★記録行為/林裕己 第四回目は、橡川キョウさんです。
おしらせ
林裕己展
2009年10月2日(金)から11日(日)までの、各金土日開催
10月2日(金) 、3日(土)、 4日(日)、9日(金) 、10日(土)、 11日(日)
13:00〜21:00(金、土)、13:00〜19:00(日)
最終日の10月11日(日)18:00から友人アーティストによるパフォーマンス
最終日はパフォーマンス終了まで時間延長
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名古屋市中区大須二丁目13番17号/地下鉄鶴舞線「大須観音駅」1番出口より徒歩3分
以下は、ぱふぉ新聞からの読み込み版です。
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林裕己 Hiromi Hayashi (文章と写真)
「独特でありながら、エネルギーに満ちた動きを見て、この人は本当に体が不自由なのだろうかと一瞬疑った。舞踏と一言では片付けられないものがある。これは、何ものでもない何かだ。」
第四回目は、橡川キョウさんです。
たしか4、5年程前のクラブBLでのパフォーマンスイベントであったか。コートを着て眼鏡をかけた一観客のような女性がステッキを片手に静かに立ち上がった。片足を引き摺り、ステッキで体を支えながら、その女性はステージへと向かった。「私はしばらく体調を崩し、踊りの活動を停止していたのですが、最近になって再開することができました。そのことは、私の踊りに大きな変化と気づきもたらしているように思います」。と語った後、片手にステッキを握ったまますっと踊りに入っていった。独特でありながら、エネルギーに満ちた動きを見て、この人は本当に体が不自由なのだろうかと一瞬疑った。舞踏と一言では片付けられないものがある。これは、何ものでもない何かだ。
橡川さんが舞踏の道に進むきっかけは、たまたま見た「天然肉体詩人」と呼ばれる藤條虫丸氏の公演に感銘を受けたことに始まる。すぐに「劇団フリークス」を結成。いわゆる劇団というよりは野外での公演を中心とした即興のパフォーマンス集団に近いものであったという。同時に始めたソロでの舞踏活動も独学によるものであった。
橡川さんは語る。「西洋のダンスは構築された世界であって、目標とする美に向かって練習するものですが、私達の即興はいきなり個に向かい合うことから始まるのです。土方巽に『既知との遭遇』という言葉があります。個性というのは、自分はこうありたいという願望も多いのですが、持っているものを捨てる、虚飾をどんどん取り払って残ったものの中にこそあるのかもしれません。そうすれば自ずと内面へと向かわざるを得ない。自分の滑稽な部分、醜さをも美と受け止めていく。外でなく我が身の内に、既に在るものを知る事。そこに確かな美があります。誰の真似でもない立ち姿、動きこそが我々の目指すものの基本であり、各人各様の踊りなのだと思います。」
とはいえ、本当の自分を見つめることはたやすい事ではない。
橡川さんはもともと病弱な体であった。足には生まれつきの関節障害。それは歳を重ねる毎に悪化していった。同時に腸の病気も悪化。舞踏活動のいよいよこれからというときに活動の休止を余儀なくされる。その間、筋肉までが落ちてしまい、5分も歩くことができなくなる。もう、踊るのは無理だ。そう諦めかけた時に見た大野一雄の舞踏公演が彼女を復活へと導く。90歳を過ぎ、多くの不自由を抱えるその身体が、強い生命力に溢れしなやかに舞い踊る姿を見て彼女は気づいた。肉体を酷使するのではなく、柔らかく無理のない動き。そこから発するエネルギー。舞踏とはエネルギーそのもののダンスである。それは日本古来の伝統芸能の動きや古武術にも通じる。橡川さんは体に負担をかけぬよう、力を入れずに動く方法を見つける。心が緊張すれば、体に無理な力がかかる。無心になることによって本来備わっているものを自然に出せることにも気づく。
橡川さんに与えられた肉体の障害が、いつしか橡川さんでしかない踊りを生み出していた。
軽やかで笑顔のたえない彼女の一連の話を聞いた後、私は自分の欠点やコンプレックスをもう一度振り返ってみた。なんだかそれらが私の才能のように思えた。私は私に与えられたものを大切にしよう。
人より小さなこの肉体をいただいたことに、少しだけ感謝ができるようになった。

橡川キョウ Kyo Tochikawa /撮影年不詳、クラブBL(名古屋東山)にて
撮影:林裕己 Hiromi Hayashi

橡川キョウ Kyo Tochikawa /2006年3月、『ことバズーカ4』(涅槃/名古屋今池)にて
撮影:林裕己 Hiromi Hayashi

橡川キョウ Kyo Tochikawa /2006年3月、『ことバズーカ4』(涅槃/名古屋今池)にて
撮影:林裕己 Hiromi Hayashi

橡川キョウ Kyo Tochikawa /2008年4月、叫舞害童『赤と黒の部屋』(DAY TRIP/名古屋鶴舞)にて
撮影:林裕己 Hiromi Hayashi

橡川キョウ Kyo Tochikawa /2008年6月、名古屋市北文化小劇場(名古屋北区)にて
撮影:林裕己 Hiromi Hayashi

橡川キョウ Kyo Tochikawa /2008年9月、七ツ寺共同スタジオ(名古屋大須)にて
撮影:林裕己 Hiromi Hayashi
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