ベンチャー魂 初めに
世界にホンダが知られるまで 本田宗一郎のベンチャー魂
「世界にホンダが知られるまで」という単行本は、昭和四十七年(一九七二年)に私の父が起業した出版社より発行された第一号の書籍であった。ある日、自宅のパソコンで何気なくその本のタイトルを入れたら、通信販売で手に入れられることが分かり、早速、購入の手続きをとった。
今は亡き父は、経済雑誌ダイヤモンド社で経済記者を二十年にわたり勤めあげ、この本の発行される二年前に退職して起業した。この本は数万部販売することができ、スタートしてはまずまずの成果であったように思う。記者時代に本田技研工業に直接取材を行い、経営者との交流を基にして書き上げられたこの本は、学生であった私が読んでもなかなか面白かった。
その後、数冊の書籍を発行するのではあるが、それらは、過去に発行された本の情報をまとめあげただけで、現地取材・経営者取材がほとんどなく、読者を惹きつける魅力に乏しいもので、事務所は返本の山で埋まることになる。
起業家たちのほとんどは、ソニーやホンダの成功を夢見て事業を興すが、数年経つと消えてしまう会社が圧倒的に多いのである。父の出版社も、起業後七年程度で借金を残し倒産してしまった。家内工業的な出版社を学生であった私は手伝っていたが、場当たり的な出版を繰り返す父に疑問を抱き始め、対立していくことになる。
私は、大学卒業後、三十二年間のサラリーマン生活を終えて、三十八年前に発行されたその本を手にいれることになり、再び読んでみた。ホンダの物語は今でも興味をそそられる魅力あるストーリーで面白い。そこで、父が著したこの本を、現代風にアレンジし、できれば当時の経済・社会情勢などを書きくわえ、これから事業を始めようとする現代の起業家たちの応援ができたら幸いに思う。
現代日本社会は、新規起業家たち、いわゆるベンチャー企業に資金が流れる仕組みが乏しく、それが経済低迷の一因でもあり、日本経済活性化のために、ソニーやホンダのような世界で活躍するベンチャー企業が現れてくることを切に願っている。
平成二十二年十二月二十七日
青山 太郎
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