俳諧鑑賞広場

メールの詳細(トピック表示)

「たかし楽土」の世界(その二)

投稿者:nangouanさん  2008/07/24 09:01  MLNo.1173   [メール表示]

「たかし楽土」の世界(その二)

○ 温泉(ゆ)煙のまた濃くなりし椿かな

 この句も、『日本新名勝俳句』の「温泉」の部の「熱海温泉」の句で、こちらは入選句である。とりたてて、熱海温泉での句というよりも、とある温泉に浸りながら印象鮮明な椿の花を見たという句であろうか。たかしは、川端茅舎とともに、「四S」(秋桜子・誓子・青畝・素十)以後の「ホトトギス」を背負う俳人と称されるが、この二人は、確かに、「四S」の俳人達とは異質の世界での、いわば、茅舎が「茅舎浄土」(穢れのない美的世界)とするならば、たかしは「たかし楽土」(夢幻の感覚的な美的世界)という印象を深くするが、この句の、この感覚的に鋭い椿の把握は、その後の「たかし楽土」の世界の片鱗を垣間見せてくれる思いを深くする。
 虚子は、和三年(一九二八)四月に、大阪毎日新聞社講演で始めて、「花鳥諷詠」ということを提唱して、爾来、亡くなる昭和三十四年(一九五九)まで、「俳句は花鳥諷詠詩」ということの提唱とその実践をし続けてきた俳人であるが、虚子が胸中に抱いて「花鳥諷詠」の世界というのは、いわゆる、「四S」の世界のものではなく、茅舎の「茅舎浄土」(穢れのない美的世界)、そして、たかしの「たかし楽土」(夢幻の感覚的な美的世界)に、より近いものだったのではなかろうか。


このエントリーをはてなブックマークに追加

メールへの返信はMLのメンバーしかできません。

更新順メールリスト