新電力とは⁉ 仕組みやメリットを徹底解説

「“新電力”という言葉を耳にするけど、そもそも何?」
「新電力に乗り換えるメリットって?」
「新電力ってどんな事業会社があるの?」

このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか?

こちらの記事では、新電力の概要や新電力のメリット、契約する際の注意点について紹介します。

テレビCMやネットニュースなどで、5年ほど前から見聞きするようになった新電力という言葉。新電力についての理解を深めることで、家族構成やライフスタイルに最適な電力会社を選択できます。

電力の新常識!? 注目を浴びる新電力とは?


「新電力」とは、2016年4月に開始された「電力の小売自由化」以降に電力販売事業へ新規で参入した電力会社を指す言葉です。

また、新電力は「特定規模電気事業者(PPS:Power Producer and Supplier)」と呼ばれています。

電力の小売自由化とは、経済産業省・資源エネルギー庁が電力の小売事業を自由化した政策です。この政策によって一般消費者は、電力会社を自分で選択することが可能になりました。

従来の電力の販売・購入は、全国に10社しかない*大手電力会社が市場を独占。また、一般消費者が購入できる電力は、各地域の電力会社からしか購入ができませんでした。

しかし、電力の小売自由化によってより多くの事業会社が、電力の販売事業に新規参入。新規事業者が市場に参入することで、消費者にとって適正な価格競争が促され、各新電力会社がバリエーション豊かな料金プランを発表しました。

その結果、消費者は家族構成やライフスタイルに最適な料金プランを選べるようになったのです。

*大手電力会社とは?
東京電力、関西電力、中部電力、東北電力、九州電力、中国電力、四国電力、北海道電力、北陸電力、沖縄電力

知っているようで知らなかった、新電力の電力供給の仕組みとは?

それでは、新電力はどのようにして一般家庭へ電力を供給しているのでしょうか? まずは電力供給の仕組みから確認しましょう!

電気供給,仕組み

電力は上記画像とよりお分かりいただけるように「発電部門」「送配電部門」「小売部門」の3部門を経由して一般家庭の元へ供給される仕組み。

新電力は、3部門のなかの小売部門に参入する形となりました。

発電部門では、水力発電、太陽光発電、風力発電などの発電所で電力を作ります。

発電部門で作られた電力は、送配電線を通して配送電部門の「一次発電所」「配電用変電所」に送電。送配電部門は、送配電ネットワークと呼ばれる送電線や配電線を管理しています。

家庭で使う電力は、送配電部門が管理している送電線・配電線を通じて供給されているのです。なお、送電される電力は、送配電部門によって供給される電力に偏りが生じないように管理。

送配電部門によって、消費者は供給のバランスが保たれた電力を安全に使用できます。

そして、消費者の電力供給と直接関わるのが小売部門です。消費者が選択する料金メニューや料金プランの設定、契約の手続きなどを担当しています。

新電力が供給する電力は、上述したように小売部門が販売を担当するため、電力供給の仕組みや電力の質はこれまでと変わりません。

新電力に新たに参入した事業者とは?大手通信会社やガス会社などが、続々参入

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電力販売の小売部門に参入した新電力ですが、どのような会社が挙げられるのでしょうか?(経済産業省・エネルギー庁の資料では、2021年4月7日の時点で計716社が新電力として参入)

新規の新電力は、通信業界から旅行事業・不動産業まで幅広い事業会社が参入しています。それでは、新電力の新規事業会社をみていきましょう!

通信産業

「通信産業」は、電力の供給と同じくインフラの一つです。通信産業に参入した会社のなかには、通信大手「SoftBank」「楽天」「KDDI」などが参入しています。

SoftBankやKDDIをはじめとした通信会社は、日本全国に多くの店舗を保有。そのため通信会社は、来店した顧客に電気料金プランと通信プランの両方を提案できます。通信産業は、店舗数の多さや料金プランの側面から電力の小売事業と親和性が高いといわれています。

会社名 サービス名 サービス内容
SoftBank ソフトバンクでんき 「おうちでんき」「くらしでんき」「自然で電気」の3つの電力サービスを提供しています。
通信サービス料金と電気代をセットにした料金プランを用意しているのもポイントです。
楽天 楽天でんき 「楽天でんき」は、電気代とガス代をまとめるサービスや楽天ポイントが付与されるサービスを提供。
貯まった楽天ポイントで、電気代を支払うことも可能です。
KDDI auでんき 「auでんき」は、auユーザーのための電力サービスです。
通信サービスの利用料金と電気代をまとめて支払うことが可能。初期費用や切替費用が発生しないのも特徴です。

エネルギー産業(石油会社・ガス会社)

石油会社、ガス会社のエネルギー産業に携わる業者も電力の小売事業に参入しました。

石油会社では「ENEOS」「コスモス石油」「昭和シェル石油」などの大手石油会社が参入。また、ガス会社では「東京ガス」「大阪ガス」「大東ガス株式会社」などの企業も、新電力として電力販売に携わっています。

