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(その十三) 尾崎放哉未発表句 (その六)

投稿者:nangouanさん  2012/01/21 10:15  MLNo.1235   [メール表示]

(その十三) 尾崎放哉未発表句 (その六)

句稿(5)
層雲雑吟 尾崎放哉

久々海へ出て見る風吹くばかり
半鐘ならされた事無き村のこの海
障子がしめてある海があれて居る
海がよく凪いで居る村の呉服屋
高下駄傘さして豆腐買ひに行くなり
よい月をほり出して村は寝て居る
池水しわよせて京に来て居る
マッチの棒を消す事をしてみる海風
さんざん雨にふられてなじみになってゐる 放哉
筍すくすくのび行く我が窓である
障子の穴から小さい筍盗人を叱る
餅を焼いて居る夜更の変な男である
古釘にいつからぶらさげてあろものを知らず
蜘蛛がすうと下りて来た朝を眼の前にす
銅像に悪口ついて行ってしまったは(註・原案)
☆ 銅像に悪口ついて行ってしまった   
探し物に来て倉の中で読んで居る
雨のあくる日の柔らかな草をひいて居る
たもとから独楽出して児に廻して見せる
今日も一羽雀が砂あびて居るよ草ひく 放哉
とんぼが羽ふせる大地の静かさふせる
きちんと座って居る朝の竹四五本ある
蛙ころころとなく火の用心をして寝る
破れうちはをはだかの斜にかまへる
所在不明の手紙がこっそり戻って来て居る

只今居る常高等といふオ寺は妙心寺派の禅寺で中々立派なものです(非常に荒廃し
て居ますが)淀君の末の妹(京極家ニ嫁して)が建立されたもの、問題にならぬ程
あれはてゝ居るけれど庭は実に見事なものです淀君の妹といへば美人であったろう
と思います、---一人庭の草ムシリをしながら次の九句をつくって見ました 放哉

一と処つヽじが白う咲いて廃庭
廃庭大きな蛙小さな蛙
蛙がとんだりはねたりして池の夜昼
とかげの美くしい色がある廃庭
廃亭に休らうわれは大昔しの人
昔しの朝の風吹かせ一木一石
女がたてた大きなお寺だ
廃庭雑草の侭の数奇を尽す
ホキと折る木の枝よい匂ひがする

○以上、九句廃庭吟御叱正下さりませ

青梅憂然と落ちて見せる
青梅かぢって酒屋の御用きゝが来る
青梅白い歯に喰ひこまれる
節穴さし来る光り尊し
梅雨入りのからかさに竹の葉さはらせる
小供を抱いてお客と話してゐる
児の笑顔を抱いて向けて見せる
折れ釘も叩きこんで箱をつくってしまった
佛のお菓子をもらう小供心である
赤いお盆をまんまろくふいて居る 放哉
蛙たくさんないて居る夜の男と女
蛙たくさんなかせ灯を消して寝る
小鳥よくなれて居て首をかしげる
鳥寵下ろす二の腕の春だ
なつかしさうな鶯遠くへ逃げてはなく
下手くそな鶯よ山路急ぐとせず
雪国の長い家のひさしに逗留してゐる
はるか海を見下ろし茶屋の婆つんぼであった
もるがまヽにつかって居る一つの土瓶
豆のやうな火を堀り出し寒夜もどって居る 放哉
(「尾崎放哉記念館」収載句)

捨てても捨てても、なお捨てきれぬ思いが句となってこぼれおちる。五七五の韻律
や季語の約東ごとをおのずからはみだし、食い破る。これが表現というものであれ
ば……わたしも生きていける。そう思った二十代のわたしにとって、放哉は生きる
よすがだった。 極限の短詩型、ことばのミニマル・アート。日本語が放哉を持っ
たことを、わたしは誇りたい。(上野千鶴子・「放哉全集(筑摩書房)」推薦の言葉)


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