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よみがえる記憶:飛行機とび禁止の原因

2009/09/13 17:57

※先日報道されたニュースをうけて書いたmixi日記を転載(※一部変更)。

ニュースの内容は、京都・木津川で小学3年生が溺死したという事故。
同級生3人で禁止されていた川遊びをしていたところ、一人が溺れてしまったのに、一緒に遊んでいた仲間たちは、川遊びが発覚し叱られる事をおそれて(以前叱られていたので)誰にも知らせなかった──というものだった。

「仲間が溺れたというのに、助けを呼ぼうとしなかったのだろうか?」
というのが最初に感じた事だった。
「ひどい話だなぁ……」とあきれもしたが……ふと脳裏によみがえるるものがあった。「そういえば、僕も子供の頃に……」
禁止されていた状況で遊んでいて友達が事故に遭う……これとよく似た場面に遭遇したことがあったのではなかったか!?

あれは小学3年〜5年のことだった。当時、学校では鉄棒が流行っていて「飛行機とび」という技がさかんに行われていた。
「飛行機とび」というのは、鉄棒の上にしゃがみ立ちになり、両足の間の鉄棒をつかんで後方に倒れ込むように回転しながら、その勢いを利用し前方に足をふりだして飛び降りるという技。
この基本技を習得した連中は、鉄棒上の足をおく位置と手の握りの位置を逆にしたり、交互にしてみたり、鉄棒を握る手を交差させて飛び出すときにひねりをくわえてみたり、いろいろな工夫を加えて新技を開発して「ジェット機」「グライダー」「ヘリコプター」など色んな呼び名をつけて披露し合っていた。

その日の放課後も、僕らクラスメイト数名は、校庭の高鉄棒で秘かに遊んでいた。
本当は授業が終わったらすみやかに下校しなければいけない規則だった。

僕らの大半は既にマスターした「飛行機とび」ではあきたらず変化技の開発に余念がなかった。この日問題となったのは「人工衛星」と呼ばれる技だった。「飛行機とび」の構えで股の間の鉄棒を逆手に握り、(「飛行機とび」とは逆に)前方に回転するのが「人工衛星」だ。回転の向きが逆になるだけだが、感覚的にはまるで別物。「飛行機とび」やその関連技では視界の水平面が変わらないが、「人工衛星」では頭が一回転するため世の中も視界の中で一回転する。着地面が1度完全に視界から消えるので、特に最初にトライするときには見た目以上に勇気がいる。度胸だめしのような技でもあった。

皆が次々にマスターして行く「人工衛星」を最後までクリアできずにいたのがM君だった。M君はちょっとトロイ。
高鉄棒によじ登っては「人工衛星」の体勢をとるものの、仲間たちが固唾をのんで見守る中、いつまで待ってもトライできずに結局怖くて止めて皆のヒンシュクを買う──こんなことがくり返された。
散々遊んで、もうそろそろ帰ろうという頃になって、M君はあせりだした。彼にしたら「みんなできたのにMだけ、できなかった」という形で終わりたくはなかったのだろう。トロイイメージを払拭するためにも、ここはなんとしてもクリアしておきたい──そう考えたのかもしれない。
最後まで高鉄棒にとまっていたM君は帰ろうとする皆を呼び止め、「あと一回!」と叫ぶと、鉄棒の上に足をかけた。
「どうせまた中止するんだろう」といささかうんざりしながらふりあおぐと、予想に反してM君のちょっとゆるめの体は、今度こそ前方に倒れこんでいった。

その光景は今でも思い出すことができる。
やはりビビリが入っていたのだろう、および腰でいびつな回転だった。重心の移動はスムーズな弧を描けず、むしろ落下といった感じ。かがんだまま前に倒れ込んだ体は鉄棒を握った手を支点に、どすんと懸垂状態に移行した。その勢いでふり回され、体がのびきった瞬間──落下と遠心力のGが一気にかかるのがわかった。
「危ない!」と思った瞬間、M君の手は負荷に耐えきれず鉄棒から離れていた。むろん手を離すタイミングではい。
手が離れた瞬間──危険な落ち方をすることは目に見えていた。だけど僕らにはどうすることもできない。
何度もこの技を行っていれば、空中に放り出された瞬間、反射的に身を守るカバー体勢がとれたかもしれない。しかし初めてこの回転を体験したM君には自分がどんな体勢にあるのかも把握できてはいなかったろう。急激な回転に目が回って、迫ってくる地面も見えていなかったに違いない。
ふりとばされたM君はなすすべもなくバンザイ姿勢のまま、予測した通りの軌跡をたどって突っ伏すような形で地面に叩き付けられたのだった。

高鉄棒の下には砂場があった。砂の上に落ちていれば、まだ衝撃は緩和されたのだろう。しかし、ふりとばされた彼の体は砂場の外側へ流されていた。そして砂場の縁は不幸な事にコンクリートの枠があった。M君の額は狙ったように、そのコンクリート枠の角に打ち付けられた。

