umasica :桜里さんのマイページ

やなぎみわ マイ・グランドマザーズ

2009/05/05 22:24

今夜も、映画『靖国』の話題を続けるつもりだったのだが、それは明日にして、今日のことを書いておきたい。

 
 
 

体調回復した娘も一緒に、雨の中、東京都写真美術館まで出かけた。

目的は、

「夜明け前 知られざる日本写真開拓史? 中部・近畿・中国地方編」 

「やなぎみわ マイ・グランドマザーズ」

の二つの展覧会。

 

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まず3階展示室の「夜明け前」から。

 

タイトル通りの内容である。幕末から明治中期くらいまでの写真と撮影具(つまりカメラ)の展示。

これが面白い。堆朱仕上げのカメラなんて、工芸品である。しかもセッティングのお陰で、カメラボックス内のピント面の画像(もちろん反転している)を見ることが出来る。

露光に時間がかかるから、撮影とは、写真家にもモデルにも「忍耐」であったろう。

そんな時代の写真を見て来たわけだ。

 

肖像写真というジャンルは、そのような写真家とモデルの共同作業の産物なのであった。もっとも、それまでに存在したのは肖像画であり、そもそもモデルは絵描きを前に、じっと我慢を強いられていたわけだ。と言っても、日本に肖像画の伝統があったわけでもない(支配階層のトップ以外に)。

やはり、カメラの前でじっと時を過ごすというのは、この時代の人間達が初めて経験する時間のあり方だっただろう。しかもその結果、鏡を見る以外に手段のなかった自分の姿との対峙を経験することになる。初期の写真のポーズのぎこちなさを支えているのは、写真家にとってもモデルにとっても未経験の世界であったという事実だろう。

 

そんな写真を見ながら考えたのは、ここに写されているすべての人間が、老いも若きも、男も女も、みんなとっくに死んでいるのだ、ということだった。

そこには、赤ん坊もいれば老人もいた。その時点での年齢差も記録されている。しかし、その時点での年齢差を越えて時は流れ、皆が既に亡き人になっているのである。

実は先日、ジガ・ヴェルトフの1929年のフィルムである『カメラを持った男』のDVDを観ていて、サイレント映像(DVDではマイケル・ナイマンの曲が付けられているが)の中に生き生きとした姿を残した人々の全員が故人となっているのだろうな、なんてことを考えてしまったのだった。

スチールとムービーの違いはあるが、過ぎ去った出来事が、過ぎ去ってしまった人々の存在が、記録として残されていることの意味、と言うより残されてしまったことが生み出してしまう意味を考えてしまうわけだろう。

 

残された写真を通して、映画を通して、過去に生きた見ず知らずの人々を、見知ることになるわけだ。写真以前、映画以前の世界では想像もつかぬ経験を、私達はしていることになる。

 

その上で、おびただしい死者そのものの姿を記録として残したのが20世紀であった。見ず知らずの人々の死体となった姿を見知るという経験。21世紀に、何か変化はあるだろうか、ありうるものだろうか?

 
 

 

2階展示室の「やなぎみわ マイ・グランドマザーズ」は、作られた写真である。

 

チラシの文面には、

 

 このシリーズは、若い女性が思い描く50年後の自分の姿を作り上げたものです。背景、服装、表情にいたるまで、作家と被写体が対話を繰り返しながら生み出した作品には、現実と想像が織りなす濃密な時間が流れています。本展で初公開となる新作も展示します。様々なグランドマザーとの対話をお楽しみください。 

 

と書かれている。

被写体(モデル)は、皆、年老いた女性の姿だ。やなぎみわにとっての想像上のグランドマザー、あるいはグランドマザーとなった想像上のやなぎみわ? そして、モデルそれぞれのグランドマザー、あるいはグランドマザーとしてのモデル。

それぞれの写真自体が力強く、それだけで存在感があるのだが、そこに付けられたキャプションを読むと、それぞれの写真にはストーリーも用意されていることがわかる。それぞれが、ある物語性を秘めた時間を定着したものであることが観る側にも理解される。写真自体の力に加えての物語性。

