umasica :桜里さんのマイページ

『タケヤネの里』

2013/05/04 21:55

平井の小松川区民館ホールでの「メイシネマ祭’13」の二日目。



二日目は、青原さとし監督の『タケヤネの里』を観る。


映画は、「竹皮編み」に取り組む前島美江さんの紹介から始まる。

青原監督と前島さんの出会いの場は80年代の新宿、「民族文化映像研究所」であった。前島さんが「竹皮編み」の世界に入るのは、その後の話なのである。当時の民族映像研究所内で撮られた写真もスクリーンに映し出されるのだが、そこには青原・前島両人と共に私の姿もあったりして…(そんな仕掛けに個人的に驚かされたりしながらも、竹皮の世界にぐいぐいと引き込まれていくのである)。


「メイシネマ祭」のチラシには、


 竹と人間の壮大な営みを浮き彫りにするロードムービー。竹皮の話から、こんなにも興味が尽きないドキュメンタリーが出来るとは驚きと感動。


…との言葉で作品が紹介されているが、青原監督の作品に共通しているのが、監督当人の興味に導かれるままに続く移動であり、観客として映像を通してそれに同行するロードムービー的感覚である。そして題材そのものの地味さと、ドキュメンタリーとして掘り出される世界の思いもよらぬ豊かさの対比である。




前島さんの取り組む「竹皮編み」も伝統工芸のように見えるが、意外に歴史は浅い。高崎に伝えられていた、南部表として知られる種類の履物の「表」に用いられる竹皮工芸の伝統と、30年代に日本に亡命していたブルーノ・タウトとの出会いがなければ、現在の「竹皮編み」は存在しないのである。ナチスの支配がなければ、タウトが日本に滞在し、ドイツの工芸技法と日本の竹皮を用いた履物職人の技法が合体することはなかったはずである。


竹皮の工芸的利用を可能にするのは、その素材としての特性であるが、それだけにどのような竹でもよいというわけではない。特定の種類の竹でなくてはならず、それが白竹(シラタケ、学名はカシロダケ)である。その白竹の産地は、福岡県の八女に限定されているのである。他の地方では採れないのだ。

で、観客は、監督と共に八女に移動する。そして竹林に分け入る。

監督の興味は白竹の生態に向かい、良質な竹皮の採集法に向かい、採集された竹皮の流通に向かい…


映像は、竹皮工芸の解説の域を超えて、八女でしか採れない白竹の、日本国内全国的な流通の歴史に及び、竹皮を利用した様々な工芸品の紹介にまで展開していく。そこに見えてくるのは、竹皮を介した日本人の歴史である。八女の山村の人々から、問屋という流通過程を経て、様々な職人の手元に渡り、それが製品として商店に並び、人々の使用に供されることになる。そのすべての過程を、映像を通して目の当たりにすることになるのだ。

竹皮編みの他に、日光下駄、舞妓さんの履く「こっぽリ」、木版画用の「本ばれん」、茶道具としての羽箒などの職人の手技の見事さ。

そして「こっぽり」を履く舞妓さん、浮世絵版画の刷り師、茶道具を使いこなす茶人の姿。かつての日本でもっともポピュラーであったのは、食品を包む竹皮の姿であったろう。

八女の人々は製品となった竹皮の姿を知らないし、職人さんも、製品として使用する人々も、八女の地に生える白竹の姿を知らない。

もちろん、観客である我々は、そもそも何も知らなかった。

そんな人々が、映像を介して、互いの姿を知ることになるのである。映像を介した壮大な出会いがあるのだ。










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