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松本たかしの『日本新名勝俳句』など(一)

投稿者:nangouanさん  2008/07/23 10:48  MLNo.1172   [メール表示]


○ 山越えて伊豆へ来にけり花杏子 

 松本たかしの、昭和六年刊行の『日本新名勝俳句』(高浜虚子選)の「帝国風景院賞」に輝いた句である。そのときの応募投句数は十万三千二百七句、入選作は一万句、さらにその中の「帝国風景院賞」(「優秀句・金牌賞」の百三十三句のうちの最優秀句)を射止めたものが二十句で、この句は、その二十句のうちの一句ということになる。
 「日本新名勝」の百三十三景のうちの「温泉」の部の「熱海温泉」の句である。「熱海温泉」の句というよりも「伊豆・天城山」の句という感じでなくもない。川端康成の名作「伊豆の踊子」は、昭和元年(一九二六)の作。上五の「山越えて」も、「伊豆へ来にけり」も、そして、下五の季語が、「花杏」の措辞ではなく「花杏子」というのも、どことなく、康成の「伊豆の踊子」を連想させる。
「たかし」は、明治三十九年(一九〇六)生れ、昭和三十一年(一九五六)没。東京都神田猿楽町出身で神奈川県鎌倉市浄明寺に住んでいた事もある。高浜虚子に師事し、「ホトトギス」の同人となる。能役者の名家に生まれたが、病身のため能役者を断念。平明な言葉で、気品に富む美しい句を残した。昭和二十八年(一九五三)、第五回読売文学賞の詩歌俳句賞を『石魂』で受賞。弟に能楽師の松本惠雄(人間国宝)。


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