[闇ラス]エマラス-4-
あれから無理やり父と九具楽は闇主を得意先とやらに向かわせたのである。綺麗な貴婦人の3人が闇主が屋敷に来たのを機に噂をし始める。「どちら様なのかしら?」「それにしても見たことの無いお顔ですわ」「いやだわぁ。田舎から引っ越して来られた方よ。ほらっ、似ていないからお気付きになられませんけど、息子を寄越すなんてあの方も随分と図々しいのね」父親にも母親にもあまり似ていない容姿のためによく尋ねられるので、幼小の時期には幼心にも傷ついていたが、今は逆に似ていなくて良かったと思うくらいに父親とはうまくいっていない。故に傷つきもしないのだが、周囲はそうはいかないらしい。九具楽は聞かぬふりでもするようにシャンパンを闇主に勧める。わざわざ喧嘩を売る気はさらさらなくとも気分が悪い事は変わらない。
そんな中、「あまり社交界にも顔を出さない貴方が、珍しくお越し頂くとは何たる光栄か」と主役らしき男が闇主に声をかけた。胸糞悪いお世辞を並べる様子で、闇主が気に入らない空気を漂わせている。本当は、胸内を晒せばいいのだが、九具楽も横から突く。名前を名乗れば乱華と聞いた。九具楽の言う通りに"真面目で謙虚な紳士"という張り紙が付いているような態度だ。それでも妙に大人ぶっているにも関わらず、やはりどこかしっくりとこない。妙に大人ぶった子供というべきだろうか。成人を迎えて、自分が主役になったパーティに酔っていると見える。「まぁ、立派な名家にお育ちの貴方とは違いますから私ではあまり社交界に顔を出すのは忍ばれます」と、無難に闇主は言葉を並べた。確かに金の巻き髪が父譲りであろうことは直ぐに解った。踊り場に掛けられた立派な自画像はとても似ているように見えて、年齢や瞳の色が少し異なっている。父親の自画像にそっくりで、同じように真面目くさって冗談も通じなさそうな奴である。
「私に気を使わなくとも構いませんよ。私は貴方の生まれで身の振り様を考えるつもりはありませんしね。ですが、私の口添えが必要ならばいつでも仰ってください」蔑んで見られていることが痛いほど良く解った。完全に敵対意識しか持ちようがない。何が御友人にだ。本当はシャンパンでも放り投げて、殴りたい気分だが、九具楽が闇主の足を軽く踏みつけている。闇主は笑顔を張り付けたまま、「これからも貴方様のご健闘を願います」等と挨拶を述べて、早々に去ろうと踵を返す。そんな闇主に乱華は驚くことに追いかける。「私は若輩者ですが、できれば御友人になって下さいませんか?」と彼なりに先程の言葉とは異なり、少々子供らしさを残っている。目を見張る闇主に乱華も少し嬉しそうな表情を向けるので、敵対するわけでは無く、幼さゆえに言葉の深い意味に理解していないことに気が付いた。「意図せずに怒らせてしまって、なかなか友人ができないのです。初めて顔を合わせたのに可笑しいかもしれませんが、今後も宜しくお願いします」面倒事を嫌う闇主だが、寂しさはよく理解していた。軽く手を握って別れた。
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