umasica :桜里さんのマイページ

老眼と自己決定 (番外編)  輸血と人工呼吸器、そしてイラクのヘルメット

2009/08/01 23:38

(以下、某ML用の投稿の再録)




どうも、調べてみると、
「輸血」という医療技術が本格的に用いられるようになる時期が、
第二次世界大戦と重なるようです。


「輸血」による治療の試みは20世紀以前に遡るようですが、
「血液型」が発見されるのが1900年。
そして血液の「抗凝固剤」が発明されたのが1914年。


それぞれの発見と技術なしには、
「輸血」が医療技術として確立・普及することはなかったわけです。


そして最初の「血液銀行」設立が1937年(盧溝橋の年です)。


第二次世界大戦前夜に、技術的な基盤が確立し、
第二次世界大戦では、輸血技術が多くの負傷兵の命を救ったわけです。

 (→ http://www.wanonaka.jp/sub10.htm


平和であっても輸血技術は普及したことでしょうが、
戦争が大きく後押しをしたこともまた<事実>ということになりそうです。


もう一つの医療技術である「人工呼吸器」は、
その本格的使用が朝鮮戦争の時期と重なるようですね。
 ↓ ↓


先にも述べたように、脳死は人工呼吸器なしには発生しない。そして、人工呼吸器が発達したのは、 1950年代に入ってから、朝鮮戦争を契機としてなのである。50年代後半に、朝鮮戦争で急激に発達した 人工呼吸器が一般の医療現場にも積極的に導入されるようになったとき、人工呼吸器を使用している重篤な患者の中に、たしかに心臓は動いているが、どう見ても生きている徴候が全く見られない患者が観察されるようになった。そういった症状に対して、'coma depasse'(行きすぎた昏睡、超過昏睡)とか、卑俗には『力強く脈打つ死体』といった表現が用いられるようになった。
 立花隆 『脳死』(中公文庫 1988)


 ↑ ↑
ということなので、「人工呼吸器」に関しても、
その技術的発展の後ろには戦争があったということになります。




もともと「脳死」の問題に関心があったものですから、
人工呼吸器という20世紀の「高度」と言ってよい医療技術、
その後のより高度の医療技術の基礎となったものとしての「人工呼吸器」は、
私には、しばらく前から気になる存在でした。


「脳死状態」を生み出すのは、実は、その「高度医療技術」だからです。




その上で、今回の「エホバの証人」をめぐるやり取りがあり、
彼らが異端視される要因となる「輸血拒否」の問題を考えていたわけです。


確かに、輸血拒否というのは異様な感じを受ける行為です。
しかし、一方で「輸血」という医療を考えれば、
今でこそ普及はしていますが、上記のように、
基本的に20世紀になっての「高度医療」に属するものなのです。
そしてそれが、「人工呼吸器」同様に、
より高度の医療の基底をなしているわけです。


逆に言えば、いわゆる第3世界には、
まだまだその恩恵に与ることの出来ぬ人々の存在するタイプの医療、
ということになりますね。
つまり、現在でも地球レベルでは、
必ずしも普遍性ある医療技術ではないということになります。
 (アフガンやイラクの病院の状態を想像しましょう)


「輸血拒否」は、そのような意味で、
インフォームドコンセントの延長としての、
患者による医療内容の選択という領域の問題と考えることが出来るわけです。
医療内容の選択、つまり患者の自己決定権の行使ということです。

これは、高度医療継続の拒否であり、
いわゆる「尊厳死」の問題につながるものとして、
その一見しての異様な印象とは別に理解しておく必要を感じます。

ここで問題があるとすれば、成人なら確かに自己決定ですが、
未成年者の場合の取り扱いですね。
自分の子供への輸血拒否は許容されるのかどうか?ということです。
親が子供への輸血拒否をすることの当否、という問題です。


ここで、「脳死」の問題が大きくリンクしてくるわけです。
先般の臓器移植法の「改正」により、
子供からの臓器移植が親の同意により合法化されました。
つまり、子供による自己決定権を尊重しないということです。
現実には、これまでは、自己決定能力の未完成を理由に、
子供からの臓器提供は禁じられていました。
「改正」により、子供の自己決定能力の有無は問われることがなくなり、
親の同意のみで、子供からの脳死臓器提供が可能となったわけです。

…ということは、論理的には、
「エホバの証人」による自分の子供への輸血拒否は尊重されねばならない、
ということになってしまうわけです。


まぁ、私自身には、
成年者本人はともかく、
親の意思による子供への輸血拒否を支持することは出来ませんし、
今回の臓器移植法「改正」も支持出来ませんけれど…


…とちょっと脇道に逸れてはおりますが、
「エホバの証人」をめぐるやり取りが生み出した、
不毛ではない考察として一読いただければ幸いです。




そう言えば、
イラク戦争では、ヘルメットの改良により、防護能力が高まった結果、
逆に、これまでに見られなかったタイプの脳損傷に見舞われた兵士が、
多く見られるということです。
そして、その対処・治療法の確立が問題になり始めているわけです。


これもまた、戦争と医療の関係の一断面ということになりそうです。







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Binder: 現代史のトラウマ(日記数:645/全体に公開)
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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2009/08/01 23:50
    某MLの困ったチャン相手の不毛な議論が生んだ、
          個人的には、「なるほどこうなるか!」なお話。

  • Comment : 2
    たぬき男いたち男
     2009/08/02 16:13
    たまの日曜と云うのに、誰〜レにも相手にされない哀れな「ウマシカ」

    何とも可哀相になぁ。確か「商売繁盛」してるんじゃなかったのかい。

    自信タップリなセリフと裏腹に「ウマシカ」御殿は、寂しい閑古鳥だ。

    「私」は「私」で大事な「PS−3」が壊れてしまい、修理が終る迄

    「TVゲーム」が御預けになってしまったヨ。御互い、苦しいのぉ…。

    50代とは、その様に何かと問題を抱えた中途半端な存在なんだよな。

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