その上で、観客としては、それぞれの撮影の状況などまで想像してしまう。

一枚の写真がそれだけで語ってしまうこと。そこに、写真家側が用意した物語性を重ね、観る側の勝手な想像までが重ねられる。

写真を見ることとは、そのような出来事であり得るのだ。

 

ところで、このような完全に作り上げられた写真こそが、写真の歴史の初期を特徴付けるものでもあった。

まず写真は絵画の代替物として登場したのである。しかも、長時間露光の必要は、現在の写真へのイメージの根底にある「瞬間の切り取り」を不可能事としてしまう。

やなぎみわによる、写真の最新の姿には、写真の歴史も埋め込まれているのだ(というのももちろん、観る側の勝手の想像の一例であるわけだが)。そんな想像力が、3階と2階の展示を結び付けてしまったわけだ。

 

いずれにしても、見知らぬグランドマザーが、見知ったグランドマザーへと転換され、やなぎみわの伝える物語は、見た者それぞれの物語へ織り込まれていくのである。

 
 
 
 
 
 


Binder: 桜里の休日(日記数:321/全体に公開)
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最新コメント

  • Comment : 1
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2009/05/06 03:58
    「写真写り」が良い悪い、というのがありますよね。第三者に写された自分の写真が「変だ!」、「写りが悪い」てなヤツ‥。
    大昔ならば、そんな要素がさらにあったはずですね。
    現在、我々が思い描く過去の「偉人」たち、しかも「写真」でその姿が記録されている人物像。
    実は微妙に違っていたりするかもしれませんよね。
    例えば、「坂元龍馬」
    格好つけたポーズで「決まった!」てな雰囲気がありありで‥。

  • Comment : 2
    Smith
    Smithさん
     2009/05/06 12:55
    そうですね。

  • Comment : 3
    Smith
    Smithさん
     2009/05/06 13:33
    「このリンクは無効です」の表示が出て、アクセス不能になる。 

    「ど〜すりゃ、い〜いの〜さ。思〜い案〜ん橋〜。」

  • Comment : 4
    umasica :桜里
     2009/05/06 14:38
    Mr.Dark 様


    >「写真写り」が良い悪い、というのがありますよね。第三者に写された…


    写真は、「真」を「写す」というのは本当か??


    多木浩二『肖像写真』(岩波新書 2007)がオススメです。

  • Comment : 5
    umasica :桜里
     2009/05/06 14:39
    >「このリンクは無効です」の表示が出て、アクセス不能になる。 
    >「ど〜すりゃ、い〜いの〜さ。思〜い案〜ん橋〜。」

    大人しくしてろ。

  • Comment : 6
    Smith
    Smithさん
     2009/05/06 15:22
    なんだか知らん、どエライ問題を抱えちゃったヨ。やはり「業者」か。

    こんな重大局面で大人しくして等いられるもんかい。あぁ、困った!!

    「freeml」のリンクが無効になり、ログイン出来ない状況にあるんだ。

    たちまち「このリンクは無効です」になってしまう。「ど〜すりゃ…。

  • Comment : 7
    umasica :桜里
     2009/05/06 15:28
    >「freeml」のリンクが無効になり、ログイン出来ない状況にあるんだ。
    >たちまち「このリンクは無効です」になってしまう。「ど〜すりゃ…。


    「freeml」の方のシステムの不具合なので、処置なし。
    (連休で担当者も休みだろ、多分)

    散歩でもしてろ、と言いたいが雨だな。

  • Comment : 8
    Smith
    Smithさん
     2009/05/06 16:20
    まさか「スミス」の差し金じゃあるまいな。実際やりかねない男だヨ。

    奴ッコさん「私」が悩み困り果てるのを、楽しみにしている様だから。

    次々と「トラブル」は雪ダルマ式に膨れ上がって、手が付けられない。

    切りもなく新しい「ID」と「パスワード」とを、要求されて仕舞う。

    この滅茶苦茶な「システム」を考え付いたのは、一体どこの誰サンだ。

  • Comment : 9
    umasica :桜里
     2009/05/06 16:23
    >切りもなく新しい「ID」と「パスワード」とを、要求されて仕舞う。
    >この滅茶苦茶な「システム」を考え付いたのは、一体どこの誰サンだ。


