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元素(げんそ)とは
化学物質を構成する基礎的な
成分(要素)である。
元素と原子の違い
原子は構造的な概念であるのに対して、元素は特性の違いを示す概念である。
例として
酸素と
窒素を用いて説明すると、
酸素と
窒素とはいずれも
原子核と
電子とが形成する構造である
原子から成り立っている。一方、等しく原子核と電子とから構成されるもののその性質は異なることから酸素と窒素とは異なる元素として識別される。
元素は原子の種類を表すがそれは原子核の違い、すなわち
核種の違いのうち
陽子の数の違いによる分類である。原子核を構成する陽子および
中性子の総数により
質量数が異なり、陽子の数により
原子番号が異なる。したがって、原子番号が1の
軽水素原子、
重水素原子、
三重水素原子はいずれも同じ元素である
水素に属するが質量数が異なる
同位体と呼ばれるグループを形成する。
分かりやすく言うと、元素は
周期表の枠である。各枠には
原子番号に対応する元素が一つずつあてはめられていて、安定な同位体の存在確率に基づく原子量が記載されている。安定な核種がない場合には代表的な核種の質量数が記載されている。すなわち、
周期表は『元素の周期表』であって、決して原子の周期表や単体の周期表ではない。
歴史
元素の歴史は万物の性質の根源を探究する歴史であり、古代の哲学者らは様々な物性が少数の基本的性質の混合により多様性を発現していると考察した。
デモクリトスの説を別にすれば、原子や分子など物質の構造に関する探究はそれらよりも遅れて近世以降に発生・発展してきた。
古代ギリシア
元素という言葉は後年に作られた為、ギリシア時代には存在しないが、ギリシャ哲学では万物の変化・流転は一大命題として扱われ、多くの哲学者により万物の構成要素として元素の概念が論ぜられた。
タレスは万物の根源に
アルケーという呼名を与え
水であるとした。その他、
空気であると考えた人、
火であると考えた人、
土だと考えた人がおり、それぞれがアルケーであるという立場を採った。
エンペドクレスはアルケーが、火・空気(
風とも)・水・土の4つの
リゾーマタからなるとする後世にいう
四元素説を唱えた。
プラトンはこれに
階層的な概念を導入し、土が
正六面体でもっとも重く、他のリゾーマタは
三角形からなる
正多面体で、火が最も軽いリゾーマタであり、これら
四大元素はそれぞれの重さに応じて運動し互いに入り混じると考えた。なおプラトンの作かどうか疑問視されている著書では、4つのリゾーマタに加え、天の上層を構成するとして
アイテールが導入されている。
紀元前350年ごろ、
アリストテレスは四元素説を継承した上で、4つのリゾーマタは相互に変換できるものと考え、また天上にのみ存在するアイテールを4つのリゾーマタの上位リゾーマタとして立てた。
アイテルを語源とするアイテールは、のちの自然学における第五元素(
ラテン語のquinta essentia。なお英語の quintessence (「真髄」 の意)の語源でもある)とされ、宇宙を満たす媒質
エーテルの構想へとつながっていく。アリストテレスと同時代の
デモクリトスは、無から発生し、再び消滅する究極微粒子(
アトム)から万物が構築され、その構造的変化が物性の変化となると論じたが、彼の
アトム論は発展を見ることは無く、ヨーロッパにおいては四元素説が
スコラ哲学へと継承されてゆくことになる
[『世界大百科事典』、CD-ROM版、平凡社]。
古代インド
古代インドの
哲学者・思想家
アジタ・ケーサカムバリン(
パーリ語読みの人名。仏典の中に仏教より劣る思想家・哲学者として紹介されているものとしてしか名前が残ってないので正確な言い方・発音は不明)は「『存在』を構成するものは、地・水・火・風の四大であり、この四大以外にはない」という論を主張した。また、
パクダ・カッチャーヤナは「人間のからだは
