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続・社会派バカと二重国籍問題 (パスポート所持問題)

2016/09/16 18:39

蓮舫先生のいわゆる「二重国籍疑惑問題」(最近では弥縫的に「二重戸籍疑惑問題」と言い換える向きもあるらしいが、その当人が蓮舫先生の発言のブレ―特に用語法上の一貫性のなさ―を平気で非難しているのは、あまりにご都合主義に見える)について、前回の記事のコメント欄で、


 しかし…

 蓮舫議員の「台湾籍」というのはどこの国の「国籍」なのか??

 ネトウヨの皆さんだけでなく(というかそれよりは)、 外務大臣、法務大臣、並びに官房長官の見解を伺ってみたい、と思う。


 わが国の「国籍法」の規定はというと…


  第十六条 
  選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。


 国籍法上、求められているのは、


      外国の「国籍」の離脱


 蓮舫嬢の日本国籍選択宣言時の、戸籍を始めとする公文書上の「国籍」欄には「中国」と明記されている。


 で…


  現在の戸籍において国籍として表示される「中国」は、我が国が国家として承認しているところの「中国」を指すものであり、このような取扱いに問題があるとは考えていない。
     (答弁書第二五六号 平成二十三年八月十九日 内閣総理大臣)


…というようなことを書いたわけだが(繰り返すが、「台湾籍」というのはどこの国の「国籍」を示すものなのか?)、もう少し、この線上で、問題を追及してみたい。




日本国籍選択当時の蓮舫嬢が所持していたのは「台湾」の「旅券(パスポート)」であるが、で、その旅券をそのまま現在に至るまで所持していた(更新されずに失効してはいるのだが)ことが特にネット上で問題とされているわけだが、台湾の旅券(すなわち中華民国政府発行の旅券)の日本の国内法的位置付けについて、まず確認しておきたい。


現在の入管法(出入国管理及び難民認定法)には以下の規定がある。


第二条  出入国管理及び難民認定法及びこれに基づく命令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 一  削除

 二  外国人 日本の国籍を有しない者をいう。

 三  乗員 船舶又は航空機(以下「船舶等」という。)の乗組員をいう。

 三の二  難民 難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)第一条の規定又は難民の地位に関する議定書第一条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいう。

 四  日本国領事官等 外国に駐在する日本国の大使、公使又は領事官をいう。

 五  旅券 次に掲げる文書をいう。
  イ 日本国政府、日本国政府の承認した外国政府又は権限のある国際機関の発行した旅券又は難民旅行証明書その他当該旅券に代わる証明書(日本国領事官等の発行した渡航証明書を含む。)

  ロ 政令で定める地域の権限のある機関の発行したイに掲げる文書に相当する文書



「台湾」の「旅券」は、日本の入管法上は、当然のことながら「日本国政府の承認した外国政府又は権限のある国際機関の発行した旅券」には相当せず、「政令で定める地域の権限のある機関の発行したイに掲げる文書に相当する文書」として位置付けられる。

現在では、パレスチナ自治政府と共に「台湾」が「政令で定める地域の権限のある機関」として取り扱われ、両「機関」の発行した旅券は、日本への入出国に際して入管法上の旅券として機能している。

もちろん、この規定は、台湾旅券の所持者の台湾国籍保有を認定することを避けるために存在するのであって、台湾(あるいは中華民国政府)発行の旅券の所持者を、台湾国民(あるいは中華民国国民)として位置付けようとするものではない。



しかし、あくまでもこれは現在の法制度上の話なのであって、蓮舫嬢が1984年の国籍法の改正に伴い日本国籍を選択し、(戸籍上の記載をそれまでの)中国籍から日本へと変更した際には、台湾旅券は現在とはまったく異なる取り扱いの下にあったのである。

立命館アジア太平洋大学の山神進教授による「入管法実務解説-第4回」には、以下のように記されている。



 なお上記ロのような規定をおき、“台湾護照”をも入管法上の旅券として認めることにした(平成10年)のは、台湾から本邦への入国者の増加にかんがみ、出入国手続きの簡素化を図れるようにしたものである。すなわちそれ以前は、台湾からの入国者は、有効な旅券を所持しないものとして、渡航証明書を取得しなければならず、また、本邦に在留中に一事海外渡航をしようとする場合には再入国許可証の発行を受ける必要があった

     (http://www.legal-info.co.jp/demo/demo_data/20070118_01.pdf



つまり、蓮舫嬢が日本国籍選択宣言をした当時の日本の国内法制度上は、台湾旅券は無効なものとして取り扱われていたことになる。

当時の蓮舫嬢が所持していたのはわが国の国内法的に既に効力を失なっていた「旅券」なのであり、現在ネット上で非難の的となっているその「旅券」なるものは、更にその後の台湾における更新手続きの不在により台湾の制度上も失効したものであり、いずれにせよ「旅券」としての資格を持たない紙切れに過ぎないのである。



