ロストテクノロジーについて
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ロストテクノロジーとは、何らかの理由により
現代では失われてしまった
技術のこと。似た言葉に
オーバーテクノロジーが挙げられ、こちらは時代錯誤の遺品(
オーパーツ)として紹介されている。
本項では主に、過去に開発されながら後世に伝えられず絶えた技術体系のみに主眼を据えて述べる。
概説
ロストテクノロジーは端的に言えば、失われた技術体系であるが、更にはそれに拠って製造された物品から、製造方法が理解できない場合などにも適用される。それら製品の性質が、一概に再現不可能な状態にあるものや、或いは伝えられている製法では再現できないもの、または製法に何等かの要素が足りないのか似て非なるものしか製造できない場合など様々である。
特に過去の
名工の作による「業物(わざもの・→
刀剣の業物一覧)」と呼ばれる
工芸品の中にはその名工個人の
経験によって生み出されたものも少なくなく、これが再現不可能な理由となっているケースも見られる。
サイエンス・フィクション(SF)などではオーバーテクノロジーと共に、しばしば「理解できない(
ブラックボックスの)物品なので、細部の機構的な説明ができない」として、現実世界の物理法則や既存技術を無視する事が出来るために格好の題材として扱われ、「原理のみが大まかに語られる」という扱われ方をしている。
また、
ファンタジーや歴史劇的な
世界観にSF的な要素を持ち込む手段としてこのロストテクノロジーが登場することもあるが、こちらはいわゆる
超古代文明などの延長的なものに過ぎず、
オーパーツなどとの概念上の交雑が見られる(作中の世界観からすれば定義どおりではあるが、現実の「ロストテクノロジー」とは隔たりが大きい)。
発生の要因
ロストテクノロジーが発生する要因は様々であるが、主に以下のことが原因であると考えられている。
後継者が途絶え、技術が失われる
職人の技巧が秘儀的な扱いになるなどした結果、後継者となる世代に広く十分に技術が伝承される事が無くなった、希代の名人芸であったがゆえに、後継者となるだけの技量を持つ者が現れなかった、など。
環境の変化により、技術が育まれる基盤が消失する
技術を伝えていた集団の属する
文明が衰退したり、社会基盤を喪失したり、あるいは特定の原料が産出される地域から原料が得られなくなるなど。またかつて権力者がその権力と財力で保護していた産業が、後ろ盾と成っていた権力を失って衰退するケースも挙げられる。これについては、大規模な
天変地異や気候の変化による文化の変質、異文化による
侵略と
略奪なども要因となる。
別のテクノロジーの発展により、衰退する
新しい技術が単純により優れていたり、または「品質面ではやや劣るが、コストや時間的に効率よく大量に製造できる」という場合には、旧来技術は失われやすい。これは旧来技術では製造にコストや時間が掛かりすぎる場合、それに見合わない質の高い製品を作るより、新技術でやや質の低い製品を短時間で大量に提供できた方が、社会全体にとって有益であるためである。
この他には、伝えられている物品の話が、単なるフィクション(空想の産物)である場合もある。このようなものでは、実際には存在しなかったものを製造するという点で、オーバーテクノロジーの範疇である。当時その性能が余りにも驚異的であったために、情報が伝わる過程で、誇張されて伝えられているも場合もある。
オーパーツにまつわる問題でもしばしば指摘される所であるが、ある偶然の産物や、現代では想像の付かないとてつもないコストと時間をかけて作られた物品に対し、これの信奉者たちが
トンデモな解説をつけて吹聴しているケースが時折見られる。この場合では、上に挙げた通り(それら信奉者の空想によって)誇張されて解釈されている事も多い。このようなケースは、ロストテクノロジーとは別の話である。