地・水・火・風・
苦・
楽・
霊魂の7つから構成されている」、
マッカリ・ゴーサーラは「生きているものは、地・水・火・風・苦・楽・霊魂・
虚空・
得・
失・
生・
死の12の要素から構成される」と主張した。
古代中国
世の中は「
陰」と「
陽」(つまり「
闇」と「
光」)から成り立っていて(
陰陽思想)、更に「木」「火」「土」「金」「水」の5要素(
五行)に分かれていると考えた(
陰陽五行説)。
インド哲学の諸論争や
古代中国の
陰陽五行説をみてわかる通り「物質を構成する基本的な成分がある」、という考え方は「『世界』というものに対する人間の一つの哲学的・思想的・宗教的態度」でもある(
西洋科学の実験の積み重ねを否定するものではない。ようするに実験の積み重ねが不十分な時点での西洋科学の「元素」説は「事実」より「哲学」や「思想」、「世界論・宇宙論・世界観」に近いと言う事)。
密教
古代インドから伝わった仏教・密教でも万物の構成要素として、四大(「地」・「水」・「火」・「風」)、
五大(マウアラカキヤ)は四大に「
空(くう)」が加えられ、六大は五大に「
識」が加わる。
近世
元素発見の推移
現在
約118種類の元素が知られている。
表記
element(エレメント)は
ラテン語のelementumに由来しており、13世紀には「世の中の根元をなす物」といった元素とほぼ同義で用いられていた。elementumの由来は、諸説あるがはっきりとしていない。
元素を表すには
元素記号が使われる。これは原子を表すためにも使われる。例えば、
水を構成する元素は
酸素Oと水素Hである。
元素の性質は
最外殻電子(価電子)に大きく影響される為、同様な性質を持つ元素は
元素の族(元素群)は
周期表においても、族(周期表の列)や系列として纏められている。
有機化学においては、
水素と
炭素以外の元素を
ヘテロ元素(
ヘテロ原子)と呼ぶ。水素と炭素とが特別に扱われるのは、炭素は任意の長さに鎖構造を伸ばすことが出来、任意の場所で分岐や環構造を形成することも可能な性質を持つので、
有機化合物は
炭化水素を分子構造の基本骨格として扱う為である。
日本語表記
元素名の日本語表記については
学術用語集化学編に定められている。原則としてIUPAC名を「化合物名日本語表記の原則」の「化合物名の字訳標準表」の規則に従いアルファベットの綴り字を機械的にカタカナと置き換えて日本語化する(訳字)。それ故、必ずしも発音に忠実なカタカナ表記にはならない。また、学術用語集の初版制定時にすでに日本語化しているものと、すでに英語以外の言語を基に訳字された用語はそのまま固定するように定めたので、英語以外の言語を語源とする日本語表記も存在する。次に示す。
-
水素 - すでに日本語化、Hydrogen (英語、IUPAC名)
-
ホウ素 - すでに日本語化、Boron (英語、IUPAC名)
-
炭素 - すでに日本語化、Carbon (英語、IUPAC名)
-
窒素 - すでに日本語化、Nitrogen(英語、IUPAC名)
-
酸素 - すでに日本語化、Oxygen(英語、IUPAC名)
-
フッ素 - すでに日本語化、Fluorine(英語、IUPAC名)
-
ケイ素 - すでに日本語化、Sillicon(英語、IUPAC名)
-
リン - すでに日本語化、Phosphorus(英語、IUPAC名)
-
硫黄 -すでに日本語化、 Sulfur(英語、IUPAC名)
-
塩素 - すでに日本語化、Chlorine(英語、IUPAC名)
-
ナトリウム - Natrium(ドイツ語), Sodium(英語、IUPAC名)
-
カリウム - Kalium(ドイツ語), Potassium(英語、IUPAC名)
-
チタン - Titan(ドイツ語), Titanium(英語、IUPAC名)
-
クロム - Chrom(ドイツ語), Chromium(英語、IUPAC名)
-