国籍法第十六条の「選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない」との規定を根拠に、日本の国籍選択宣言をした台湾出身者に対し、台湾籍表示(すなわち中華民国政府発行)旅券の台湾行政当局への返納等の手続きを求めてしまえば、台湾籍の表示を「外国の国籍」の表示として取り扱ってしまうことを意味してしまう。窓口レベルでの対応であれば、いかにもありそうな話ではあるが、法務省内の上層ではそのような対応が非常に厄介な事態を引き起こすことは理解されていて当然であり、そのような手続きを要求することは避けられるべきものとして判断されるはずである。要するに、窓口レベルでの対応では台湾での行政上の手続きを求めることもあったであろうが、そのような対応を法務省全体として公式に採用することはあり得ない話であり、台湾出身者の台湾籍旅券の放置の違法性を主張することもあり得ないものと考えられる。法務省としての実際的な対応としては、まずもって旅券の問題に触れないことであり、台湾出身者に「外国の国籍の離脱」の証明を求めないことである。

これ以外に、法理的に問題なく、国家行政としての一貫性を保ち得る対応法はない。

台湾籍旅券をめぐるネット上の盛り上がりは、問題の法理的側面をまったく理解していないところでのものに過ぎない。要するに現実的ではないのである。




蓮舫先生の発言に(特にその用語法に)統一性がないのは、(ネット上で盛り上がっているように)彼女が「嘘つき」であるから(意図的に虚偽を申し立てているから)ではなく、外国籍保有者が日本国籍を取得する際に必要な法的手続きの詳細(「帰化」と「国籍選択」の違い等々をも含む)に関し正確な知識を持たない(つまり「認識不足」ということである)からと理解する方が、発言の統一性のなさを解釈する上で適切であるように思う(加えて、蓮舫先生の発言が、記憶という曖昧なものに依拠し過ぎているという問題がある)。

この理解は、必ずしも彼女を擁護するものではなく、彼女の法制度上の認識不足に対する批判をも含むものである。

国籍法の改正を受け、彼女が国籍選択をした当時の在日外国人をめぐる法的状況として、外登法上の義務とされていた指紋押捺制度への反対運動の盛り上がりがある。その中での「認識不足」は、その時代を生きた人間の一人でありながら(十代の後半という年齢ではあるが)、自身をめぐる法制度上の問題に対する無関心の印象を際立たせてしまう。

もちろん、十代後半という年齢を考慮すれば、そのような現実(それも自らの出自がもたらす現実)から目を逸らしたくなる気持ちも、私には、理解出来るものではある。十代後半の少女にとってデリケートな問題でもあるのであり、一方的に声高に非難するようなデリカシーのなさは避けたい。

しかし、彼女のその後の経歴にはニュース・キャスターがあり、在日外国人をめぐる法制度上の問題への鈍感さは、職業的に致命的なものでもあるはずだ。

そして参議院議員である。その上に民進党の代表だ。不勉強と非難されることは甘受すべきであろうし、そもそも蓮舫先生の政治手法は、政敵の一身上のこのような局面を徹底的に利用し尽くす攻撃的なもの(認識不足は許されるものではなく、曖昧な記憶に基く発言の揺れは認められない)ではなかっただろうか。乱暴な二分法と過剰な一般化に基く糾弾的論法は、そもそもが蓮舫先生がお得意としてきたものとの印象も強いのである。


しかし、繰り返すが、出自をめぐる問題はデリケートなものである。(蓮舫先生自身が実際にデリケートな感性の持ち主であるのかどうかはともかくとして)その点に対する想像力を欠いた議論の氾濫には、いささか絶望的な気分にさせられる。










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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2016/09/16 20:18
    ま、乱暴な二分法と過剰な一般化に基く糾弾的論法は、
    そもそもが蓮舫先生がお得意としてきたものとの印象も強い。

  • Comment : 2
    umasica :桜里
     2016/09/16 23:13
    加筆修正して、ココログ版の「現代史のトラウマ」記事としてアップ。


     続・二重国籍の幻
     http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-11bf.html



    今後は現在の本文に加えて「註」を充実させたいと思うが…

  • Comment : 3
    umasica :桜里
     2016/09/17 20:08
     民進党代表選に立候補している蓮舫代表代行は13日午前、記者会見し、父親の出身地である台湾(中華民国)籍が残っていたことを明らかにした。
     台北駐日経済文化代表処(大使館に相当)から12日夕に確認の連絡を受けたという。蓮舫氏は「記憶の不正確さから混乱を招き、おわびする」と謝罪した。
     蓮舫氏は旧民主党政権で、台湾籍が残ったまま閣僚を務めていたことになり、波紋が広がりそうだ。ただ、15日投開票の代表選を辞退する考えはないと強調した。
     蓮舫氏はこれまで、日本と台湾のいわゆる「二重国籍」を否定。17歳だった1985年に日本国籍を取得した際、父親とともに代表処へ出向き、台湾籍放棄の手続きを取ったと説明していた。しかし、手続きが済んでいたかは「確認中」として、6日に改めて台湾籍放棄の手続きを申請した。
     蓮舫氏は会見で「(台湾籍放棄)手続きが完了すれば、籍に関することは最終的に確定する」と述べ、手続きが終わるまでなお時間を要するとの認識を示した。
         (時事通信 2016/09/13 10:45)

  • Comment : 4
    umasica :桜里
     2016/09/17 20:21
    この報道は興味深い。

    蓮舫先生の「台湾籍放棄」は、
    台湾当局にとってネガティブなものなのかどうか?

