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トラバント

2008/05/04 21:03

国が消える、ということがある。



1990年前後の東欧圏では、確かに、国が消えた。


かつてのソ連邦は、存在しない。東ドイツ、正確に言えば、かつてのドイツ民主共和国も消えてしまった。


独立国家としてのチベットは、現在では存在しないし、大日本帝國もない。



国家ほど確固とした存在はない、ように思えるが、そうでもない、らしい。


まぁ、消滅の理由は様々だ。


チベットは、隣の強国による侵略併合の結果、国家としての独立を失ってしまった。

大韓帝国もまた、かつての大日本帝國により、その独立を失った国家だ。

その大日本帝國は、「自存自衛」のための戦争の結果、滅亡した。これは自滅と考えられるべきだろうか。

ドイツ民主共和国も、ソ連邦も、「自滅」仲間と言えるかも知れない。



自滅国家の共通項は何だろうか?


共通して起きた事態は、強権的な政府による支配であり、その下での言論表現への抑圧だろう。

政治的権力の掌握者に対する、国民の批判は封じられていた。

そこには秘密警察が存在し、密告が奨励されていた。


言論表現の世界からは、批判精神が排除され、現状への礼賛だけが繰り返された。

批判にさらされることのない権力は腐敗する。

政治権力者の恣意が、まかり通ることになる。


国民にとっての現実の問題は、時には存在しないことにされてしまう。

国民の利益、国民の生活や財産が、国家によって侵される事態さえ生じてしまう。

しかし、、言論表現の自由が抑圧された体制の下では、そのことを指摘すること自体が、同僚からの密告の対象となり、秘密警察に逮捕され、市民生活を奪われ、強制収容所送りとなり、あるいは公開裁判の果ての処刑さえ覚悟しなければならないことを意味する。

結果として、国民の利益を増進するはずの国家により、国民の利益が損なわれ続けることになる。


現実には、書類上でのみ、国家の躍進が存在するような事態に立ち至る。


その果てに、ドイツ民主共和国は、地図の上から消えてしまった。建国40周年式典から間もない話だ。

40年式典の壇上の誰が、そのような事態を想像していたのだろうか?

式典では、国家の輝かしい未来が約束されていたはずだ。




ところで…


1983年型600ccトラバントP601L



…トラバントをご存知だろうか?

東独、ドイツ民主共和国を代表する小型車だ。

1989年の夏、亡命希望者を乗せた、ハンガリー経由で西独へと向かう大量のトラバントの映像は、記憶から消えない。


1950年代の末に生産が始まり、ドイツ民主共和国が地上から消えるまで、大きなモデルチェンジもなく、その生産は続けられた。

現実には、東独時代の末期の車体のボディーの素材は、むしろ粗悪になったと言われているくらいだ。

エンジンもまた、排ガスで悪名高いものとなって久しかったが、何の改善策もないままに、その生産の終了を迎えることになる。


…なんて書いてしまうと、トラバントへの悪口で終わってしまう。

実は、トラバントのデザインは好きなのである。

かわいいクルマだ。


実は、連休ではあるけれど、娘の体調悪く、家で過ごすことになった。

画像サイトを覗いていたら、トラバントの画像が多くあることを発見した。お仲間はいるものだ。

トラバントの話を書くつもりが、長い前置きとなってしまった、というわけだ。



参考までに 

→ Vintage 1960's East German Trabant Car Commercial (http://jp.youtube.com/watch?v=MQwj0EqOQJw&feature=related

→ Trabant 50 years tribute video (http://jp.youtube.com/watch?v=8sGgzUUGaaQ&feature=related

→ The opening of the Wall at Berlin Bornholmer Strasse 1989 (http://jp.youtube.com/watch?v=1_eCVhCGYwE&feature=related

→ ウィキペディア(Wikipedia) : トラバント (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%88


Binder: 現代史のトラウマ(日記数:696/全体に公開)
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最新コメント

