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従軍と軍属 (日語進駐にアテナも從軍)

2014/02/17 22:41

ネット上には様々なヨタ話が氾濫しているわけだが、



 従軍という言葉は軍属という正式な身分を表す言葉であって、それは軍から給与をもらっていることを意味する。



…というのもその一つであろう。既に取り上げたように、



 「軍属」は軍の法規に規定された地位・身分だが、「従軍」は法令上の用語ではなく、語義の範囲も広いのである。日清日露の戦争から昭和に至るまで、「従軍」という語と「軍属」という語の用語法の範囲は異なるものであり、「従軍という言葉は軍属という正式な身分を表す言葉」との主張は誤りなのである(http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-7b0f.html)。



…ということなのだ。

これは当時の用語法上の常識に属するものであり、当時の出版物を読む習慣のある人間なら知っていて当たり前の話に過ぎないが、ネット上のコピペ知識だけでモノを語ろうとする類いの人間には知られていないことも確かのようである。



今回はあらためて、早川タダノリ氏の『神国日本のトンデモ決戦生活』(ちくま文庫 2014)に眼を通していたら、「丸善アテナ萬年筆」の広告に、背中に南方風の人物とアテナインクのインク瓶を載せ、長い鼻でペン(丸善アテナ萬年筆)を持って前へ進む白い象のイラストに、


 日語進駐にアテナも従軍


…とのコピーが添えられたものがあるのを発見した。『学生の科学』誌の昭和17年11月号に掲載されたものだという。

インク瓶も万年筆も、「軍属という正式な身分」にはないし、「軍から給与をもらっている」わけではまったくない。

手元にある当時の出版物のいくつかをチェックしたが、残念ながら、この広告と同じものは見つけられなかった。



その代わりというわけでもないが、昭和17年5月号の『航空朝日』に掲載された「さくらフヰルム」の広告に、


 寫眞も從軍


…とのコピーが付されているものがあった。



     寫眞も從軍(さくらフヰルム)




「写真も従軍」(さくらフィルム)ということだが、こちらには、


  敵状の偵察に

  作戰記録に

  戰果の報導に

 寫眞は近代戰の武器


…という言葉も添えられている。もちろん「フヰルム」が「軍属という正式な身分」にあったわけはないし、「軍から給与をもらって」いたはずもないが、それでも「軍用」という側面(軍需物資的側面―近代戰の武器)が強調されてはいる。それに比べれば、「アテナインキ・萬年筆」の方は直接的な軍事利用というよりは、日本語教育のツール的側面が強調されたものであり、軍需物資的側面をウリにしたものではない。

早川氏の紹介する「丸善アテナインキ」の広告のコピーには、


 日本文化の尖兵として アテナが 堂々の無敵上陸 (昭和17年7月号)


 巨歩堂々―― 文化使アテナが 共榮圏を乗り進む (昭和17年10月号)


…というものもあり、いずれもが軍事力による南方進出をメタファーとして用いながらも、文化的ツールとしての側面が、あくまでも強調されているのである。





いずれにせよ、大東亜戦争二年目の雑誌広告を見るだけで、


  

 従軍という言葉は軍属という正式な身分を表す言葉であって、それは軍から給与をもらっていることを意味する。



…という主張が何の根拠もないヨタ話に過ぎないということが理解出来るはずである。







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