    この点については大いに議論の余地がある。

    今回の蓮舫先生の「台湾籍放棄」が、
    国籍法での「外国の国籍の離脱」をあらためて実行したものだとすれば、
    蓮舫先生の「台湾籍」は「外国の国籍」として位置付けられる。
    これは蓮舫先生個人の問題にとどまるものではなく、
    台湾籍一般が台湾の国籍として位置付けられたことを意味してしまう。
    これはむしろ台湾当局にとっては歓迎すべき事態とも言い得る。

    蓮舫先生は台湾のナショナリズムに反する行為をしたのか?
    それとも台湾のナショナリズムに貢献する行為をしたのか?

    ま、日本政府としては静観するのが穏当な対処法であろう。

  • Comment : 5
    umasica :桜里
     2016/09/17 20:27
    ネット上での蓮舫攻撃がエスカレートすればするほど、
    実際問題として、日本政府は厄介な立場に追い込まれるのである。

  • Comment : 6
    umasica :桜里
     2016/09/17 20:41
    ネット上で非難されているように、
    蓮舫先生の「台湾籍放棄」は台湾への「裏切り」と断言し得るのか?
    結果的に「台湾籍」を「国籍」扱いすることになり、
    むしろ台湾当局の利益に適った行為と言い得るのではないのか?

    もっとも、蓮舫先生自身がその点について自覚的であったとは思い難いが。

  • Comment : 7
    やわらか☆不思議猫
     2016/09/19 12:10
    だーっとネットを流し読みしていたら、
    「二重国籍なんかドーデモいい。二次元国籍よこせ」という感じのがあった。
    目に入ったあとの反応が遅れて彼方に流れていったあとだったので読み返して確認するまではないと思ったのだが、あとになってじわじわ笑いのツボにハマってきた。
     一部騒いでいる人びとがいるけれども、多くの日本人にとってはその程度の認識であろうという……

  • Comment : 8
    umasica :桜里
     2016/09/19 12:26
    池田信夫先生の努力も空しく某マスコミ世論調査だと過半数が、

     民進党の蓮舫新代表に期待する

     二重国籍問題は気にならない

    …てな展開でございますね。


    今回、いろいろとわかって面白かったのは、
    国家行政に整合性を持たせるための法務官僚の綱渡り的努力。

    戸籍法に国籍法に外登法に入管法に…
    関連法令の運用で相互に矛盾が出ないようにする苦労!!
    これに水を浴びせ、足を引っ張っているのがネット世論、という感想。

  • Comment : 9
    やわらか☆不思議猫
     2016/09/19 19:02
    そしてそんな細けー事はドーデモイーんだよと思ってる国民……

  • Comment : 10
    umasica :桜里
     2016/09/19 19:54
    本文記事とはまったく関係無い話ですが…

    ココログ版の「現代史のトラウマ」のアクセス解析に、
    なんと「米国海軍」のあしあとが!

    で、いったい何を読んだのかと思ったら…


     「河童の起源は韓国」

  • Comment : 11
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2016/09/22 00:38
    ええーっ!? べ、米国海軍て、あのUSAのネービー??
    「河童」というのは海外の方たちにとってどのような認識なんでしょうね。まさか、実在の可能性があるUMAとか思ってはいないでしょうけど。

  • Comment : 12
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2016/09/22 00:41
    ちなみに、一昔前に話題になった「ツチノコ」は、実在する動物です。その正体はアオジタトカゲ ( •̀ω•́ )/

  • Comment : 13
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2016/09/22 00:42
    あ、脱線コメントばかりで失礼しました。

  • Comment : 14
    umasica :桜里
     2016/09/22 06:37
    アクセス解析には「訪問組織」っていう項目があって、
    iPアドレスから、どこのPCからのアクセスからなのかが表示。

    で、これまでは、いろんな大学とか防衛省とか…

    それが何と今回はホンモノの米国海軍(Navy.mil)!!


    件のエイプリールフールのネタ記事、
    これまでもそれなりにアクセスがあったのですが、
    今回はなんか達成感的なものを感じた次第。

  • Comment : 15
    やわらか☆不思議猫
     2016/10/19 10:52
    いよいよロックオンされましたにゃ。
    ご健闘をお祈りします。
    おそらく次の4月1日の記事は「米国海軍の起源は韓国!」。一本釣りしましょう(^o^)ノ

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