石油会社

会社名 サービス名 サービス内容
ENEOS エネオスでんき 「エネオスでんき」は、自社で発電した電気を直接一般家庭に供給するサービスです。
ガス代と電気代のセット料金プランや電力のみの販売プランも提供しています。
コスモ石油 コスモでんき 「コスモでんき」は、「スタンダード」「ポイントプラス」「セレクト」「グリーン」の4つのプランを取り扱っています。
家族構成やライフスタイルに最適なプランを選択できるのもポイントです。
昭和シェル石油 家庭の電気 昭和シェルの電力供給サービスは、「Sプラン」「オール電化プラン」の料金プランを提供しています。
また、「カーオプション」を追加するとガソリン代が、1ヶ月に100Lまで1L/2円の割引が適用されるのも特徴です。

ガス会社

会社名 サービス名 サービス内容
東京ガス ずっとも電気 東京ガスの「ずっとも電気」なら、新規で契約された方の基本料金が3ヶ月無料になります。
また、「パッチョポイント」を貯められるのも特徴。貯めたポイントは、1ポイント1円から利用可能です。
大阪ガス 大阪ガスの電気 大阪ガスが提供する「大阪ガスの電気」は、大阪を中心に約200拠点のガス屋やコールセンターと連携した地域密着型の手厚いサポート体勢が特徴。
また15年以上にわたる電力の販売実績も、安心できるポイントです。

再生可能エネルギー産業

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再生可能エネルギー(水力発電、地熱発電、太陽光発電、風力発電など)事業に取り組む会社も、電力の販売事業に参入しました。

例えば、「自然電力株式会社」の「自然電力のでんき」や「株式会社ボーダレス・ジャパン」が提供する「ハチドリ電力」は、再生可能エネルギーを積極的に活用した電力の供給をおこなっています。

会社名 サービス名 サービス内容
自然電力株式会社 自然電力のでんき 「自然電力のでんき」は、「SE100」「SE30」「SE debut」の3つのプランを提供しています。発電方法は、再生可能エネルギーである水力、太陽光、風力を利用。CO2の排出を抑えて、自然環境へ配慮した電力供給をおこなっています。
株式会社ボーダレス・ジャパン ハチドリ電力 「ハチドリ」電力は、自然エネルギーを100%使用した発電・電力販売をおこなっています。また、電気代の1%を社会貢献活動に寄付できるのもポイントです。

≫参考記事:「自然電力のでんきは一人暮らしにおすすめ!電気代を抑えてCO2削減にも貢献」

その他の産業(旅行事業、不動産業)

旅行業や不動産業など幅広い業種が、電力の小売事業に参入しました。

旅行事業では「株式会社エイチ・アイ・エス」のグループ会社である「HTBエナジー株式会社」が提供する「HISでんき」が存在。

また、「東急グループ」の「東急パワーサプライ」は、「東急でんき&ガス」という電力とガスのセットプランを販売しています。

会社名 サービス名 サービス内容
株式会社エイチ・アイ・エス HISでんき 「HISでんき」は、「ウルトラプラン」「プライムプラン」「ママトクプラン」の3つの電力プランを提供しています。大手電力と比べると料金単価・基本料金が安いのも特徴です。
東急パワーサプライ(東急グループ) 東急でんき&ガス 東急グループの「東急パワーサプライ」が、提供する「東急でんき&ガス」は東急グループ・東急線沿線と連携したサービスを用意。定期代がお得に購入できたり、「TOKYU CARD」のポイントも貯めれたりするのも可能です。

新電力ごとにバリエーション豊かなサービスを提供していますが、電気代は大手電力会社よりも安いのでしょうか? 次の章では、新電力の電気代について紹介していきます。

新電力が安い理由とは?

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結論からお伝えすると大手電力会社から新電力へ乗り換えることで、電気代を安くできる可能性が高くなります。

それではなぜ新電力のほうが、従来の電力会社よりも安く電力を販売できるのでしょうか?

その理由は、大きく分けると下記の3点です。

消費者のニーズに合わせた料金設定 各新電力が、独自の料金プランをターゲットとなる消費者に提供しています。利用者は、家族構成やライフスタイルに最適な料金プランを選びやすくなるので、電気代のコストカットが実現可能です。
設備に関するコストの削減 新電力は、コストを抑えることで料金プランを大手の電力会社よりも安く設定できます。新電力は、大手電力会社のような大規模な設備ではなく、小規模な設備を利用し電力を供給。そのため、設備の維持費、管理費、人件費などのコストを抑えられます。
電力販売以外の収益 大手電力会社の主な収益は、電力販売です。一方で新電力会社は、電力の販売事業以外にメインの売上となる事業をおこなっているケースがあります。電力事業の利益が低くても、メインとなる事業で利益を出せるため、電気代を安く設定できるのです。

新電力のメリットとは?電気代のコストカットにつながるの?

