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「精神病者への魂の道」【書評】

2017/02/18 20:46

ゲルトルート・シュヴィング著「精神病者への魂の道」(みすず書房)
 
 勉強会でご一緒していた精神科のお医者様が,お話をされる中で良く触れられていた,この本を読み終わりました。
 精神医学に真摯に向き合う方が直面するものの重さを痛感させられると共に,「それでも,どこかにそうした病が治る糸口があるのではないか」「あきらめずによりそうことが大切ではないか」
 そう思わされる本でした。

 シュヴィングは,ウィーンで看護師をする傍ら,フロイト派のスクールで精神分析を学ばれた方とのことです。
 みすず書房の「著訳者一覧」によると,1905年生まれとのことですので,フロイト(1856〜1939)がまだご存命だった頃の方のようですね。
 
 シェヴィングはこの本の中で,自らの看護師としての経験を元に,【母なるもの】として患者に接することが,患者が精神科医の治療を受けるやすくなる,「準備」になるのではないか,という仮説を挙げています。
 …【母なるもの】といっても,決して無制限に患者の言うことに従う存在ではないのだろうと思います。
 シェヴィングも,あくまでも自らの仕事と両立させて,時間を区切って−毎日一定の時間にするなど−患者の傍らにいるようにしていることが,本からも伺われます。

 以前,このブログにも書いたとおり,「言葉」は,相手がそれに耳を傾けなければ効果は持たないと思います。
 まして,精神に関わる病を患われている方であれば,より一層,そうした側面は強いのだろうと思います。
 そのため,信頼関係の構築が難しいことであると共に非常に大切なことであり,それが構築できることが治療につながっていく場合も多いのだろうと思います。

 信念をお持ちの方が自ら語られる言葉を耳にすると,勇気づけられますね。
 また,まだまだ解明されていなかった分野において,先駆として道を切り開いてきた方々の事績を読むと,私たちが解決困難と考えている問題にも,あきらめなければいつか何らかの前進がもたらされるのではないかという気持ちを,持つ事が出来ます。

 それにしても…
 シェヴィングは,当時,患者の方々のうちに,母親のいない,あるいは精神的に母なるものとのふれあいが欠けていた方々がいらっしゃったことから,【母なるもの】とのふれあいが治療に効果があるのではないかとお考えになられたようです。
 それは,「母なるもの」あるいは「女性」に限られないということが今では言われているようですが,人と人との間で生きていく「人間」であるためには,他の人との信頼関係が構築出来ることが必須であることを物語っているのだと思います。

 不況が続く中で,子育ての単位である夫婦も共働きをさぜるを得ないことが多く,どうしても昔よりも子どもに割ける時間は限られてしまうのかもしれません。
 そして,仮に家族の中でのふれあいが不足するとすれば,1人の子どもに2人もいる両親の「代わり」…両親が出来なかったことを,20〜30人くらいの子どもを1人でみる教師が務められるかというと,そこには限界があるのでしょう。
 それが,いじめが増え,それを止めることが出来ない背景にあると思います。
 そして,大人になっていけば,どんどんと他の人−会社等−がその人を変えていくこともまた,難しくなっていくのだろうと思います。

 私自身は,そうした社会的な状況の改善のためには経済問題の改善が必要だと思っていますが,経済問題は他国の人々との関係もあることであり,改善も容易ではないかもしれないと思っています。
 また,私自身にもそうした問題の解決法は,見当が付いているわけではありません。
 
 そうした中では,具体的に課題に直面してしまった個々の人を,どのように助けていくかという努力を行うことしかないのかもしれませんね。
 
 容易なことではないと思うのですが…。
 ただ,シュヴィングのように,自らの割ける範囲の時間であっても,信念を失わず,一貫した態度で人に接していくことは,
 きっと大切なのだろうと思います。

 「こども」に関わる問題からは離れましたが,私が携わる仕事は「人間」に関わるものであることは変わりがありませんので…。


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