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独立した英国の帰結としての分裂する英国 3

2016/06/26 17:05



 EUの難民・移民対策に批判的なハンガリーのオルバン首相は24日、「英国は移民に関し自ら判断することを求めていた。EUは今回の経験から学び、人々の声に耳を傾けるべきだ」と主張した。
 オーストリアで移民規制を訴える自由党のシュトラッヘ党首も「国民投票の結果は民主主義の転換点となり、政治の中央集権主義と継続する移民の流入への反対を示した」と指摘。オランダの極右、自由党のウィルダース党首は「オランダのEU離脱に関する国民投票をなるべく早く行うべきだ」とロイター通信に述べた。
 独立運動が盛んなスペイン東部カタルーニャ自治州のプチデモン州政府首相も、「民主主義が勝利した。英国人が投票の権利を与えられたからだ」と言明。州独立の是非を問う住民投票の実施をスペイン政府に求めていく考えを改めて示した。
 財政危機でEUのユーロ圏諸国から金融支援を受けるギリシャは、投票結果をEU改革に結びつけようとしている。チプラス首相は「より民主的な欧州の未来図が必要だ」とEUの変革を要求。「財政緊縮策は(域内の)南北間の不平等を拡大した」と指摘した。
     (毎日新聞 2016/06/25日 11:01)




今回の英国のEU離脱の影響についての記事からの引用である。

EUからの「離脱」は「統合」以前のヨーロッパへの後戻りと言えるのだが、カタルーニャのスペインからの「独立」は、個々の国家の枠組みの問題であり、ヨーロッパの現在の国境線の見直しにまでつながってしまうものだ。


この件についてのより詳しいい記事によると、



 スペイン北東部カタルーニャ自治州のプチデモン州首相は、英国の欧州連合(EU)離脱により、同州がスペインからの独立を求める根拠が強まったとの認識を示した。
 プチデモン氏は声明で、英国がEU加盟国の承認を得ずに離脱を決定できたことで、カタルーニャ州もスペイン政府の承諾を得ずに独立を主張することが可能と指摘。「他のすべての国が行なっているように、主権について決定を下すことが可能なことを示している」と述べた。
 また英国からの独立の是非を問う住民投票を再び実施する「可能性が非常に高い」とスコットランド行政府のスタージョン首相が発言したことをめぐり、支援する立場を示した。
     (ロイター 2016/06/25 06:45)



…とのことだが、既に示した再住民投票によるスコットランドの英国からの独立の可能性がカタルーニャ独立の正当性の根拠とされているわけである。

ここで重要なのは、スコットランドの「独立」が英国民による「国民投票」によってではなく、スコットランド住民の「住民投票」によって決定可能とする枠組みである。前回は僅差で否決されたが、この枠組み自体は英国政府も認めたものなのである。

あらためてスコットランド住民の住民投票により、EUを離脱した英国からのスコットランドの「独立」が決定的となれば、スペイン政府にとっては歓迎しない前例となってしまう。もちろん、スペイン政府は国内法の規定を盾に、そのような住民投票そのものを認めない可能性が大きいが、しかしスペインにおける民主主義の原理そのものが問われてしまうことも確かであろう。民族自決原則の下で自身の運命を民主的に決定する権利の問題なのである。


スコットランド独立の理路からは、琉球=沖縄の日本からの独立の可能性も導き出されてしまうだろう。先に、「「民族」としての「沖縄の人々」 (琉球國の「独立」と伊江朝直 9)」で示したように、琉球人=沖縄の人々を、(いわゆる)日本本土の日本人とは異なる民族(ネーション)に属する人々と見做すことには合理的な理由がある。その際に、日本全体を対象とした国民投票によってではなく、現在の琉球=沖縄の住民としての沖縄県民による住民投票によって決定すべき問題と位置付けてしまえば(そしてそのように位置付けるべき前例をスコットランドが提供するのである=民主主義的決定のお手本として)、独立に至る可能性は高くなるだろう。


私自身はナショナリズムの熱狂に同調する気はないが、しかし、民族的帰属の故に、所属する国家内で不利益を被る立場に置かれているのだとすれば、民族自決により自民族による国民国家を希求しようとする心情は理解する。




欧州統合により、ヨーロッパ内での国家間戦争(それまでの歴史の中で繰り返されて来たものだ)の可能性がほぼ消滅した(と考えられた)一方で、制限された国家主権の代替物としてEUは巨大な政府となってしまったのである。そこに成立したのは、個々の国家のローカルな利害に無関心な中央集権的政治機構であり、形式主義・官僚主義が蔓延したのである。

ナショナルな心情の問題に止まらず、現実問題として、EUの現状はお気楽に肯定出来るようなものではない(ギリシアのチプラス首相の主張は、その点に関してのものだ)。


広大な地域、しかも人口の多い地域をどのように統治するのかを考えれば、そもそもそれが容易な問題ではないことは理解出来るだろう。既に中国もロシアも米国も、それぞれに広大な国土を有する国家として、統合されたEUの直面したのと同じ問題の解決策に悩まされてきたはずである。中国とロシアは中央集権的強権的な政府により国土を支配することによって、そして米国は連邦政府に対し独立性の高い各州政府に地域統治の権限を分与することによって分権的に対応することを選んだ。米国は、ローカルな利害対立の問題をローカルに、しかも民主的に解決する方法を選択したとも言えるだろう。





現在の日本の中で沖縄県の置かれた状況を考えれば、日本の国土の0.6%の沖縄に米軍基地の75%が集中している現実を考えれば、沖縄県民が一方的に不利益を強いられる状況下にあることは認めねばならない(沖縄県に米軍基地を集中させるべき理由はないというのは軍事的常識である―軍事の専門的知識がある者にとっては常識なのである)。