マンガン - Mangan(ドイツ語), Manganese(英語、IUPAC名)
-
鉄 - すでに日本語化、Iron(英語、IUPAC名)
-
銅 - すでに日本語化、Copper(英語、IUPAC名)
-
亜鉛 - すでに日本語化、Zinc(英語、IUPAC名)
-
ヒ素 - すでに日本語化、Arsenic(英語、IUPAC名)
-
セレン - Selen(ドイツ語), Selenium(英語、IUPAC名)
-
臭素 - すでに日本語化、Bromine(英語、IUPAC名)
-
ニオブ - Niob(ドイツ語), Niobium(英語、IUPAC名)
-
モリブデン - Molybdän(ドイツ語)、Molybdenum(英語、IUPAC名)
-
銀 - すでに日本語化、Silver(英語、IUPAC名)
-
スズ - すでに日本語化、 Tin(英語、IUPAC名)
-
アンチモン - Antimon(ドイツ語)、Antimony(英語、IUPAC名)
-
テルル - Tellur(ドイツ語)、Tellurium(英語、IUPAC名)
-
ヨウ素 - すでに日本語化、Iodine(英語、IUPAC名)
-
ランタン - Lanthan(ドイツ語)、Lanthanum(英語、IUPAC名)
-
プラセオジム - Praseodym(ドイツ語)、Praseodymium(英語、IUPAC名)
-
ネオジム - Neodym(ドイツ語)、Neodymium(英語、IUPAC名)
-
タンタル - Tantal(ドイツ語)、Tantalum(英語、IUPAC名)
-
白金 - すでに日本語化、Platinum(英語、IUPAC名)
-
金 - すでに日本語化、Gold(英語、IUPAC名)
-
水銀 - すでに日本語化、Mercury(英語、IUPAC名)
-
鉛 - 元来日本語、Lead(英語、IUPAC名)
-
ウラン - Uran(ドイツ語), Uranium(英語、IUPAC名)
元素の分布・存在比
元素の分布には偏りがあり、その存在比は範囲によって大きく異なる。
地球での元素の分布・存在比
地球化学においては、
地殻を構成する主たる元素を主要元素(しゅようげんそ)、それ以外の元素を
微量元素と呼ぶ。古典的な研究成果として
クラーク数が広く知られているが、最近の研究ではクラーク以外の研究成果が利用される場合が多い。
比較的
比重が小さい化合物を形成する元素は
地殻あるいは
大気圏や
水圏に分布する。地球の内部では岩石成分(ケイ酸塩)を主とする
マントルと
鉄を主成分とする核とから構成されるので比重の大きい元素は地球内部に多く含まれると推定されている。
地球内部ではマントル対流が存在する為、核付近の成分の一部は対流作用により地殻付近まで輸送されるので、中心核付近に多い元素では、全体のごく一部は火山噴出物や鉱脈として地表付近にも分布することになる。
宇宙での元素の存在比
宇宙の元素の存在量とその比率は、
宇宙論により推定され、天文学的観測により裏付られている。
ビッグバンで始まった原初の宇宙で生成されたのは、ほとんど
水素と
ヘリウムだけであった。それ以外の元素のうち、鉄までの軽い元素は
恒星が輝く際の
核融合で生成され、鉄より重い元素は主に
超新星爆発の際に生成された。
元素変換
超重元素の場合には、原子核が不安定であり自己崩壊して安定な元素に変化する。また核反応、核融合などにより変換が起こることが知られている。
元素鉱物
鉱物学において、単一の元素あるいは合金からなる
鉱物のことを
元素鉱物(げんそこうぶつ、elemental mineral)という。元素名と区別するため、「自然」(native)を付けて
自然金(native gold)、
自然蒼鉛(native bismuth)などと呼ぶ。
脚注
関連項目
参考文献
外部リンク
sah:Химия элемена
stq:Element
yo:Àpil??s??
元素について