化する。
    その両者の片方だけではダメなんですけど、
    ネット上で元気なのは、どっちか片方の信奉者というのは困ったもんです。

  • Comment : 7
    umasica :桜里
     2013/08/29 20:11
    >神社創設の理念の変更


    そもそも靖国神社は戦死者一般の慰霊施設・追悼施設ではなく、
    国家による正しい戦争の戦死者=英霊を祀る施設だったのだということ。

  • Comment : 8
    umasica :桜里
     2013/08/29 20:16
     ↑
    構図としては、

     戦争の正しさ⇒戦争における勝利
        ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ 
     戦争における勝利⇒戦争の正しさ

  • Comment : 9
    umasica :桜里
     2013/08/30 00:06
    戦争には大義名分がほとんど不可欠なものではあるし、
    そもそもの話としては、二つの対立する「正しさ」が存在し、
    「正しさ」の対立の決着を図ろうとする際に、
    暴力行使の「勝負」によって解決しようとするものであって、
    暴力における強さを「正しさ」を測る基準としてしまうものなのだということ。


    戦争は勝つ前提でしない限り意味はないし、
    戦争に勝つためには、強い相手と戦争をしないことが必要条件なのだということ。
    その意味において、大日本帝國は完全に選択を誤り判断を誤った。
    この事実から目を逸らすことにばかり夢中になっている連中に共感することは出来ない。

  • Comment : 10
    umasica :桜里
     2013/08/31 10:29
    >その意味において、大日本帝國は完全に選択を誤り判断を誤った。

    戦争は、必ずしも双方の合意の下に始まるわけではないから、
    強い相手との戦争に巻き込まれてしまう状況は、確かに存在する。

    そのような場合に、生還を期すことなく戦闘に臨むことはある。
    通常はいわゆる日本の「特攻」(だけ)を思い浮かべるだろうが、
    第二次大戦時のポーランドの鎗騎兵にしても、
    アメリカ史の中での「アラモの戦い」にしても、
    将兵は、圧倒的で強大な敵に対する生還を期さぬ闘いを遂行し、
    従容として戦死していった。


    大東亜戦争は、日本による主体的な戦争である。
    日本は支那事変の不拡大ではなく拡大を自ら選択し、
    支那事変の拡大の果ての打開策としての仏印進駐は、
    (援蒋ルート閉鎖としての北部、南方資源確保の第一歩としての南部)
    むしろ米国の強硬な対日禁輸政策を将来し、
    大日本帝國は資源確保のための対米英戦開始に至る。

    支那事変の拡大は、
    蒋介石の国内的求心力を高めることに役立ち、
    中国と米英との利害を一致させ協調させることに役立った。
    チャーチルにとっては、
    日本の対米英開戦はヨーロッパでの英国の孤立の解消に役立った。
    ルーズベルトにとっては、
    日本の対米英開戦は、米国内世論の戦争忌避感情を一変させ、
    ヨーロッパでの参戦(英国への援助)の口実を作るのに役立った。

    では、支那事変の拡大は、どのように日本の役に立ったのであろうか?

    この問題から目を逸らすことにばかり夢中になっている連中に共感することは出来ない。

  • Comment : 11
    umasica :桜里
     2014/10/31 08:06
    加筆修正して、ココログ版の「現代史のトラウマ」記事としてアップ。


     「聖戦貫徹決議」の非現実性と斎藤隆夫のリアリズム
     http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-c6a1.html

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