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2017年をふりかえって

2017/12/26 13:02

2017年は、仕事の上では充実した年でした。
1月に、『サンガジャパン』vol.25特集・原始仏典に、「大乗仏教は大乗経典に基づく教えか?−大乗の仏教理解と阿含経典」が掲載されました。伝統的理解でもナーガールジュナ(龍樹)『中論』は大乗経典の『般若経』の空の思想を説いたものとされていますが、ナーガールジュナが大乗経典を仏説と認めるべきとしたということは、逆にいうと、ナーガールジュナ以前は無条件に肯定できないもので、ナーガールジュナが認めるべきとした判断基準は別にあり、それは阿含経典だ、というのが論の趣旨です。これはずっと長く考えてきたことで、こうやって世にでて本当によかったです。(反応はありませんでしたが。。。)
https://www.fujisan.co.jp/product/1281690228/b/1444374/
こちらの「チラ見」で冒頭部を読むことができます。

年度末には、科研の報告書に「生きた思想としての仏教と共生―『入菩薩行論』を中心に―」を執筆しました(『インド的共生思想の総合的研究―思想構造とその変容を巡って』白峰社)。
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB24682493
私の所属している研究所の創設者である故・中村元博士が東京大学の最終講義で「インド思想はエジプト思想か?」―古代エジプト文明は滅んでしまっているので、文献にたよるしかないが、現在も生きているインド思想の研究に、文献学は適切か?という問題提起をされたということを導入部に、文献学における仏教理解と伝統仏教の仏教理解が具体的にどう違うのかを、『入菩薩行論』を題材に論じたものです。『入菩薩行論』は、心の訓練のテキストなので、読み進めるに従って視点が変わり、はじめの頃に言っていたことと違うことを言うようになります。
これも長年考えてきたことなので、この2つが世に出た、ということは、自己満足かもしれませんが、本当によかったです。
これらが活字にならないまま死んでいたら、化けてでることになったかもしれません。

4月には、5年ぶりに横浜市・高明寺の現代仏教塾に招かれ、「チベットの浄土信仰」と題してお話しさせていただきました。
https://www.youtube.com/watch?v=HdQKKEyXWRc
https://www.youtube.com/watch?v=SE3bVsqmU2k
今年は、『空海に学ぶ仏教入門』という本を出したので、一部で真言宗の人間のように思われているようですが、家の宗派は実は浄土真宗ですし、個人的にも、仏様のなかでは阿弥陀さまにご縁があると思っています。
これまでも、『大法輪』2010年11月号に「道元・親鸞が見たもの (下)光明と空」という文章を書いたことがあります(ちなみに、10月号の(上)は、「面授と仏性」という内容でした)。
https://www.daihorin-kaku.com/book/b109628.html
峰島旭雄『浄土教の事典―法然・親鸞・一遍の世界』東京堂出版でも、「チベットの浄土教」と「日本の浄土教」の項目を担当しています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4490107951

「後ろから読む『教行信証』」という、変わった題の論文もありますが、これは当時考えていた長い親鸞論の出だしだった部分です(後半はおおきく端折っています)。(下記でダウンロードできます)
http://repository.meijigakuin.ac.jp/dspace/handle/10723/2405
親鸞と浄土信仰については、いずれまとまったものを書き上げたいと思っています。

秋には、『空海に学ぶ仏教入門』ちくま新書、が出ました。さいわい、好評で、すぐ増刷がきまり、大阪の真言宗のお寺でも、お話しさせていただく機会をいただくことができました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4480069968/
数年前、弘法大師の『秘蔵宝鑰』について、これは今読まれるべき本だ、と強く感じ、2015年のナマステインディアでの講演(於.東方学院セミナーハウス)でとりあげた後、慈母会館で約半年間勉強会をおこない、その内容をベースに、本にすることができました。
これは、私の名前で出てはいますが、実際には私の役割は通訳や解説者のようなもので、弘法大師の仏教理解を現代人にわかるように紹介したものです。
仏教は文字通り仏陀の教えですから、弘法大師が説かれる密教はもちろん、道元禅師の禅も親鸞聖人の他力念仏も、同じ仏教というものを前提として説かれていて、その前提箇所を知っていないと、密教のところだけ、禅や他力念仏のところだけ見ても、正しく理解することは容易ではありません。
仏教に関心のある方が、弘法大師の十住心を知れば、かならずや「あぁ、そういうことだったのか!」とうなづくところがあるに違いない、と思って、この本を書きました。
大阪の太融寺(嵯峨天皇の命で弘法大師が創建された古刹)での講演会も、多くの方に来ていただき、特に真言宗はもちろん、他宗派のお坊さまにも来ていただくことができたのは、うれしいことでした。

年末には『週刊 仏教タイムス』恒例の「仏教書・関連書 今年の3冊」を書くことができました。この手のものを書くのははじめての経験で、楽しみながら選ぶことができました。


短いものなので、自己満足でしかないかもしれませんが、「世界における仏教の今」という観点から、本を選んだつもりです。
今年は日本でもマインドフルネスが話題になりましたが、それは世界における仏教の実践面への関心があってのものなので、表面的なテクニックだけを取り入れても、一過性のブームで終わってしまうように思います。その背景、裏づけとなっている伝統的な仏教の教学と実践に目を向けてほしい、そういう思いで書きました。

来年は、もっと活動をひろげ、さまざまな面で充実した年にしたいと考えています。



Binder: ナーガールジュナ仏教研究所(日記数:92/全体に公開)
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