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向精神薬

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向精神薬について

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

向精神薬(こうせいしんやく、Psychoactive drug)は、広義には、中枢神経系に作用し、生物精神活動に何らかの影響を与える薬物の総称である。狭義には、麻薬及び向精神薬取締法で個別に指定された物質である。以下では広義の向精神薬について述べる。 脳内で本来はたらいている神経伝達物質リガンド、リガンドのかわりに脳内で作用する薬物をアゴニスト、リガンドのはたらきを弱める薬物をアンタゴニストという。 精神治療薬の中に副作用として幻覚や錯乱などの影響をおこすものがあり、反対に、麻薬に指定された薬物の中にも、覚醒作用や鎮痛・鎮静作用などの作用を持つために治療に用いられるものが存在する。例えば、モルヒネは強い依存性を持つが、同時に強力な鎮痛作用が存在するため、重度の患者の疼痛除去に用いられている。また、メタンフェタミンのように、日本では覚せい剤取締法で法律で規制されているが、北アメリカでは治療薬として用いられ、規制の状況が異なる薬物もある。医療目的で用いられる治療薬も法律で規制された薬物も、共に薬物乱用が問題になることがある。なお、コーヒーや茶などに含まれるカフェインは、向精神作用をもつ物質としては世界中でもっとも広く摂取されているものである。

精神治療薬

精神疾患によっては、脳の中に薬物が作用し、その症状を顕著に改善する。ストレスや遺伝などの様々な原因によって脳内の神経伝達物質の状況が変化するため、その類似の物質である薬物を摂取することによって症状が改善されるということである。反対に薬物が効きにくいといわれる疾患には拒食症高所恐怖症閉所恐怖症などがある石浦章一 『遺伝子が明かす脳と心のからくり-東京大学超人気講義録』 羊土社、2004、ISBN 978-4897068824。36、71頁。。 軽い不安は脳内物質のセロトニン、強い不安は脳内物質のGABAの不足が関連しており石浦章一 『遺伝子が明かす脳と心のからくり-東京大学超人気講義録』 羊土社、2004、ISBN 978-4897068824。81頁。、脳内物質として作用する薬物を摂取することで症状を抑える。ベンゾジアゼピン系の薬物はGABA受容体に作用することで不安や興奮を抑える。強迫性障害のような持続的な不安には、GABA受容体ではなく、セロトニン受容体に作用する抗うつ薬が有効である。

治療薬の種類

精神安定剤(トランキライザー): 大きくメジャートランキライザーとマイナートランキライザーに分けられる。 抗精神病薬(メジャートランキライザー): 主に統合失調症による幻覚妄想といった症状を抑えるために処方される。また強力な睡眠薬であるベゲタミンもここに分類される。統合失調症に有効な抗精神病薬は、ドーパミンD2受容体に作用し脳内物質のドーパミンの作用を抑える、つまりドーパミンのアンタゴニストである。 抗不安薬(マイナートランキライザー) : 不安や緊張を沈める作用があり、睡眠薬としても利用される。ベンゾジアゼピン系が多い。 抗うつ薬 : うつ病や強迫性障害、社会不安障害に処方される。主要な作用は、セロトニンが少なくなっている状態に対してセロトニンを再利用する作用をもたらすことである。第1世代・第2世代の抗うつ薬である三環系抗うつ薬、第2世代の四環系抗うつ薬、第3世代の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、第4世代のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)がある。新しいモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)であるRIMA(Reversible inhibitors of monoamine oxidase type-A)という新薬もある。 抗躁薬 : 気分が高まった躁状態を改善するための治療薬である。 中枢神経刺激薬 : メチルフェニデート(リタリン)やアンフェタミンのように、突然強い眠気を催すナルコレプシー注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療薬として処方される。メチルフェニデートやアンフェタミンは、ドーパミンの受容体に結合する。 睡眠導入剤 : 不眠症に対し、睡眠を誘導する治療薬として用いられる。 ベンゾジアゼピン系が多い。 鎮静催眠薬 : バルビタールなど、強い催眠作用のある薬物で、睡眠薬として用いられた。 抗ヒスタミン薬 以上のうち、主に抗不安薬、中枢神経刺激薬、鎮静催眠薬の一部が麻薬及び向精神薬取締法で向精神薬に指定されている。

治療薬の法的等級(日本)

日本では、医療用に指定された向精神薬は等級に分類される。 医療上の有益性と、濫用の危険を考慮し等級が決定される(等級が上ほど取扱いは慎重にすべきである)。
第一種の例 メチルフェニデート(リタリン)・モダフィニル(モディオダール) : 第二種の例 フルニトラゼパム(ロヒプノール)・ベントバルビタール(ラボナール) 第三種の例 アルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)・エスタゾラム(ユーロジン)・ゾルピデム(マイスリー)・ジアゼパム(セルシン・ホリゾン)・トリアゾラム(ハルシオン) 尚、第一〜第三種の向精神薬全ては麻薬及び向精神薬取締法に基づき、調剤・検査目的以外での製造は認められない。 同様に、輸出入も禁止されている。 例外として、個人利用目的に限り1ヶ月分の分量までは携帯して出入国が可能である(医師の処方を証明するものがあれば、それ以上の分量でも可能である)。

治療薬の乱用

メチルフェニデート(リタリン)やアンフェタミンモダフィニルといった覚醒作用のある向精神薬の乱用が報告されている。

日本で麻薬などに指定されている薬物

以下の薬物は薬物乱用として問題にされるが、同時に医療に応用されているものもある。 モルヒネ : 麻酔薬としても用いられる。 ヘロイン : モルヒネから作られる。 リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD) : 幻覚剤の一つ。心理療法に用いられる研究も行われている。 フェンサイクリジン(PCP) : 幻覚剤の一つ。 3,4-メチレンダイオキシメタンフェタミン(MDMA) : 乱用が問題になっているが精神治療に用いられる研究も行われている。 覚醒剤メタンフェタミンコカインなど) : 日本では覚せい剤取締法で規制されている。上述のように、国によっては中枢神経刺激薬として精神治療薬に用いられるものもある。 アヘン : あへん法で規制されている。

事件

脚注

関連項目

参考文献

  • 融道男 『向精神薬マニュアル第3版』(2008/09) 医学書院 ISBN 4260005995

外部リンク

麻薬及び向精神薬取締法
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