超古代文明などの項を参照されたし。
技術がロストテクノロジーとなるのを防ぐため、採算や需要を度外視し、細々と生産を続けることがある(
ロータリーエンジン、
原子力空母など)。
ロストテクノロジーの例
正宗など
日本刀の製法
技巧が後継者に継承されなかった。また
第二次世界大戦以降に刀鍛冶が工芸品・美術品以外では社会に必要とされなくなったなど(後述)。
ダマスカス鋼の金属混合比
アメリカで現存するものを分析し、組成の再現に成功したとされる。逆に「
オーパーツ」扱いする
神秘主義者は伝説上のダマスカス鋼を想像し、再現されていないと主張するケースもある。
青銅器による頭部手術
頭部穿孔を参照。これも
オーパーツ扱いされ、考古学からも逸脱した様々な憶測が飛び交う。
ヴァイオリン「
ストラディバリウス」の製法
アントニオ・ストラディバリが製法を秘匿したうえにイタリアの楽器製造産業が途絶して不明となった。ただし後世の科学分析などにより幾つかの製法上の秘密が判明したと見る説もあり、その一方ではこれに匹敵する楽器製作技術の再現に対する製作者らの挑戦は続いている。しかし、ストラディバリの音色が素晴らしいのは単に「もともとの製作精度が高いこと」、「丁寧に扱われ、修理も高度な技術を持って施されてきたこと」、「経年変化による木材の音響特性の変化」の要素があったからに過ぎないという見方もあり、現在はこちらの説の方が有力である。現にこれら三つの要素を満たした古いバイオリン(チェロなども含む)は素晴らしい音色を保有している。
和算
江戸時代に爛熟期を迎えたが、その後
明治時代に西洋数学が学問の基礎として利用されるようになり、研究者らが途絶してしまい、その後は発展していない。
始皇帝の
兵馬俑
権力を誇示する意味でも技巧と財力が投入された。同規模での再現はその量・技巧共に困難である。後の権力者によって迫害対象ともなったため忘れ去られ、同地域では後世になると地中に存在する得体の知れない焼き物人形とみなされた。
北宋の
汝窯の
青磁
高麗青磁
高麗滅亡後、職人の多くが海外に流出、あるいは白磁の製造に切り替えるなどしたため技術が失われた。現存数は非常に少なく、高値で取引される。
古代ローマの
水道橋
後にローマが衰退、中世ヨーロッパでは技術的にも文化的にも正しく伝承されなかったため、人類の技術では不可能とされ、「
悪魔の橋」と呼ばれたものもある。ただし、
コンスタンティノープルにある
ヴァレンス水道橋は
東ローマ帝国、
オスマン帝国の下でも補修され、
19世紀頃まで現役で使用されていた。
東ローマ帝国の
ギリシアの火
国家機密とされていたために、帝国の滅亡とともに製造方法が失われた。
戦艦の主砲
製造には巨大な専用施設とその運用を行う経験を備えた専門の技術者を必要とし、40cmなどの大口径主砲は製造施設も技術者も断絶している。なお、厚さ300mmを超える装甲についても同様に現在の技術・設備では製造・再現できないとされ、設計文書に残された以外のノウハウが失われている(→
大艦巨砲主義)。21世紀初頭の現在、対艦船戦闘の主流は
ミサイル巡洋艦による
対艦ミサイルに移行しており、艦載砲も重装甲の戦艦に対する
砲弾一発辺りの打撃力よりも、対小型艦艇・対空攻撃用に連射性能や初速・射程が重視され、口径も小型化されている(→
レールガン#兵器としての実用化)。
ラスター彩の
イスラム陶器
バビロンの空中庭園
日本のロストテクノロジー
日本では
戦国時代の国の統廃合、敗戦時の
GHQによる
武道禁止令、「
文明開化」の名の元に
西洋文化の流入(
西欧化政策)などにより、金属精錬法、服飾法、武道、機巧技術などの分野においてかなりの技術が失伝しており、その再現を目指す動きが始まっている。
ロストテクノロジーではなくなった技術
アブラアン・ルイ・ブレゲの
同調時計
長い間、仕組みが判らず修復不可能であったが、
1993年に判明。
関連項目
ロストテクノロジーについて