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社会派バカと二重国籍問題

2016/09/08 21:46

このところのネトウヨ系興奮ニュースとして、党内選挙で民進党の代表になっちゃうかも知れない蓮舫先生をめぐる「二重国籍疑惑問題」があったりする。


蓮舫先生については、ニュース・キャスター時代の彼女を、故ナンシー関が見事に「社会派バカ」の一言で斬って捨てたのを今でも忘れ難く思う私ではあるが、そしてその印象が今に至るまで変更されることもなく来たのであるが、つまり現在の政治家としての蓮舫先生を支持する気にもまったくならない私なのではあるが、今般の(産経新聞と百田尚樹先生とを含む)ネトウヨ系の盛り上がりには冷ややかな視線を送らざるを得ないのもまた事実なのであった。



以下メンドーなのでリンクは省くが、昭和39年の時点で、戸籍簿等の公文書上の国籍表記に関して、台湾出身者については国籍を「中国」と表記するようにとの法務省からの通達があるらしい。

1967年(昭和42年)生まれの蓮舫先生は、出生当時の国籍法上、(日本国民である母の持つ日本国籍ではなく)父の出身地である台湾を意味する「中国」を自身の国籍として日本の公文書に記載することを求められていたことになるようである。


言うまでもないことであるとは思うが、そもそも「台湾」は地域名であるが国名ではない。「台湾」は、かつては大日本帝國の支配領域であったが、「先の大戦(つまり大東亞戦争)」での大日本帝國の敗戦後は、大陸を追われた国民党政権の支配領域として「中華民国」を国名として名乗ることとなった。昭和39年(1964年)の法務省通達にある「中国」は、この「中華民国」の略称ということになる。その後、1972年の「日中国交正常化」により、日本国は大陸に本拠を置く中国共産党政権下の「中華人民共和国」を「中国」の正統な国家として承認し、国民党政権下の台湾の「中華民国」とは断交した(その時点で台湾の正統的な支配者は、台湾の国民党政府ではなく大陸の中国共産党政府と見做されることとなった)。

しかしそこで台湾出身者の国籍表記はどうなったかというと「中国」のまま! つまり、日中国交正常化後、日本国内公文書上の「中国」は、従来の「中華民国」としてではなく、「中華人民共和国」として読み替えられ取り扱われることで済まされてしまったのである。


蓮舫先生は、出生時は当時の国籍法の規定と法務省通達に従い、台湾出身である父の国籍表記である「中国」(ただし中華民国を意味する)の国籍保有者として取り扱われ、「日中国交正常化後」には「中国」の正統な国家として日本政府に承認された(台湾をも領域とすることとされている)中華人民共和国(もちろんこちらも略称は「中国」である―ちなみに日本国の外務省も、この表記を認めている)の国籍保有者として取り扱われるようになってしまったわけである。


再確認しておくと、1967年の出生時は台湾を領域的に実効支配する国民党政権下の中華民国国籍を意味する「中国」の国籍保有者として取り扱われ、「日中国交正常化」後は台湾をも含む「中華人民共和国」の国籍保有者であることを意味する「中国」籍の保有者として、日本の国内法上の取り扱いを受けていたのである。

日常語の世界の話としてはともかく、日本国の公文書上は、「台湾籍」である「蓮舫」なる人物が存在したことはない、ということになる。


で、1984年の国籍法の改正(母が日本国籍保有者であれば、その子に日本国籍が認められるようになった)により、当時の若き蓮舫嬢は、あらためて国籍の選択を迫られることになる。そこで彼女は(父のアドバイスもあったらしいが)日本国籍をあらためて選択したのであった。

で、ネットで騒がれているのは、その際に「台湾籍を離脱していないのではないのか?」との「疑惑」であるわけだが、先に説明したように、そもそも日本の公文書上(言い換えれば日本国の法理上)、国籍(帰属先の国家)として「台湾」の台湾出身者は存在しない。

その事実を再確認した上で、実際に国籍欄に記載されていた「中国」(ここでは中華人民共和国を意味する)の国籍からの離脱の手続きの実行の有無は問われ得る話ではあるだろう。

ここで焦点となるのは、中華人民共和国の国籍法上の他国の国籍取得者への取扱である。中華人民共和国の国籍法上では二重国籍の保有は認められず、他国の国籍を取得した時点で「中華人民共和国」の国籍は失われる。つまり、若き蓮舫嬢が日本の国内法の規定に基づき日本国籍の取得を選択した時点で、中華人民共和国の国内法に基づき、中華人民共和国の国籍は自動的に失われていることになるのである。つまり、積極的な中国籍離脱の手続きに依ることなく、法理上は国籍離脱者として見做される。

実際問題として考えれば、かつて彼女が北京大学に留学した際には、彼女は日本国のパスポートを使用していた―つまり日本国民として「渡航」した―のであり、中華人民共和国の国籍保有者として「帰国」したわけではないだろう。ただし、台湾の公文書上の問題としては、戸籍上の「籍」は残されている可能性は残る―しかし、台湾は日本国から国家として認められていないので、日本の法理上は蓮舫先生の台湾「国籍」なるものは存在しないわけでもあるし、中華人民共和国の法理上も既に中国の国籍を喪失している人物の籍が地方行政文書(台湾は中華人民共和国政府からすれば国内の一地方に過ぎない)に残されているのは、行政上の瑕疵でしかないし、そもそも台湾の住民の多くは自身の帰属先を「中華民国」と考えているのであって、台湾なる国家の国籍の保有者などとは考えていない―もちろん、「台湾」を自身の帰属先と考え、大陸から独立した領域としての「台湾」を希求する台湾ナショナリストも存在するが―はずである。安易に「台湾籍」という語を用いて論じようとする風潮には、(公文書上の用語法に象徴される)法理的問題への不用意な(そして無関心な)姿勢を感じさせられる。本質的に法理上の問題であるにもかかわらず、心情の上に築かれた妄想の拡大再生産に議論(蓮舫先生への批判)が終始している印象である。










