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クライスラーの戦車

2016/05/19 22:27

先日は、「昭和11年のシンデレラ(シボレーのシンデレラ)」ということで、1936年(つまり「戦前」である)に、米国の自動車メーカーであるシボレーが販促用に作製したフルカラーアニメーション『A Coach for Cinderella 』を紹介した。


今回は、同じく米国の自動車メーカーであるクライスラーによって、1941年に作製されたと思われるドキュメンタリーフィルム『Assembly Lines Of Defense』である。


1941年には日本による真珠湾攻撃によって、米国もヨーロッパとアジアの二正面での戦争に参戦することになるが、内容から判断して、まだ米国が参戦していない段階でのフィルムだと思われる。

既に1939年には、ナチスドイツによるポーランド侵攻によりヨーロッパでの戦争が始まり、1940年には英国を除く西ヨーロッパがナチスの占領下になってしまっていた。そのナチスの軍隊による「電撃戦」を支えていたのが戦車であり、当時の米国はナチスの戦車に対抗し得る戦車を保有していなかった。

そこで1940年に開発が開始されたのがM3中戦車(当時は参戦前にあった米軍用としてだけではなく、既にドイツを相手に苦戦していた英軍に供給された―英軍仕様がグラント、米軍仕様がリーと呼ばれた)であり、その生産の中核となったのがクライスラー社であった(クライスラーで生産されたのは米軍仕様のモデルである)。






Assembly Lines Of Defense
     https://www.youtube.com/watch?v=qcn52oeUAF4





フィルムには、詳細な設計の進行と同時に、戦車生産のために新たな工場を建設してしまう米国の自動車メーカーの底力が記録されている。

まず工場の規模の大きさに驚かされるであろう。戦車の大量生産には大規模な工場が必要であり、そのためには大量の鉄やコンクリート、ガラスといった資材が必要であり、建設に当る大量の熟練作業員と作業機械が必要であり、まずクライスラーはそのすべてをクリアしているのである。戦車の大量生産には、新たに工員を訓練する必要があるし、新たに様々な部品を設計し、その部品を高精度に製造する技術も必要であるし、その部品を用いて高精度に効率よく組み上げる技術も必要となるし、そのためには新たに様々な工作機械を設計し製造し稼働させることも必要となるが、クライスラーはそのすべてをクリアしている。工場は6カ月で完成し、契約から8カ月で生産が開始されている(フィルムにはその記念式典の映像も収録されている)。

まだ米国の参戦前の、いわば準戦時体制下の段階で、既に民間企業である自動車メーカー(民生用の乗用車とトラックのメーカー)が戦車の大量生産を達成してしまうのである。ちなみに、クライスラーと共にM3中戦車の製造を担ったアメリカン・ロコモーティブ社は、機関車製造を専門とした企業であった。

言うまでもないが、米国の参戦後には、さらに大規模に、様々な民間企業が、米国の戦争を支える大量の兵器を生産することになる(まだ準戦時体制下で作製されたこのフィルムの最後の部分からも、その片鱗が窺える)。  










Tags: なし
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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2016/05/19 23:04
    米国の「物量」の規模の大きさに、まずは驚かされる。

  • Comment : 2
    umasica :桜里
     2016/05/20 08:45
    ココログ版の「現代史のトラウマ」記事としてもアップ。


     クライスラーの戦車
     http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-4774.html

  • Comment : 3
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2016/05/24 19:50
    その圧倒的な工業力を肌身で感じて震えてたのが米国留学中だったときの山本五十六なんですけど。
    そんな彼が、何で開戦派になってしまったのやら。

  • Comment : 4
    umasica :桜里
     2016/05/24 22:33
    成り行きで、ってことなんでしょうかね?

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