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「たかし楽土」の世界(その三)

投稿者:nangouanさん  2008/07/25 09:52  MLNo.1174   [メール表示]

○ チチポポと鼓打たふよ花月夜

 昭和十三年(一九三八)の作。たかしは宝生流能役者松本長(ながし)の長男。松本家は代々幕府に仕える能役者の名門である。たかしは大正三年(一九一四)、九歳のとき初舞台を踏んだという。その舞台稽古をつけてくれた方は、宝生流の家元、宝生九郎という。そして、能の稽古一筋に歩み、中等教育は全て私塾に通って習得したという。十五歳の頃、身体に異変を感じ、「肺炎カタル」ということで、専心療養の途につく。そして、父の手引きで、大正七年(一九二二)、十七歳の頃、高浜虚子の門に入り、「ホトトギス」に投句するようになる。たかしは、将来を能役者の道ではなく、俳人の道へと歩むこととなる。しかし、その胸中には、能役者の松本家の思いがたぎっていたことであろう。この掲出句の「チチポポ」は鼓の擬音語であると共に、能の象徴的な用語ということになろう。そして、「花月夜に、鼓を打ち、能を舞いながら、一夜過ごさん」と、これこそ、「たかし楽土」の象徴的な句であろう。


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