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[書評]サッカー監督としてはもちろん、人間として尊敬できる人:千田 善『オシムの伝言』

2010/03/04 07:32


2010.01.11(月)くまざわ書店・東京オペラシティで購入千田 善『オシムの伝言』(みすず書房):Amazon.co.jp・bk1 著者は、イビツァ・オシム氏がサッカー日本代表監督就任時に通訳となり、オシム氏が病に倒れた後はリハビリの通訳として、そして日本サッカー協会のアドバイザーに就任してから離日するまで付き添った方。メガネにヒゲの、どちらかというと学者風の姿を、試合の中継などで見た人も多いだろう。 当時のエピソードやオシム氏の言動を、通訳というポジションにいた方ならではの視点と表現で紹介している。前半は日本代表でオシム氏がどのようなサッカーを目指し、具体的になにをしたのか、後半は病に倒れたオシム氏の回復とリハビリの様子を、最も近くにいた方の一人として、丁寧に記している。これまで出版された多くの「オシム本」と比較しても、より臨場感のある本。 オシム氏のサッカーについての部分ももちろん興味深いのだが、個人的に印象的だったのは、オシム氏の人間性、人間味の部分。サッカーの指導者としての能力だけでなく、人としての尊敬に値する部分を多く持っていることを、改めて強く感じた。例えば病に倒れた後、リハビリを続けていた頃のオシム氏が、ある日ベッドで顔にびっしょりと汗をかいていた。著者がどうしたのかと尋ねると、「『何でもない。こっちの足が動かないかと思ってね』。毛布の下で、ほとんど感覚もなかったはずの左足を動かそうと、必死で『自主トレ』をしていたのだ」(p.204)。プロフェッショナルとして生きている人なのだと、つくづく思う。 通訳だった著者も、その人間性に惹かれたのだということが分かる。そこで紹介しておきたいエピソードがある。2007年7月のアジアカップ初戦、カタール戦後のミーティングで著者が泣いた、という話について、当事者としての記録が紹介されている。この件について、私が報道などで見聞きしていたのは、終了直前にミスから同点に追いつかれたチームに対して、ミーティングでオシム監督が激怒し、通訳が怖くて号泣した、という内容だった。だが、「号泣した」と表現された当の本人である著者からすると、内容はだいぶ異なるらしい。まず、「『号泣』したのではない。言葉につまって、たぶん二〇秒ぐらい(と思う)通訳できなくなっただけだ」(p.95)。そして、「監督がこわくて泣いたのではない。通訳できないような汚い言葉でオシム監督が選手をののしったのでもない」(p.95)。冷静に「一点差で勝つための手順とか、心のコントロールの大切さとか」(pp.95-96)を説き、「そういう(仕上げでミスをする)やり方ではオレは生きてはいない」(p.96)と言った監督に「『この人、命をかけてる』と感じ入り、言葉が出なくなった」(p.96)のだという。 当時のことを、今でも報道された内容で理解している人は多いと思うので、この点は多くの人に知って欲しいと思う。『オシムの伝言』元日本代表通訳 千田善 著 オフィシャルサイト 〜2009年12月22日発売 :: みすず書房:http://www.osimnodengon.com/━━━━━━━━━━━━━━━これまで私が書いた本の感想はこちらからどうぞ。●「木の葉燃朗のがらくた書斎」トップ>>木の葉燃朗のばちあたり読書録http://www.h5.dion.ne.jp/~garakuta/dokusho/index.html●木の葉燃朗のサイトはこちら→書評と東京歩きと小説のページ「がらくた書斎」http://www.h5.dion.ne.jp/~garakuta/


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