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死霊と帝国陸軍と小泉改革とマルクスと老人性痴呆の関係…?

2009/09/01 20:38

 

 埴谷雄高  負けず劣らずじゃないでしょう。僕はずっと君より前なんだから。三十年も前からですから、深さというものは三十年分僕の方が深いわけですよ。だから、君がいくら言っても僕の方が老人性痴呆は深い、大丈夫。

 北杜夫  それは普通の年齢から言えば、人は当然そう思うだろうけど、埴谷さんの脳細胞は僕の百倍多いですから、僕ら老人ボケしても、脳細胞が…

 埴谷  あなた、医者らしくないこと言うね。脳細胞が百倍の多いなんていったら超人ですよ。そんなものはあり得ないよ。

 北  埴谷さんは、だから、ニーチェの超人(イーバーメンシュ)だと言っているんですよ。異論がありますか。

 埴谷  それはニーチェが言っただけで実在しません。

 北  ニーチェは梅毒になったから、超人だなんて言い出したんですね。

 埴谷  まあね。梅毒になれば、何にでもなれますよ。そりゃ神様にでも何にでもね。

 北  つまり梅毒というんじゃなくて、梅毒からくる進行麻痺という精神病者になりましたからね。だからニーチェは「我はいかにしてかくも良著を書くか」なんてことを書いているでしょう、自分で。あれは進行麻痺の誇大妄想です。文章はいいですね。幾ら気が違っても。

 埴谷  気が違うような人は、ヘルダーリンという人もそうですけど、みないいですよ。だから気が違う場合はやはり脳細胞が初めは少し多いのかもしれない。少しは多くて、そういう人が発狂するということはあり得るね。だけれど、老人性痴呆になるのは脳細胞が多いとは言えなくて少ないんじゃないでしょうか。

 北  いや、今、老人性痴呆の問題は大問題になっているんですよ。

 埴谷  そうですね、老人問題、今、大問題だけど。

 北  寿命が長引いたから、必然的に一番大事な問題になっていますね。

 埴谷  僕だって、もうことしの12月で七十七歳ですよ。あなた、七十七歳まで生きると思わなかったのに生きちゃった。これではもうボケるのは当たり前ですよ。

 北  七十七っていうのはラッキーナンバーじゃないですか。百七歳まで生きてください、ぜひ。

 埴谷  (笑)いや、百七歳は、これはもう…

 北  大ボケになって、もっと大妄想を起して、無限大の無限大の無限大の最無限大になられますからね。


…と『死霊』の作家と、マンボウ先生の滅裂な対談は続くのだった。

 

埴谷雄高 北杜夫 『難解人間 vs 躁鬱人間』 (中公文庫 2009 ただし原著刊行は1990)の話。

 

 

今日は仕事が休みで、家族と駅まで出たついでに購入してしまった。

 

他に、


黒野耐 『帝国陸軍の〈改革と抵抗〉』 (講談社現代新書 2006)

加藤聖文 『「大日本帝國」崩壊 東アジアの1945年』 (中公新書 2009)

Pen 8/15号 (阪急コミュニケーションズ No.250 2009)


も購入。

 

こちらは、「現代史のトラウマ」系購入本。

 

『帝国陸軍の〈改革と抵抗〉』の著者は、「はじめに」の文中で、平成の「小泉改革」に言及している。


 だが小泉改革には、法案を通すため抵抗勢力に妥協して改革の質を低下させたきらいがあること、市場の競争原理を重視するあまり社会的格差を拡大しつつあるという問題点もある。こうした改革にともなう副作用よりも問題なのは、改革完成時の日本の全体像が国民にわかりやすく示されていないこと、そこに至る道筋や政策体系がいまだに定まっていないことである。

 小泉改革はその突破口を開くまでに政権発足から約四年もの歳月を費やし、その任期は本書執筆中の現在、残りわずかでしかない。したがって、日本の将来は後継政権が小泉改革の歪みを是正し、改革完成後の日本の姿とそれに至る全体的な道筋を国民にわかりやすく示し、改革をひきつづき強力に推進できるかどうかにかかっている。


…という記述は、2006年の「本書執筆」時点以後の政治の展開とその帰結を知ってしまった2009年の私達には、一層味わい深いものとして読まれることになるわけだ。

 

雑誌「Pen」の出版元が、阪急コミュニケーションズだということは、実は、これを書くまで知らずにいた。

本号の特集は「神秘の海へ」なのだが、それ目当てではない。小特集が「中国の反体制アーティスト アイ・ウェイ・ウェイ」となっていて、こちの方が気になっていたのだが、これも直接のお目当てではない。

