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Evil Mickey attacks Japan

2016/07/10 21:09

 今回ご紹介するアニメは、『オモチャ箱 シリーズ第3話 絵本1936年』がオリジナルのタイトル(1934年 J.O.スタヂオ製作)である。

 動画サイトには「Evil Mickey attacks Japan - A 1936 japanese animation」としてアップされていたりする(別の投稿者によりオリジナルタイトルでもアップされている→ https://www.youtube.com/watch?v=EpIxwiQUWFo)が、こちらの方が、オリジナルタイトルより内容を的確に表現したものとなっていることも確かだろう。



 舞台は平和な南洋の島。米国アニメを代表するキャラクター、あのフィリックスにしか見えない主人公を中心に(当時の用語で言えば「土人」の姿もある―大日本帝國による南洋の信託統治の反映だろうか)様々なキャラクターが楽しく暮らしている島の上空に現れるのが、やはり米国アニメを代表するキャラクターであるミッキーマウスにしか見えない敵役(まさに「Evil Mickey」である)。

 「Evil Mickey」は陸上のヘビ部隊や海上のワニ部隊を従え、降伏要求に従わないフィリックス(にしか見えない主人公)たちの島を攻撃する(「Evil Mickey」自身はコウモリ・キャラの航空部隊を率いている)。島民は絵本の中のモモタロウに支援を求め、やがて日本昔話の主人公総動員での「Evil Mickey」軍との闘いとなる。







Evil Mickey attacks Japan - A 1936 japanese animation https://www.youtube.com/watch?v=icVu-acHlpU






 「猿蟹合戦」のサルもカニも(そして臼も)共に進軍(こちらは陸軍イメージである)し、亀の背中に乗り一寸法師艦隊(もちろんこちらは海軍のイメージであろう)を従えて進撃する浦島太郎が掲げるのは東郷平八郎の「皇國興廃在此一戦」である(バックに流れる軍歌も陸軍シーンと海軍シーンで異なるなど、芸も細かい)。1934年作品なので、爆弾三勇士(1932年の第一次上海事変時のエピソード)を思わせる突撃シーンもあれば、サルとカニを搭乗させた臼が戦車(当時の最新兵器)に変身して活躍したりもする。雲の上でのモモタロウと「Evil Mickey」との直接対決(ミッキーの身体は大きい)を経て、地上に墜ちた「Evil Mickey」は浦島太郎の玉手箱攻撃によって急速老化し無力化されてしまう。

 花咲か爺さんにより「Evil Mickey」に対する勝利は祝福され、咲き誇る花の下で島民が踊るのは東京音頭(1933年にヒット)である。

 で、メデタシメデタシという展開。




 信託統治下の平和な南洋の島を、米国の象徴である「Evil Mickey」が襲い、「日本昔話」軍団の活躍により侵略は撃退される。しかし、島の住民代表的な地位にいるのも米国アニメキャラのフィリックスそっくりさんなのであった。その意味で、作品としては、米国=敵という構図で一貫しているということでもないだろう。




 ネトウヨ方面では中国=パクリ大国ということになっているが、確かに著作権に寛容な時代(パット・サリバンによるフィリックスの登場は1919年であり、ウォルト・ディズニーのキャラクターであるミッキーマウスの登場は1928年)だったとはいえ、日本のアニメの歴史も米国アニメのパクリと無縁ではなかったことをも教えてくれる作品である…と指摘するのも野暮な話ではあるが、この機会に再確認だけはしておこう。





 動画としての仕上がりも上等だし、ストーリーとしても十分に楽しめる、日本アニメの実力を感じさせる作品だと思う(1934年の作品なのにタイトルが「絵本 1936年」となっている理由は、今のところわからない)。








《オマケ:本家米国の1936年製作のフィリックス・アニメ》


Felix the Cat: The Goose That Laid the Golden Egg (1936) (cartoon) https://www.youtube.com/watch?v=MMetcqOBtr8


 1936年、既に米国ではアニメの世界も総天然色になりつつあったのである(「昭和11年のシンデレラ(シボレーのシンデレラ)」も参照)。








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最新コメント

  • Comment : 1
    umasica :桜里
     2016/07/10 21:12
    お気に入り作品である。

  • Comment : 2
    umasica :桜里
     2016/07/10 23:14
    加筆修正の上、ココログ版の「現代史のトラウマ」記事としてもアップ。



     Evil Mickey attacks Japan (モモタロウvsミッキーマウス 1936)
     http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/evil-mickey-att.html

  • Comment : 3
    やわらか☆不思議猫
     2016/07/11 21:22
    これはこれは。品質が高いですにゃ〜
    相当予算がついてるんでしょうね。

    で個猫的には、使用されている音楽の中に、ベートーベンとメンデルスゾーンを検出。作成者の育ちや文化背景が薫っているような気が致しました。

    ケリの付き方も、玉手箱攻撃による無力化とか、平和的すぎますな。

  • Comment : 4
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2016/07/12 18:53
    これは面白いですね!

  • Comment : 5
    umasica :桜里
     2016/07/12 21:25
    >相当予算がついてる

    「J.O.スタヂオ」は大澤商会が設立した会社で、
    (時計とか写真機材とかの輸入を手掛けていた)
    トーキーシステムの輸入売込みを目論んだものであったらしい。
    トーキーアニメ需要を見込んで「漫画部」を設置したのが1933年。
    で、当初は潤沢な予算がついていたんでしょう。
    しかしやってみると、アニメって手間がかかり過ぎる割にもうけが少ない。
    で、1936年には「漫画部」は無くなってしまう。
    (結果的に「絵本 1936年」のタイトルが皮肉なものに)


    >作成者の育ちや文化背景

    私もベートーベンモチーフとかに心動かされちゃいました。

    で、「漫画部」の中心となったのが、
    同志社の学生の「童映社」というアマチュアアニメ制作団体。
    卒業して別の道に進んでいたのが、
    「漫画部」設立により、「J.O.スタヂオ」に雇われた。

    同志社の卒業生(それも卒業したばっかり)というメンバー構成に、
    選曲の音楽的趣味の背景も理解出来るんじゃないかと。

    (萩原由加里「京都におけるアニメーション制作」(2009)による)

  • Comment : 6
    やわらか☆不思議猫
     2016/07/13 11:31
    >同志社の学生の「童映社」

    にゃ〜るほど

    現代社会では、アニメーターと言えば、ブラック中のブラック環境でこき使われて使い潰される底辺の代名詞でありますが(←ホントか?)、当時は、潤沢な予算を背景として、最新の技術を駆使して新分野をきり開くインテリ集団だったわけですニャ?

    それで、現代社会のどこを探しても見つからないような、「品格」がそこはかとなく漂ってるわけですね〜

    「ソコハカ」と漂っていた時代もあったのに今は「ソコ墓」だから〜(*x_x)

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