あまりに無防備な落ち方が信じがたかった。背筋に寒いものが走る。
M君しか目に入っていなかったのに、その場にいた全員が凍りつくのがわかった。
「大丈夫か!?」
おそるおそる近づくと、なんとM君の額がみるみる腫れ上がってくる。人の顔がこんなに急激に変化するものなのかと驚いた。
これは尋常ではない──僕ら(子供たち)では手に負えないと感じて、だれか大人に助けを求めなければ──と混乱した頭で考えた。
「保健室に連れて行こう!」と言うと皆、同意をした。しかし「放課後に遊んでいたんだから叱られるな……」と漏らしたとたん、「えっ!? そんならイヤだよ」と尻込みする奴がでたのでビックリした。
この非常時に叱られることなど気にしてられるかよ──という思いで保健室行きを断行。けっきょく皆でM君を保健室に連れて行った。彼は救急車で病院へ搬送され、そのまま入院となった。
後日元気になって戻ってきたM君が言うには、入院中、死の危険もあったらしい。

その事故の直後から「飛行機とび」は禁止となった(厳密に言えば応用技の「人工衛星」での怪我だったのだが)。事故現場の高鉄棒下の砂場からはコンクリートの縁が撤去され、角を落とした木の枠が埋め込まれた。
当時は「飛行機とび」が禁止になったのは僕らの小学校だけだろうと思っていたが、後に読んだ児童文学作品に「どこかの学校で怪我した生徒がいて飛行機とびが禁止になった」というようなエピソードが書かれてあって「全国的に禁止になっていたのか!?」と驚いた。
M君の事故(のみ)が「飛行機とび」禁止の原因だったのかはサダカではないが(あるいは他の学校でも同じような事故があったのかもしれない?)……当時僕らが知らないところでも、この事故は波紋を呼んでいたのかもしれない。

僕の中では、事故のシーンが強烈過ぎて、「放課後校庭に残って遊んでいたこと(規則違反)を叱られた」という記憶は残っていない。
しかし、もし、あのとき叱責をおそれて保健室に連れていくことをためらい、手当が遅れてM君が死亡でもしていたら、僕らも木津川のニュースと同じような状況で扱われていたかもしれない……。
今回のmixiニュースを読んだあとそんな事を思い出して、今更ながらゾッとした。

また逆に、今回のニュースの子供たちのどちらかが事故が起きた時に、すぐに大人に助けを求めていたら、あるいは被害者は助かっていたかもしれないし、一時叱られたとしても、後に忘れてしまう程度のエピソードで終わっていたかもしれない……そんな可能性だってあったろう。

木津川の事故は「同級生」たちにトラウマとして残るだろう。

あわてふためいているときの一瞬の判断の誤りが、その後の人生を左右するような分かれ道になる……なんてことはあるのかもしれない。

そんなことをあらためて考えさせられてしまった。


Binder: 星谷 仁のバインダー(日記数:25/全体に公開)
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最新コメント

  • Comment : 1
    アンシー
     2009/09/13 22:34
    怖いですね〜
    初めてそういうのをみたら、ほんとに怖いと思います。。
    話の本筋からははずれると思いますが、いや〜、ほんとに怖い経験でしたね・・・

  • Comment : 2
    太一
    太一さん
     2009/09/13 23:01
    気が動転していた、それは言い訳になっちゃうんでしょうけれど。

    でも見ていた子供たちも怖かったんでしょうね、自分も行っては行けない場所とかに行ってた口ですから。

    何とも無かったのはただ運が良かっただけだとは思います。

    自分がそんな状況になっていたら、どんな行動を取れただろうか?

    亡くなった子も可愛そうですが、これから十字架を背負っていく子達も可愛そうです。

  • Comment : 3
    星谷 仁
     2009/09/13 23:52
    >>アンシーさん

    木津川のニュースを知って「ひどいなぁ……」と感じたのですが、振り返ってみれば、自分も子供の頃に禁止されていた状況で遊んでいて事故現場にいた事があった事を思い出しました。

    もうずいぶん昔の話になってしまいましたが……自分もけっこう怖いものを見ていたんだなぁ……と再確認。当時の事故について覚書の意味を兼ねてmixi日記に書いておこうと考えたのが一週間前でした。

    で、その後、一時期(?)小学校で飛行機とびか禁止になっていた背景とこの事故には直接的な関係があるのか気になって、ちょっとネットで調べてみたところ──。
    「グライダー」という技(僕らは、鉄棒に乗せた両足の間を握っておこなう「飛行機とび」に対し、両足の外側を握っておこなう技を「グライダー」と呼んでいました)が禁止になっていたという情報はあったのですが、「禁止」になった記憶は無いとする人もいて、よくわからず。
    飛行機とびが小学校で禁止された件についての情報が、もっとネットの上にあってもいいだろうと考えて、一般に公開できるFreeml日記に転載してみたしだいです。

    >>太一さん

    >でも見ていた子供たちも怖かったんでしょうね、自分も行っては行けない場所とかに行ってた口ですから。

    多くの人が、子供のうちは「冒険」の経験があるんじゃないでしょうか。
    たいていは、見つかって叱られたり、見つからなくても大した事故にならずに済んで、記憶も薄れていくのでしょうが……たまたま重大な事故に遭遇してしまうかどうかというのは、紙一重なのかも知れませんね。

    大きな事故に遭遇してしまった場合、本人はもとより周囲におよぼす影響を考えると……そういった意味でも怖いものがあるなぁとあらためて感じた事件でした。

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