  • Comment : 1
    Mr.Dark
    Mr.Darkさん
     2008/05/04 23:11
    “トラバント”は基本性能が悪すぎます。
    車を真剣に考えるひとからすれば、それは、あまりにも酷すぎるブッタイにすぎません。
    では、BMWやベンツと、どれくらいちがうのか‥

  • Comment : 2
    たぬき男いたち男
     2008/05/05 08:08
    「トラバント」は「木」と「ダンボール」で出来てる:と云う話
    は聞いた事がある。かつてのドイツ大帝国の象徴として呼ばれた
    「フォルクスワーゲン」とは雲泥の差があるが、それだけ国家が
    窮乏していた:と云う事なんだろう。厳しい状況だったのだ。

  • Comment : 3
    nadja
    nadjaさん
     2008/05/06 00:26
    トラバントのデザイン、私も好きでした。統一直後のベルリンで、手入れの行き届いたBMWやベンツに混じって、凹み疵だらけのトラバント(やっぱりダンボール製?)が、今にも止まりそうな風情で走っていたのをよく憶えています。今年の冬数年ぶりでドイツに行きましたが、トラバントは一台も見かけませんでした。

  • Comment : 4
    s06007
    s06007さん
     2008/05/06 08:37
    トラバントははじめて知りました。
    東欧の自動車には関心がありませんでしたね。
    日本のダ○ハツのミゼットに雰囲気が似ている様な気がします。戦後まもなくの車だったと思います。

    それにしても国家の滅亡の共通項としての言論表現の抑圧は示唆深いですね。だいぶ前に幕末を材料にした時代小説などを読んでいて想うのですが江戸幕府の終焉においても行き過ぎた諜報国家ぶりがいろんな人々の不幸を招いているなと感じました。逆にオープンというのは我々が思う以上にかなり重要なことなのかもしれませんね。

  • Comment : 5
    umasica :桜里
     2008/05/06 09:44
    Mr.Dark 様


    「社会主義」というのは、「未来」「科学」「進歩」なんて言葉と共にあったものだったはずなのですが…
    技術の停滞の象徴になってしまいました(どこで間違えたのか?)。


    ところで、トラバント。
    構造がシンプルなので、レストアのお楽しみの対象としては人気車種でもあるようで…

    チューンナップヴァージョンも発見
    → Rover V8-powered Trabant (http://jp.youtube.com/watch?v=AMfD3WKr6BI&feature=related
    → TRABANT GTI (http://jp.youtube.com/watch?v=CxMb3Y4t5hw&feature=related

  • Comment : 6
    umasica :桜里
     2008/05/06 09:49
    たぬき男いたち男様


    ウィキペディアによれば、

    「ボール紙のボディの車」といわれることがあるが、実際は長いモデルライフを通じて、ボディの基本材料は繊維強化プラスチック(FRP)である。東ドイツ末期に製造品質が下がってくると表面の質感がボール紙のように見えた事から、低い仕上げ品質を揶揄した表現である。ただし、末期は製造コスト低減のため、実際にプラスチックに紙パルプを混ぜ込んでいた。

    …ということらしい。
    プラスチックに紙パルプ混入!!
    ワーゲンのビートルの方は、品質低下はなかったからねぇ…

  • Comment : 7
    umasica :桜里
     2008/05/06 09:56
    nadja 様


    それでも、ファンはいるようで…

    → Trabi meeting Zelivka 2007 (http://jp.youtube.com/watch?v=7-vnbg_t4Co&feature=related
    → Příhrazy 2007 (http://jp.youtube.com/watch?v=aWzYdSGYYKI&feature=related

  • Comment : 8
    umasica :桜里
     2008/05/06 10:06
    s06007様


    ダイハツの「コンパーノ」のデザインに共通するものがある気もしますね。

    → ダイハツ・コンパーノ (http://www.asahi-net.or.jp/~rf7k-inue/izen/no-4/compano/compano.html



    国民の口を封じるところから、国家の活力が失われ、最後には国が滅びる、という感じがします。
    とにかく、トラバント、そんな世界の象徴でもありますね。
    1980年代末期に、突然あのデザイン(そしてあの性能)を目にしたときの驚きは大きなものでした。

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