無差別爆撃の論理 1

「無差別爆撃」という問題には、当然のことながら、様々な切り口が存在するだろう。



昨日書きかけたところから、スタートしよう。


まぁ、戦争における「無差別爆撃」という手法は、20世紀以前にはあり得なかったものだ。

航空機の存在なしに、前線のはるか後方の都市の民間人を、爆撃の対象とすることなど不可能なのだ。「爆撃の対象」と書いてしまったが、「爆撃」という語自体が、それまでに存在し得なかったわけである。「砲撃」は出来ても、「爆撃」という攻撃法自体が、航空機の存在に(つまり発明に)依存しているのである。


…と、昨日は書いていたわけだが、英語だと「爆撃」も「砲撃」も「bomb」ということになるようだ。日本限定の話題ではないので、用語の問題にも留意しておく必要がありそうである。




いずれにしても、空からの攻撃というのは、20世紀(そして21世紀へと継続する)特有の戦争の局面である。

陸上における戦争とは、陸軍同士の決戦により、勝敗が決まるものであったし、海上における戦争は、艦隊同士の決戦により、その勝敗が決まるものであった。

航空機の登場は、戦争のあり方を変化させる。


強大な陸軍も、空からの攻撃には弱点をさらさざるを得ないし、巨大戦艦も航空機による攻撃で沈められてしまう。

それが20世紀の出来事であった。

しかし、それはまだ、前線における出来事であった。


航空機の登場は、前線に展開する陸軍を飛び越え、直接、銃後の市民への攻撃を可能にしたのである。





第一次世界大戦において、人類は、「総力戦」としての、新たな段階の戦争を経験することになった。戦争が、前線で対峙する軍隊同士の力で決まるものではなくなり、国家が動員可能な生産力の総量が、戦争の帰趨を決定する時代へと変化してしまったのである。

兵器の近代化は、兵士への殺傷能力を高め、前線における犠牲者数を飛躍的に増大させた。しかも、第一次世界大戦は、長期にわたる塹壕戦という形態に陥り、「決戦」による決着という戦争イメージを変容させたのである。


ただし、第一次世界大戦段階における航空機は、まだ誕生から間もなく、その大型化及び航続距離において未発達なものであった。

結果として、各国が大型爆撃機を保有するという状況は訪れることはなく、銃後の市民が恒常的に、爆撃の犠牲となるような事態が生じることはなかった。

とはいえ、ドイツのツェッペリン(飛行船)によるロンドン空襲は、戦争の新しい時代を示すものではあった。




戦争における「都市無差別爆撃」というアイディアは、しかし、そのような第一次世界大戦の経験が生み出したものである。

航空機の大型化と航続距離の増大という条件が一方にあり、他方には、陸軍兵力の多大な犠牲という第一次世界大戦の経験が存在した。

しかも、それは、戦争がもはや前線の軍隊の問題ではないという、「総力戦」と化した歴史の局面での話なのである。


前線の軍隊への攻撃ではなく、直接に総力戦を支える銃後を攻撃の対象とする。つまり、民間人への直接攻撃というアイディアなのである。

戦場の兵士とは異なる民間人への攻撃というアイディアのポイントは、市民への直接攻撃により、銃後の国民の戦意喪失が期待され、戦争の継続という選択肢が支持を失うであろうという予測にあった。

第一次世界大戦で経験されたような、前線兵士の膨大な犠牲に比べ、より少ない民間人の犠牲が国民の間に厭戦気分を生み出し、早期の戦争終結に結びつくだろうという期待である。


それが非武装の市民への攻撃を正当化する論理であった、ということのようである。





もちろん、現実の世界は理論通りには動かないのであるが…







Tags: 無差別爆撃  /  爆撃 | 戦争 | 前線 | 航空機 | 攻撃 | 銃後 | 陸軍 | 無差別 | 力戦 | 犠牲
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