書評の文章が、(図書館で)読んで面白かったので手元に、なんて思ってしまったのだ。好きな雑誌なのだが、自宅内収納スペースの関係で、最近はほとんど買うこともなくなっていたのに。

ライター(という肩書きの)、今泉愛子さんが取り上げているのは、なんと、


 不破哲三 『マルクスは生きている』 (平凡社新書)


なのであった。

あの日本共産党の、あの不破哲三氏の著書なのだ。今泉さんによれば、不破氏がその著作で書いているのは、


 マルクスはなぜ誤解されやすいのか。60年以上にわたって研究し続けてきた著者は、マルクスを、どんな研究についても自分の到達点に安住しない人だった、と記す。それなのに、マルクスの理論の一部を知っただけで、自らを「マルクス主義者」とする学者の何と多いこと。マルクス自身も「それがマルクス主義であるならば、私はマルクス主義者ではない」と口にするほどだったらしい。マルクスの思想は、常に発展した。そんな思想家としての偉大さも見えてくる。

 さらに興味深いのは、日本共産党の書記局長、委員長、議長を歴任した著者が、ソ連とはいかなる存在であったかについて言及する部分。農民を集団で管理するやり方は、社会主義とは言えないとし、政府の体質化した覇権主義を徹底的に非難する。


というようなことであるらしい。

マルクスの著作が経典化し、その解釈を党が独占するのが、かつて存在した共産主義国家の常態であった。そのような行為はマルクスの思想とは関係ないよ、と不破哲三氏は言っているということらしい。

 

 

2009年の9月のはじめにふさわしい読書かも知れない。

…なんて書いているが、不破氏の著書の購入はしていない私なのであった。

 

 

 

 

 

 

 



Binder: いぢわる、あるいは神の姿(日記数:2143/全体に公開)
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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2009/09/01 23:15
    …と、まぁ、本を買いました日記。

  • Comment : 2
    たぬき男いたち男
     2009/09/02 00:01
    「埴谷雄高」サンの話をここで持ち出す事には、大して意味が無いナ。

    あの「ボケ老人」はまさに「嘘」と「ハッタリ」で生きていたからネ。

    「私」は嫌いだ。「彼」は「私」にとても良く似ているからだろうか。

    同病、相憐れむ…式な所があるんだナ。「自画自賛」の態度には失望。

    もう少し「謙虚」であって欲しい。歳相応な落ち着きがあるべきだが、

    「彼」の場合「ナルシスト」となってしまい「自己顕示」が強過ぎた。

  • Comment : 3
    umasica :桜里
     2009/09/02 00:05
    >もう少し「謙虚」であって欲しい。歳相応な落ち着きがあるべきだが…
     (たぬき男いたち男 2009/09/02 00:01)


    実に味わい深いお言葉だ。

  • Comment : 4
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2009/09/02 00:50
    歳相応な落ち着き!

    わわわわっ

  • Comment : 5
    umasica :桜里
     2009/09/02 00:58
    ところで…

    >「私」は嫌いだ。「彼」は「私」にとても良く似ているからだろうか。
    >同病、相憐れむ…式な所があるんだナ。「自画自賛」の態度には失望。
     (たぬき男いたち男 2009/09/02 00:01)


    …って書いてあるけど、

     だから、君がいくら言っても僕の方が老人性痴呆は深い、大丈夫。

    …って埴谷雄高が言うのが「自画自賛」なの?

  • Comment : 6
    umasica :桜里
     2009/09/02 21:33
    >「彼」の放言には、いい加減「アイソ」が尽きる所があるんだがネェ。
    >「彼」の立ち振る舞いのイヤラシサには、とても我慢ならない訳だヨ。
    >「同病相哀れむ」って云うだろ。そんな感じ。解るかナァ、解ンネェ…
     (たぬき男いたち男 2009/09/02 19:28)


    埴谷雄高について、

    >「自画自賛」の態度には失望。

    って書いてあるけど、対談の引用部分には、
    別に「自画自賛」と呼び得るものはないんじゃないか?
    …ていうのが、「Comment 5」の内容。

    >「雄高ジイサン」と手を組んで「私」を責め…

    ているわけじゃぁないよ。


    引用した対談では、躁状態絶頂の北杜夫の方が、
    まるで、たぬき男いたち男のように、
    次々と文脈を無視して、メチャクチャを言い続けるので、
    さすがの埴谷大先生も、
    そのフォローに追いまくられている感じが実におかしい、
    というのがオレの感想。

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