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神糞神学への道 2

2010/03/28 21:10

 

 糞は悪よりもはるかに困難な神学上の問題である。神は人間に自由を与えた。従ってわれわれは神が人間のもろもろの罪に責任がないというのを結局許容することができる。しかし、糞に対する責任は人間を作り出した者だけが全面的に負うことになる。

 

 

…というミラン・クンデラの言葉(『存在の耐えられない軽さ』より)に導かれ、神と糞、美女と糞、天皇と糞という困難な問題、つまり聖なる存在と糞という問題に向き合うこととなった。

 

 

糞とはしかし、聖なるものとの関係性において、人類に認識上の困難をもたらすものだ。いや、存在論上の困難、と言うべきかも知れない。

一方で、糞の存在こそが、対象たる存在の生命の証でもある。生物として生きることは、すなわち糞を伴う事態なのである。

 

 

 

あらためて糞に向き合うことで気付かされることは、問題は視覚上の困難というよりは、第一に嗅覚上の困難として立ち現れるという事実であろう。

 

臭わない糞、香しい糞は、神と、美女と、天皇と両立し得るように思われる。


神が妙なる香りの糞を排出されるなら、信徒はさして困難を感じずに、神の排便という事実を受け入れられるに違いない。

 

 

 

視覚に関しては、人間は目をつぶることで、対象を見ないで済ますことが出来る。聴覚に関しては、耳をふさげばと大丈夫とは思うが、やってみると振動としての音をシャットアウトすることは意外に難しい。

嗅覚はどうだろうか? 鼻をつまむことは出来るが、しかし、すぐに息苦しさに直面させられることになるだろう。

嗅覚の遮断は思いのほか簡単ではなさそうである。

 

 

 

鰯の腐った臭い、というものがどのようなものであるのか、あらためて振り返ってみるが、経験したことがないらしい。想像出来そうな気もするが、やはり、経験した者でなければ実相はわからないだろう(たとえばの話、「ウンコ食べるのよ! そうなんだ! だから、腐った鰯の匂いがするわけね!(大爆笑)」という言葉を自信をもって発するためは、「腐った鰯の匂い」に通暁していることが、まず必要なのである)。

幸いなことだと思うが、私には、人間の死体の臭い、死臭の中で暮らした経験もない。

 

生ゴミの臭いの延長として想像することが正しいのか、それとも糞の臭いの延長として想像する方が正しいのか、それもよくわからない。消化物ではないから、生ゴミの延長上の臭いなのだろうか?

 

幸いにも、これまで、周囲が戦場となることもなく、大地震・大災害に見舞われるという経験もない。処理されない死体と共に暮らさねばならぬ状況とは無縁に過ごすことが出来ている。

 

 

 

昨日は、ナチスの絶滅収容所における死体処理システム構築を話題として取り上げた。

大きな穴を掘り、トラックの車台を組み合わせた上に死体を積み上げ、順次焼却することで、絶滅収容所の運営者は問題を解決したわけだが、焼却処理の対象は既に腐敗が進んだ死体なのである。悪臭の中での作業となったことは確かだ。

 

そこで思い出したのは、1945年夏のベルリンの情景である。ベルリンフィル関係者の日記中のエピソードとして読んだ記憶があるが、5月のナチスドイツ降伏に至る市街戦の死者の埋め直し作業の情景が、臭気と共に描かれていたのである。

作業には、かつてのナチ党員が狩り出され、炎天下のベルリンで、簡易埋葬されていた市街戦の死者の死体を掘り出し、埋め直すのである。読み進めながら、その腐乱死体の臭気を強調する、夏のベルリンという条件を思ったものだ。

 

大日本帝國の降伏は、まさに真夏の出来事であった。

そこにも臭気との闘いがあったはずである。

文書記録にも、画像・映像にも、臭気は記録されない。しかし、大量の死者の存在は、嗅覚上の出来事としても経験されていたはずなのである。

 

 

 

 

 




Binder: スカラベ・サクレ(日記数:11/全体に公開)
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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2010/03/28 22:38
    神の導きにより、シリーズ第二回目となった。

    糞の神の導きなのか、糞をする神の導きなのか、それはわからないが。

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