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「民族」

2016/06/22 22:26

以前の記事、「「民族」としての「沖縄の人々」 (琉球國の「独立」と伊江朝直 9)」への「註」とその「補註」として追記した内容をここにも記録保存。





【註:1】
 言うまでもない話だとは思うが念のために付け加えておくと、琉球人は単に文化的レベルで和人と異なるだけの存在ではない。
 (既に示したように)琉球人は和人とは異なる政治共同体(すなわち琉球國である)に属していたのであり、和人とは異なる政治的一体性の歴史を持った存在なのである。同時に琉球國の国家領域の住民(すなわち琉球人)は、血縁関係においても「本土」の「和人」とは隔たりある存在であった(琉球人と和人は異なる通婚圏の中に生きていたのである)。
 すなわち、琉球人と和人の間には、政治的にも文化的にも血縁的にも境界が存在し、政治的にも文化的にも血縁的にも、「和人」とは異なる世界に属していたのが「琉球人」なのであって、そこに「民族」というレベルでの「違い」を見出すこと自体は理に適った話なのである(「補註:1」及び「補註:2」)。
 もちろん、民族の相違は当事者の帰属意識が決定する問題であるし、民族の相違の自覚を国家としての独立(琉球―沖縄の日本からの独立)に直結させる必要もない。複数の民族が権利において平等である国家を追求するという選択もあり得るのである。いずれにせよ、決定の当事者は、あくまでも琉球人(沖縄の人々)でなくてはならない。
          (追記:2016/06/19)


 〔補註:1〕
 ここでは、20世紀に大きな影響力を発揮したスターリンによる「民族」の定義を参照しておこう。
 スターリンは、『マルクス主義と民族問題』(1913)の中で、民族(ナーチア)を、


  言語、地域、経済生活、および文化の共通性のうちにあらわれる心理状態、の共通性を基礎として生じたところの、歴史的に構成された、人間の堅固な共同体


…と定義した。
 この定義の妥当性についての議論は避けるが、この定義は社会主義的な民族解放論を支えたと同時に、行政実務的な意味で、多民族により構成された社会主義国家としてのソ連の国内民族政策の理論的枠組みとしても機能しただけでなく、更に社会主義イデオロギーとしての役割を超えて、20世紀の民族をめぐる議論(民族自決原則の適用対象としての資格問題)に大きな影響を与えたものでもある。
 ここで注目しておきたいのは、スターリンが「民族」の条件とした「言語、地域、経済生活、および文化の共通性」のすべてにおいて、琉球國(琉球人)は日本(和人)に対し独自性を保ち続けたと言い得る点である(これまでに論じなかった「経済生活」についても、琉球國は日本と異なる通貨体系を採用していた―すなわち異なる経済圏の中にあった―事実は覚えておいてよい)。
          (追記:2016/06/22)


 〔補註:2〕
 日本語の「民族」は、「ネーション(nation)」の訳語として用いられると同時に、「エトノス(ethnos)」の訳語としても用いられるが、両者は語源を異にしニュアンスを異にする概念である。
 後者については特に「エスニック・グループ(ethnic group)」という言い方もされるが、(語源的問題―そしてそれは概念の本質的問題でもあるのだが―を別にすれば)両者の相違点としては、前者では対象となる人々の集団が政治的共同体としての機能をも果たしていたのか否か、政治的権利主体として自覚的に振る舞った歴史を有するのか否か、より具体的には(あるいはより単純化された文脈では)国家形成を志向した歴史の有無が問題とされるのに対し、後者ではその点が要件とされることはない(その意味で、後者より前者の方がハードルが高い)。
 誰が「民族自決権」を持つのかが問題となる文脈(民族自決原則の適用対象としての資格問題)では、後者(「ネーション」ではなく「エスニック・グループ」と位置付けられる人々)を民族自決権を持つ主体として取り扱わないことで、既存の国家(国内に少数民族問題を抱える国家)は自国内の民族問題を処理し、国家の分裂(複数の民族国家への分裂)としての帰結を避けようとする傾向がある。
 しかし、いずれにせよ、琉球人は琉球國という形で国家形成をした歴史を持つのであり、「民族」の定義としてハードルの高い「ネーション」概念からしても、琉球人を和人と異なる民族集団として見做すことは可能だということ、「沖縄の人々」を独立した「民族」として取り扱うことが決して不適切ではないということは再確認しておきたい。
          (追記:2016/06/22)
 

















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