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何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実

2015/08/14 21:49

戦後70年の「安倍談話」から、いわゆる「歴史認識」問題の核心部分を抜き書きしておく。





 世界を巻き込んだ第一次世界大戦を経て、民族自決の動きが広がり、それまでの植民地化にブレーキがかかりました。この戦争は、一千万人もの戦死者を出す、悲惨な戦争でありました。人々は「平和」を強く願い、国際連盟を創設し、不戦条約を生み出しました。戦争自体を違法化する、新たな国際社会の潮流が生まれました。

 当初は、日本も足並みを揃えました。しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました。国内の政治システムは、その歯止めたりえなかった。こうして、日本は、世界の大勢を見失っていきました。

 満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。

 そして七十年前。日本は、敗戦しました。

 戦後七十年にあたり、国内外に斃れたすべての人々の命の前に、深く頭を垂れ、痛惜の念を表すとともに、永劫の、哀悼の誠を捧げます。

 先の大戦では、三百万余の同胞の命が失われました。祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦陣に散った方々。終戦後、酷寒の、あるいは灼熱の、遠い異郷の地にあって、飢えや病に苦しみ、亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦などによって、たくさんの市井の人々が、無残にも犠牲となりました。

 戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が、数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では、戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲となりました。戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません。

 何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実。歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。一人ひとりに、それぞれの人生があり、夢があり、愛する家族があった。この当然の事実をかみしめる時、今なお、言葉を失い、ただただ、断腸の念を禁じ得ません。

 これほどまでの尊い犠牲の上に、現在の平和がある。これが、戦後日本の原点であります。

 二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。

 事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に訣別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。

 先の大戦への深い悔悟の念と共に、我が国は、そう誓いました。自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。七十年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たちは、静かな誇りを抱きながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。

 我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。

 こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。

 ただ、私たちがいかなる努力を尽くそうとも、家族を失った方々の悲しみ、戦禍によって塗炭の苦しみを味わった人々の辛い記憶は、これからも、決して癒えることはないでしょう。

 ですから、私たちは、心に留めなければなりません。

 戦後、六百万人を超える引揚者が、アジア太平洋の各地から無事帰還でき、日本再建の原動力となった事実を。中国に置き去りにされた三千人近い日本人の子どもたちが、無事成長し、再び祖国の土を踏むことができた事実を。米国や英国、オランダ、豪州などの元捕虜の皆さんが、長年にわたり、日本を訪れ、互いの戦死者のために慰霊を続けてくれている事実を。

 戦争の苦痛を嘗め尽くした中国人の皆さんや、日本軍によって耐え難い苦痛を受けた元捕虜の皆さんが、それほど寛容であるためには、どれほどの心の葛藤があり、いかほどの努力が必要であったか。

 そのことに、私たちは、思いを致さなければなりません。

 寛容の心によって、日本は、戦後、国際社会に復帰することができました。戦後七十年のこの機にあたり、我が国は、和解のために力を尽くしてくださった、すべての国々、すべての方々に、心からの感謝の気持ちを表したいと思います。

 日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります。






「先の大戦」あるいは「あの戦争」を「侵略」と位置付けるかどうかについて曖昧である、との批判があるようだが、安倍氏は、



 先の大戦では、三百万余の同胞の命が失われました。祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦陣に散った方々。終戦後、酷寒の、あるいは灼熱の、遠い異郷の地にあって、飢えや病に苦しみ、亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦などによって、たくさんの市井の人々が、無残にも犠牲となりました。

 戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が、数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では、戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲となりました。戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません。

 何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実。歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。一人ひとりに、それぞれの人生があり、夢があり、愛する家族があった。この当然の事実をかみしめる時、今なお、言葉を失い、ただただ、断腸の念を禁じ得ません。



…と記しているのである。

「戦火を交えた国々」(後段ではあらためて「中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域」が指定されている)での「先の大戦(あの戦争)」の被害者として、直接の戦闘での死傷者だけではなく、「食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲とな」った事実をも認めているし、「戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません」との言葉でまず念頭に置かれているのは、日本軍のいわゆる「従軍慰安婦」とされた人々の存在であろう。