メリット1:電気代が料金プランによって安くなる

上述したように新電力のメリットは、契約する料金プランによっては電気代を現在よりも安くできます。

各新電力会社は、消費者が大手電力会社から新電力へ契約を切り替えることで、顧客を増やす必要があるのです。

多種多様なキャンペーンや細やかな料金プランを提供し、大手電力会社よりも安く電力を利用できます。

メリット2:セット割り引きのプランを利用できる

新電力の料金プランには、ガス代、携帯電話・スマートフォンなどの利用料金をセットにした料金プランがあります。

電気代と一緒にその他のサービスを契約することで、全体の料金が安くなったり、各サービスのポイントが付与されたりするのも特徴です。

例えば、auでんきでは、「Pontaポイント(Ponta提携のサービス・店舗利用でポイントを貯めて使えるサービス)」が毎月付与。ポイントの還元率が毎月の電気料金に応じて最大5%になるので、効率的にポイントを貯められます。

メリット3:地球環境へ配慮した電力の供給ができる

新電力には、*再生可能エネルギーを採用した発電方法も多く存在します。

再生可能エネルギーは、CO2の排出量を抑えて電気を発電できる特徴があるのです。

このような地球環境へ配慮した発電方法は、「*脱炭素社会」の実現に向けた重要な取り組みとなっています。

新電力を選ぶ際には、発電方法や地球環境への配慮に考慮して選択するのもオススメです。

*再生可能エネルギー
「再生可能エネルギー」とは、水力・太陽光・風力・地熱・バイオマスと呼ばれる自然のエネルギーです。再生可能エネルギーは、温室効果ガスの排出を抑え、国内でのエネルギー生産が可能です。
*脱炭素社会
「脱炭素社会」とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量をゼロにする社会を指す言葉です。脱炭素は「カーボンニュートラル」とも呼ばれており、地球環境を守るうえで大切な取り組みとなっています。

事前に知りたい、新電力を契約する際の注意点とは?

新電力を契約する際の注意点
上述したように新電力には、多くのメリットがあります。しかし、契約前に前もって抑えておくべき注意点もあるので確認していきましょう。

注意点1:切り替えの手続きが必要になる

新電力を契約する際には、既存で契約をしている電力会社からの切り替え手続きが必要になります。

また、自分が契約する料金プランの契約内容を把握するのも必要不可欠。

例えば、「日本卸電力取引所(JEPX)」の取引価格が、電気代に影響する「市場連動型」の場合には市場相場で電気代が変動します。

契約内容の確認とあわせて、電気料金のシミュレーターを使い電気代がいくら安くなるのかをチェックしましょう。電気料金のシミュレーターは、契約を希望する新電力のホームページに設置されている場合があります。

注意点2:住居によっては、新電力のサービスを契約できない可能性がある

マンションやアパートなどの賃貸物件の場合には、契約を希望する新電力のサービスを利用できないケースがあります。

例えば、大家さんや管理人が、契約を結んでいる電力会社に直接電気代を支払っている場合です。

また、お住まいの物件が「*高圧一括受電契約」を採用していると、新電力に切り替えができません。世帯主が、個人で電力会社と契約を結べるかどうかを管理会社に確認しましょう。

「*高圧一括受電契約」は、オーナーや家主が変圧器を管理し料金の安い高圧電力を契約する契約方法。

注意点3:解約金や違約金が発生するケースがある

新電力の料金プランには、契約年数の規定が定められているケースがあります。

契約期間中に他の電力会社へ切り替えることで、解約金や違約金が発生するリスクがあるのです。新電力を契約する前に契約期間の制限があるかどうか、解約金や違約金が発生するかどうかを事前に調べておくのをオススメします。

新電力の仕組みを理解して、最適な新電力を選択しましょう!


今回は新電力の概要やメリット、契約する際の注意点などを紹介してきました。ここでお伝えしたことをまとめると以下の通りです。

  • ・新電力とは、「電力の小売全面自由化」以降に電力販売事業へ新規参入した電力会社。特定規模電気事業者(PPS:Power Producer and Supplier)や新電力会社と呼ばれている。
  • ・経済産業省・資源エネルギー庁が2016年4月から「電力の小売全面自由化」と呼ばれる政策を開始し電力の小売全面自由化が実現。
  • ・新電力へ参入した会社は、通信産業、エネルギー産業、旅行産業・不動産業など幅広い事業が参入。
  • ・新電力と大手の電力会社と比較した場合、料金プランによっては新電力へ切り替えた方が電気代のコストカットにつながる。
  • ・住宅の仕様や契約している電力プランによっては、新電力への切り替えができないケースが存在する。また契約者が、既存の電力プランを契約期間内に解約すると違約金や契約金が発生する料金プランもある。

2016年4月にスタートした電力の小売全面自由化以降、自分で使う電力は、大手電力会社に限らず自分で選べる時代となりました。

新電力に関する正しい知識を学び、ライフスタイルに最適な電力プランを選びましょう。