    だから、「freeml」のシステムの不具合だ、って言ってるの。

    連休最終日で、暇人のアクセス数が多いんだろ、多分。
    で、エラー発生というだけの話。

    スミス氏は無関係だよ。
    とにかくこれは、パソコンの不具合じゃないってこと。

  • Comment : 10
    Smith
    Smithさん
     2009/05/06 16:46
    そうか、安心した。だが「私」は気の向く間々、あちこちイジクッた。

    解らないものを、ますます解らなく変えてしまった。そのツケを後で

    払わなければならないだろう。あぁどうしよう。「業者」も怒るかも。

  • Comment : 11
    umasica :桜里
     2009/05/06 16:50
    >あぁどうしよう。「業者」も怒るかも。


    十二分な報酬を用意しておくんだな。
    そうすれば、むしろ、いいお客さんだ。

  • Comment : 12
    Smith
    Smithさん
     2009/05/06 17:13
    それがその〜「業者」は本屋を経営していて「二股操業」なんだヨ。

    それを呼び付けて、わざわざ足を運ばせるってのも所詮ムリな話だ。

    一回について五千円取られる。年中から財政難な「私」にとっては、

    厳しい支出だ。それでも十分と云えるのかは疑問だし「彼」も嫌う

    様なパソコン虐待者である「私」は、金の問題だけで済まない様だ。

  • Comment : 13
    umasica :桜里
     2009/05/06 17:59
    >一回について五千円取られる。

    安い!!

  • Comment : 14
    Smith
    Smithさん
     2009/05/06 18:20
    やはり安かったのか…。「万札」を出さなきゃ、イケなかったんだな。

    そうか、なるほどそれはそうだ。今後は考え直して倍額を出す事に…。

    しっかし、その「業界」では五千円は「はした金」でしかないのかい。

    驚いた。常識的に考えてオツリが来るもの、とばかり思い込んでいた。

  • Comment : 15
    umasica :桜里
     2009/05/06 21:07
    >やはり安かったのか…。「万札」を出さなきゃ、イケなかったんだな。

    相場は知らないけど、
    パソコンの設定頼んで8000円だった、という話は聞いたことがある。
     (このケース、販売店の派遣なのでサービス値段だと思うが)

    技術料+交通費+所要時間(往復時間も含む)、って感じ?
    移動中は他の仕事が出来ないわけだろ?
    1ヶ所5000円じゃ、あまり稼げそうもないが…

    まぁ、業者がそれでいいと言うなら問題はないだろうけどね。

  • Comment : 16
    Smith
    Smithさん
     2009/05/06 21:37
    「このリンクは無効です」騒ぎは、明朝には完全に解決されてるかな。

    「コメント」だって書き込めない事態だ。この「話」は尋常ではない。

    「freeml」システムへの信頼性が損なわれる。早く修復される様祈る。

    「業者」は至って気の良い男だ。まずは相談に誠実に乗ってくれるヨ。

    さて、この「コメント」果たしてうまく書き込み出来るか、疑わしい。

    やはり「このリンクは無効です」となって御仕舞いではないのかネェ。

  • Comment : 17
    Smith
    Smithさん
     2009/05/06 22:03
    どうやら書き込めたが、もう時間がないな。今日は収穫が少なかった。

    明日は「大宮厚生病院」だ。早目に眠らなきゃな。後、5分の猶予だ。

    又しても深夜の「徘徊」老人と成り果てて、暴れマクルのだが無念で

    ならない。あぁ、オヤジの奴もう急かしてる。じゃ「病院」で会おう。

    しかし「皆さん」とどうか「接触」出来ないかネ。「私」は楽しみだ。

  • Comment : 18
    umasica :桜里
     2009/05/07 01:15
    >しかし「皆さん」とどうか「接触」出来ないかネ。「私」は楽しみだ。


    残念ながら、みんな仕事だと思う。

    それに、大宮はウチからは遠いぞ。

    まぁ、外出はいいことだと思う。
    通院も大事な気分転換になるんじゃないかな。
    とにかく、これからは散歩の楽しみを味わって欲しい。
    実際、散歩にいい季節だ。

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