「あの戦争」における被害の問題を、日本人の間の国内問題としてだけではなく、「戦火を交えた国々」そして「戦場となった地域」をも巻き込んだ問題として位置付け、それらの国々と地域の「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実」を語ることで、被害をもたらした主体として「我が国」が指名されていることは重要である。

「侵略」の文言の用法にこだわることも一つの視点ではあろうが、「あの戦争」における加害・被害の関係の中で、「我が国」が「加害」の主体であるとの認識が、安倍氏によって明確に示されていること(及びその重要性)には気付いておくべきである。







産経新聞は、安倍晋三首相が戦後70年談話の作成に向けて設置した有識者会議「21世紀構想懇談会」が提出した報告書についての「社説(産経新聞紙面では「主張」欄である)」の中で、


 未来へ進む土台となる歴史をめぐる表現には、英知の発揮が必要である。過去を一方的に断罪した村山富市首相談話は、日本の名誉と国益を損なってきた。その轍(てつ)を踏んではなるまい。


…との見解を述べていたが、実際の「安倍談話」に記された「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実」との認識の重大性、「我が国」を「戦火を交えた国々」そして「戦場となった地域」に被害を与えた主体(すなわち加害の主体)として位置付けたことの重大性を理解しておいたほうがよい。

実際に発表された「安倍晋三首相談話」では、「村山富一首相談話」以上に踏み込んだ表現が用いられているのである。












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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2015/08/14 22:30
    安倍支持者に対する「裏切り」と言うべき事態なのだが、
    ネットの反応を見ると、誰も気付いていないように見える。

  • Comment : 2
    umasica :桜里
     2015/08/15 00:12
    加筆修正して、ココログ版の「現代史のトラウマ」記事としてアップ。




     「安倍談話」を読む
     http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-6a2d.html

  • Comment : 3
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2015/08/15 00:43
    まあ、損害と苦痛を与えたのは事実ですからねぇ。

  • Comment : 4
    umasica :桜里
     2015/08/15 09:36
    ココログ版には、


     「安倍談話」において、「先の大戦(あの戦争)」は「アジアの植民地からの解放のための戦争」としての自賛の対象でないばかりか、「自存自衛の戦争」としての正当化の対象ですらなく、安倍氏が示しているのは「満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました」との認識であり、その際の「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実」であり、「先の大戦への深い悔悟の念」なのである。


    …と加筆しておきました。
    ステロタイプに「安倍談話」を批判するサヨクも、称賛するウヨクも、
    中身をちゃんと読んではいないことは確からしいですね。

  • Comment : 5
    Molotov
     2015/08/15 18:07
    なかなか鋭い視点。
    マスコミに洗脳されない鋭い視点。

  • Comment : 6
    umasica :桜里
     2015/08/17 19:00
    過去の談話の文言をどのように用いているのか?
    (あるいは用いていないのか?)

    そこだけしか問題にしていないんですよね。



    実際の安倍氏は、
    自分の口で言いたくないことを言わないで済ますために多弁になり、
    言わなくて済んだはずのことまで言ってしまっている。

    ま、実際には、
    安倍氏と別にライターがいたんでしょうけど、
    となると安倍氏当人のチェックが甘過ぎるということでもありそう。


    内容を言葉通りに読む限り、
    実質的には歴史認識問題における安倍氏の転向になってるんですが、
    過去の談話の文言の再使用・再確認にこだわるサヨクの皆さんは、
    安倍氏を悔い改めぬ歴史修正主義者として批判を続けてしまうので、
    安倍支持ウヨクの皆さんは安倍氏の実質的転向に気付けなくなってしまう。
    (ホントウなら安倍氏支持者が支持をやめるべき場面なのにね)
    (つまりサヨクの形式的批判が安倍氏への求心力を強化している)

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