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Re:野草の進化など

差出人: さん "吉田祐樹"<Y.Yoshida…>
送信日時 2003/12/03 16:00
ML.NO [medicalscience:1491]
本文:

中尾様

>吉田さんがかかれていた「食虫植物」... 僕は個人的にとても興味があります。

残念ながら食虫植物ではありません、植食昆虫です。
読みが紛らわしかったかもしれませんが、要は草食の昆虫のことです。
植物が昆虫に食害を受けると、傷害応答や病害応答に加えて未解明の特異的な
シグナル伝達カスケードが引かれて、さらなる食害に対して防御をするように
なるのです。農業的な応用が主眼ですね。


在原様

>ダニが好んで集まる臭い、嫌う香りを花王が発見!
>〜ジャスミンの花にも含まれる成分でダニ除けが可能に〜
>http://www.kao.co.jp/comp/news/2003/10/n20031021_01HH.html
>
>葉を食べる昆虫が嫌う分子を植物が放出することで
>身を守ってきた植物がいると思いますが、
>この辺の進化は共進化の部類なのでしょう。

ほとんど全ての植物は食害動物に対抗する防御物質の生合成系を高度に発達
させています。そのような毒物質を解毒する酵素を獲得した昆虫のみが、
その植物を優先的に食べられるようになったのです。
たとえばアゲハはミカン科の植物を食べられますが、無理やり大根(アブラナ科)
の葉を食べさせたら、あの辛味成分のために死んでしまったはずです、たしか。
逆に大根を食べるモンシロチョウにミカンの葉を食べさせても同じことです。
もちろん植物もやられっぱなしではなく、より強力な毒素を生産できる系統が
進化的に選択されて行きますから、昆虫と植物との間で軍拡競争的な共進化が
起こります。

>ダニもヒトがふえるまえは、植物を主に食べていたのでしょうから
>このへんの痕跡が残っていて、ダニよけに植物が有効なこと
>があるのだろうと考えました。
>最近では分子進化的な証拠もいくつかみられるのでしょうか?

家屋内に生息するチリダニ類と、現在農作物の大害虫になっているハダニ類とは、
亜目レベルで分類的に隔たっているようです。だからチリダニ類がかつて植物を
食べていたのかどうかは分かりません。むしろ僕は土壌中で有機物を食べていた
のではないかと推測しますが。

現在も植物に害を与えているハダニ類では、植物の発する匂いに敏感に応答して
さまざまな挙動を示します。植物は食害される程度によって発する揮発性物質の
組成が変化するので、食べるのに適した植物とそうでない植物とを識別できたり
しますし、ハダニを食べる天敵も、「食べられた植物の匂い」を感知してその
植物に向かっていくことが示されています。
ここらへんはうちのラボのもうひとつのグループが詳細にやっていることです。

> 植物のステロイド系の物質が、人間のステロイドに似ていて、
>いろいろ作用を及ぼすようですね。傷口に塗ったり、シップにしたり
>飲んだりと薬効が知られていると思います。

高校の生物で習う5つの植物ホルモンに加えて、さらにいくつかの植物性
シグナル低分子が同定されてきています。その一つにブラシノステロイドが
あります。確か細胞伸長とか分裂制御に主に関わっているはずです。
薬効があるのは、むしろサリチル酸やサリチル酸メチルではないですか?
これも病害応答に深く関与するシグナル分子として研究が進んできてます。

> 人間に好まれる植物が、優先種となるほど、ヒトと植物の
>つきあいは長いのでしょうか?
>(サルに好まれる果実をつける植物が生息域を広げたのは
> たしかと思いますが。)

稲は、トウモロコシは、大豆は、なんなのでしょう?
栽培植物は非常に長い時間、人間が選抜をかけて人為的な進化を起こして
生まれてきたものです。
なお自然生態系で植物が分布域を広げる機会は、風や昆虫による花粉の媒介と、
鳥による果実や種子の散布です。サルは行動範囲は鳥ほど広くありません。
それにサルの分布域のほうが熱帯に限られています。
日本では、ニホンザルによる種子分散に特殊化した植物は知られていません。

>生物多様性条約などで、野草の薬草の管理などが問題に
>なっていますが、なにか最近の話題などあれば、お聞かせください。

個人的に、学部までは環境問題に取り組む進路を真剣に考えていて、そこら
もいろいろとかじっていたのですが、最近はめっきりフォローしていません。

長文、すみませんでした。参考になったでしょうか。
吉田

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