確かに沖縄県の日本からの独立は、問題解決のための選択肢となり得るではあろう(結果として沖縄は米国との交渉の主体になれるのだ)。今回の英国のEU離脱と、それに伴うスコットランドと北アイルランド(そしてロンドン)の英国からの離脱(独立)の可能性は、沖縄県の独立という選択肢の実現可能性を、あらためて示唆するものである。

しかし、沖縄県民が米軍基地問題において圧倒的かつ一方的に不利益を強いられている現状を解消しさえすれば済む話でもあるのだ。日本という国家内で対等な存在として沖縄県民を取扱い、つまりまず基地問題を解決することで、複数の民族が権利において平等である国家としての日本をまず想像してみること。

沖縄県民の利益を日本という国家が侵害しさえしなければ解決する問題なのである。


このように考えて来ると、中央集権国家としての日本が沖縄県のローカルな利害に無関心である現状は、EUの現状に似ていないでもないように感じられる。










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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2016/06/26 18:32
    国家統合の道の突き当りが国家の分裂…ということになるのか?

  • Comment : 2
    umasica :桜里
     2016/06/26 21:20
    前記事と併せて、ココログ版の「現代史のトラウマ」にもアップ。


     独立した英国の帰結としての分裂する英国
     http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-331b.html

  • Comment : 3
    やわらか☆不思議猫
     2016/06/29 09:37
    面白おかしく報道機関とかの踊ぶりを眺めておりましたが、イギリスの国民投票の結果に法的拘束力が無いということを明示的にご存知の方の比率はどのくらいでありますかね〜〜(^^;)

  • Comment : 4
    umasica :桜里
     2016/06/29 18:10
    投票前に元々は離脱派が提出してた国民投票成立要件の請願。
    再投票請願として残留派が署名運動したら400万近い署名が集まり…
    あらためて国会で審議になくちゃ的展開になったり…
    しかし、一人で3万回署名したヤツがいたことが発覚したり…
    しかし、現首相は既に辞任表明しちゃっていたり…
    離脱派の大物は、投票前のキャンペーン内容の不誠実さを認めちゃうし…


    これがすべてネタじゃなく現実の出来事なのでございます。

  • Comment : 5
    やわらか☆不思議猫
     2016/06/30 20:18
    「成熟した民主主義」のサンプルを拝見させていただいているわけで、まあこんな物だという貴重な実例でございますね〜( ̄∇ ̄;)

  • Comment : 6
    umasica :桜里
     2016/06/30 21:43
     英国の欧州連合(EU)離脱交渉を行うキャメロン首相の後任を決める与党・保守党党首選の候補者推薦が30日正午(日本時間午後8時)に締め切られた。
     EU離脱派の中心的役割を果たし、最有力候補とみられたボリス・ジョンソン前ロンドン市長(52)が土壇場で出馬辞退を宣言。これにより、残留派だったテリーザ・メイ内相(59)と、予想外の立候補を表明したマイケル・ゴーブ司法相(48)の事実上の一騎打ちとなる公算が大きくなった。選挙結果は9月9日に発表される。
     ジョンソン氏は記者会見で、EU離脱を率いるのは「自分ではあり得ない」と言明。党の新執行部の支援に回る意向を表明した。
     これより先、メイ氏は出馬表明の記者会見で「EUに残ろうとしたり、裏口から再加盟しようとしたりする試みがあってはならない。2度目の国民投票もない」と述べ、断固として離脱を進める考えを明らかにした。
     一方、ジョンソン氏を支援するとみられていたゴーブ司法相は英誌スペクテーター(電子版)への寄稿で、ジョンソン氏では「指導力を発揮できない」として立候補を表明した。
     党首選への立候補は下院議員2人の推薦が必要。選挙は、党下院議員団により候補者を2人に絞り込んだ上で、一般党員の郵便投票により実施される。
     メイ、ゴーブ両氏以外に、スティーブン・クラブ雇用・年金相(43)、リアム・フォックス国防相(54)、アンドレア・レッドソム・エネルギー担当閣外相(53)の3氏が出馬した。
         (時事通信 2016/06/30 19:59)

  • Comment : 7
    umasica :桜里
     2016/06/30 21:46
    離脱派の中心人物は逃げ出し、
    一方で残留派の大物が、
    決まった以上「断固として離脱を進める考えを明らかに」するという展開。

  • Comment : 8
    やわらか☆不思議猫
     2016/06/30 22:13
    つまりはこれは盛大な「おいおい誰かちゃんと止めてやれよ」状態なわけですね。
    誰も本気で離脱なんて考えてなくて、与党への攻撃材料として使っているだけという茶番劇なのに、「成熟した民主主義」を担うはずの国民さんも、茶番劇に突入、誰も真剣には考えていないのに、決まってしまうという……(;゚−゚)??。

  • Comment : 9
    umasica :桜里
     2016/07/05 20:18
     ロンドンを拠点とする法律事務所ミシュコン・デ・レヤは3日、加盟国の離脱手続きを定めた欧州連合(EU)基本条約(リスボン条約)50条を発動する前に議会の承認を得ることを英国政府に求める訴訟手続きを開始したことを明らかにした。
     複数の顧客からなる集団を代理しているというが、顧客の名称などは明らかにしていない。
     BBCによると、顧客は財界人や学者らだという。
     ミシュコン・デ・レヤは「(英国のEU離脱が決定した)国民投票結果そのものに法的な拘束力はなく、現在の首相あるいは次期首相が議会の承認を得ずに50条を発動することは違法」としている。
     政府が英議会の主権を確実に尊重するよう、6月27日以降、政府側の弁護士と連絡を取っているという。
         (ロイター 2016/07/04 17:50)

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