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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2016/09/08 23:19
    (とりあえずのメモ記事)

  • Comment : 2
    umasica :桜里
     2016/09/09 07:50
    ココログ版の「現代史のトラウマ」記事としてもアップ。
    今後、資料的部分を「註」として加筆の予定。


     二重国籍の幻
     http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-3e99.html

  • Comment : 3
    umasica :桜里
     2016/09/09 08:31
       戸籍における台湾出身者の国籍表記に関する質問主意書

    第177回国会(参議院) 質問第二五六号 平成二十三年八月九日 大江康弘(自由民主党)

     現在、台湾人女性が日本人男性の妻となる場合、台湾出身者が日本に帰化する場合、又は台湾出身者が日本人の養子となる場合など、台湾出身者の身分に変動があった場合、戸籍における国籍や出生地は「中国」あるいは「中国台湾省」と表記される。
     戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」と表記しているのは、実に今をさかのぼること四十七年も前の昭和三十九年六月十九日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を「中国」と記載することについて」という通達が根拠になっていると思われる。

    一 戸籍において、台湾出身者の国籍や出生地を「中国」や「中国台湾省」と表記するのは、昭和三十九年六月十九日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を「中国」と記載することについて」という通達が根拠になっていると思われるが、それで相違ないか。もし違うというのであれば、根拠となっている法律や通達などを明らかにされたい。

    二 戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」と表記することは、現状に即し正確だと認識しているか、政府の認識を明らかにされたい。

    三(略)

    http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/syuh/s177256.htm
    http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/toup/t177256.pdf

  • Comment : 4
    umasica :桜里
     2016/09/09 08:34
    答弁書第二五六号 平成二十三年八月十九日 内閣総理大臣(菅直人)

       参議院議員大江康弘君提出戸籍における台湾出身者の国籍表記に関する質問に対する答弁書

    一について

     御指摘のとおりである。

    二について

     お尋ねの「現状」の意味が必ずしも明らかではないが、現在の戸籍において国籍として表示される「中国」は、我が国が国家として承認しているところの「中国」を指すものであり、このような取扱いに問題があるとは考えていない。

    三について(略)  

  • Comment : 5
    umasica :桜里
  • Comment : 6
    やわらか☆不思議猫
     2016/09/09 11:21
    ヨーロッパではしょっちゅう国ができたり滅びたり併合されたり分離したりしていたわけですが、その時の国民の国籍の扱いはどうなっているんでしょうね?

  • Comment : 7
    umasica :桜里
     2016/09/09 18:24
    国籍法には大きく分けると血統主義と生地主義があって、
    更に二重国籍を認めるかどうかの問題が絡み、
    ヨーロッパと一括りにして語るのは難しいようなところがありますね。

    で、国が滅びたり体制が変更されたりすると他国に「亡命」したり、
    「難民」となったり、いずれにせよ「祖国」の保護を受けられなくなる。

    で、難民・亡命者として元の国籍にこだわり続けるか、
    新たな国籍取得が可能な国家に移住するかという二択になるんでしょう。

    国によって国籍取得のハードルにもかなり違いがあり、
    国によっては難民としての受け入れさえ拒まれるのが現実。

    想像を絶する苦労が待ってる、ってことでしょうね。

  • Comment : 8
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2016/09/12 20:50
    むー。
    政治家の国籍問題でなんとなく思い出したのがナポレオンはフランス人でなく、スターリンはロシア人でなく、ヒトラーはドイツ人じゃなかった、てのでありまして。

  • Comment : 9
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2016/09/12 20:52
    ネイティブじゃない方が首相になるとエラいことになる、というまことしやかな珍説。

  • Comment : 10
    umasica :桜里
     2016/09/13 17:27
    …ってことは、首相となった暁には世界史に名を残す??

  • Comment : 11
    umasica :桜里
     2016/09/13 18:12
    しかし…

    蓮舫議員の「台湾籍」というのはどこの国の「国籍」なのか??

    ネトウヨの皆さんだけでなく(というかそれよりは)、
    外務大臣、法務大臣、並びに官房長官の見解を伺ってみたい、と思う。

  • Comment : 12
    umasica :桜里
     2016/09/13 18:34
    わが国の「国籍法」の規定はというと…

    第十六条 
    選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。


    国籍法上、求められているのは、

         外国の「国籍」の離脱


    蓮舫嬢の日本国籍選択宣言時の、
    戸籍を始めとする公文書上の「国籍」欄には「中国」と明記されている。


    で…

     現在の戸籍において国籍として表示される「中国」は、我が国が国家として承認しているところの「中国」を指すものであり、このような取扱いに問題があるとは考えていない。
         (答弁書第二五六号 平成二十三年八月十九日 内閣総理大臣)

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